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【間違えやすい表記】×不可「決」○不可「欠」

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導からよく見かける、中高生の間違えやすい表記を紹介し、世の中高生・受験生に警鐘を鳴らすのが、このシリーズ【間違えやすい表記】。

 本日は「不可欠」です。これを「不可『決』」とする間違えが多く見受けられます。この熟語について、本日は確認していきます。

 漢熟語のほとんどは、漢文由来なのです(中には『和製』の漢熟語もある)が、これもその一つ。これは本来漢文で、「レ点」をつけて後ろから前へさかのぼるように「欠クベカラズ」と読みます。「欠かすことができない」という意味です。「可」は可能の助動詞「べし」ですが、次に「不」(打消の助動詞「ず」)があるので、ここは未然形「べから」+終止形「ず」=「べからず」と読み、これで不可能(~することができない)の意味になります。

 「必要不可欠」というように使うことが多いですが、これは「必ず要るもので欠かすことができない」という意味になります。したがって、「不可『決』」は間違いです。漢字の意味や熟語の意味を考えると、それが誤りなのがわかるでしょう。

 なお、「不可~(~することができない)」という三字の熟語は他にもあります。

 たとえば、「不可避(避けることができない)」、「不可解(解くことができない)」、「不可知(知ることができない)」、「不可視(見ることができない)」、「不可逆(逆らうことができない)」などです。それぞれ「今回の状況では、そのリスクは不可避だ」、「それは不可解な謎である」、「当時の人間にとって、太陽系の外の宇宙は不可知だった」、「地球からは月の裏側の世界は不可視である」、「不可逆的な死を遂げる」というように用います。

 ただ「不可能」は、何かができないのではなく、単に「できない」の意味です。これは「能フ(あたふ)ベカラズ」と読みます。「能」は、漢文として日本語読み(訓読)すると動詞「あたふ」か副詞「よく」になるのですが、本来中国語では「能」という字はいわば英語の助動詞「can」なので、これの意味は「できる」です。一方「可」は、前述の通り、可能の助動詞「べし」で、こちらも「できる」の意味です。つまりこの二つは共に「できる」という意味の漢字なので、「可能」という熟語は「できる」という意味となり、これに「不」がつくので否定され、「不可能」は「できない」の意味になります。

 話を元に戻しますが、「不可欠」の「けつ」は「欠」です。「決」ではありません。注意しましょう。


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