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猫のように真面目【プロポ】220903

たしか、長いこと休載中で今もまだ未完の作品である
『バガボンド』。

スラムダンクでお馴染みの井上雄彦先生による漫画だ。

休載の漫画と言えば、冨樫義博先生のハンターハンターを思い浮かべる人は多いと思うが、二人の天才はもしかしたらけっこう似ているのかもしれない。

お互いの代表作である、スラムダンクも、幽遊白書も、唐突に物語は最終回を迎えた。
広げた風呂敷を、バタバタバタッと終盤で一気にたたんでいった印象だ。

どちらも、「これから主人公の敵になりそうだ」というキャラがいたのだが、そのへんは有耶無耶になり、終わってしまった。

しかし、それはそれで別にいいのだ。
山口百恵の引退のように、惜しまれながら、絶頂の状態で消えていくという美しさもある。
(全然リアルタイムではないのだが)

井上先生も、富樫先生も、山口百恵も、まごうことなき天才。

天才には、天才の生き方があるのだろう。


ようやく話は本題に入るのだが、『バガボンド』の中で、座右の銘クラスに心に残った言葉がある。

主人公である武蔵が、ヒロイン(?)である、おつうについて語るシーン。
おつうとは、結ばれてはいないのだが、武蔵の心の中に常におつうは居て、その人柄について、こう語る。

「がんばり屋。
猫のように真面目。
まっすぐで
曲がったことができない。
かといって堅物、というわけではなく
いやむしろ可笑しいところもあって…
可笑しいところばかりかも。
自分よりも人の幸せを先に願うような
やさしい性根の人。」

そして、こう付け加える。

「俺もお前のようであれたらと
何度も思ったよ、おつう。」


はい、最高です。
最高でした。

理想の女性像は?と問われたら、迷うことなくこれを引用する。

この武蔵の言葉の中でも、特に素晴らしいのは、何と言っても、

「猫のように真面目」

だろう。

この表現に違和感を感じる人も多いと思う。
猫って真面目か?
自由気まま、気まぐれ、人の命令を聞くわけでもない。
しばしば猫と対で語られる、犬の方が、真面目という言葉にピッタリだ。
「猫のよう【で、】真面目」
「猫のよう【だが、】真面目」
これならしっくりくる。

そういう人の方が多いだろう。

しかし、私は、断言する。

猫は、真面目だ。

猫とともに過ごしている人なら、きっとわかる。

猫は、「自分として生きることに真面目」なのだ。

私は犬も大好きだが、たびたび「会社の犬」などと人間を揶揄する言葉でも用いられるように、忠実に言うことを聞くというのは、ある種「自分以外のものに依存している、または支配されている」とも言える。

猫の生き方は、「凛」としている。
実際に何を考えているのかは知らないが、
生きることへの「静かな決意」のようなものがある。

よく「なつかない」と言われるが、そんなことはない。
今も私の左足のあたりにくっついて、何か考えているようだ。
なつかない、のではない。『必要以上にこびない』だけだ。


実は昨年の10月まで我が家には、猫が二匹いたのだが、突然、一匹になってしまった。

さよならとは、いつもそういうものなのかもしれない。

火葬場で、空に昇っていく白い煙を忘れることはないだろう。

真面目なやつだった。

俺もお前のようであれたらと
何度も思ったよ、ちゃま。

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