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漫画『明日、私は誰かのカノジョ』~実体験に刺さる~

明日カノという作品について


※ネタバレあり


「明日、私は誰かのカノジョ」という漫画を読んでいます。
面白いなーと思っていたのですが、「洗脳編(留奈&バシ)」があまりにも刺さってしまったので感想を書くことにしました。

「明日、私は誰かのカノジョ」は、オムニバス形式でいろいろな女の子を主人公にしたお話が描かれるマンガです。
メイン主人公は”雪”で、レンタル彼女をしています。だから「明日、私は誰かのカノジョ」というタイトルなのだと思われます。

雪(レンタル彼女)の後も、パパ活女子、レンタル彼女(実は35歳整形女)、ホスト(にはまる女子)、家出女子高生、高級ソープ嬢&配信者、ホステス&占い等、「人の好意をお金に換える」仕事にまつわる、訳アリ女子たちが切なくも力強く生きる姿が描かれます。

作中では「人の好意をお金に換える」ことへの葛藤にたびたび触れられます。
こういうのって本当に難しい仕事です。あくまで疑似恋愛を楽しませるのであって、本当に恋をさせるのは倫理的にアウト。しかし、ある程度「もしかしたら」という期待や希望を持たせてお金を使わせるのも現実では必要になってくる(その点、”色恋本営鬼枕”を謡いつつ絶対友だち営業しかしていなさそうなホスト七星はめっちゃすごい。男キャラだと作中で一番好きw)。

雪は真面目なキャラクター。色恋営業はしないし客に過度な期待も持たせない。それでも片思いしてくる客はいるけれど、決して期待させてお金を巻き上げるなんてことはしない。レンタル彼女だからもちろん体の関係もないし健全にデートするだけのお仕事。
だからそんなに葛藤したり「好意をお金に換える」なんて考えなくてよいのでは? と思う私は人でなしなのかもしれません(笑)。

対するあやな(整形女子)は、がっつり色恋営業で、付き合っているふりをして、噓をついてお客さんに貢いでもらっています。これは完璧にアウトです。疑似恋愛業には疑似恋愛業の流儀があるはず。その点は、作中でしっかりペナルティを受けているし、あやな自体は応援したい部分もあるキャラクターではありますが。
「上等だよ」このセリフ、いい! 何かあったら使いたい(笑)。

人の好意を悪用する商売をしていたら、まともな人だったら罪悪感で精神がおかしくなるでしょう。また、後々の人生で思い出しては自分のしたことに後悔をすることになるでしょう。
また、恨まれたら下手したら刺されます。
だから、自分のためにも度を越えた色恋営業はやめた方がよいです。

「雪編」「パパ活」編は読んだのがだいぶ前なので、感想では触れませんが、どちらも切なくてよいお話でした。雪の凛とした決心も、リナに支えてくれる人が現れたことも。

ホスト編と現実のホスト問題


私が一番刺さったのは「洗脳編」ですが、その前の話「Knockin’on Heaven’s Door」(ホスト編)にも少しだけ触れたいと思います。

というのも、最近ちょうど、ホストがらみの事件があったので。
ホストが客に1000万円も借金をせおわせて売春を強要していたという事件です。長らく水商売のトラブルはアンタッチャブル・自己責任という風潮でしたが、やっとこういうことが事件化される時代になりました

では漫画の内容について。

この話は、普通の女子大生だった主人公が、”ゆあ”というホスト狂の女の子と友達になったことで、自身もホストにはまっていくお話です。

サバサバ系を装っていた主人公が、ダメだと思いつつどんどん恋していく姿がとても切ないです。

主人公が恋したホスト・楓はホストの見本のようなしっかりしたホストで、ラストではナンバー1ホストにまで上り詰めています。
対して、ゆあの推すホスト・はるひ(通称はるぴ)は何人もの客と体の関係を持つ(枕営業)悪質なホストです。

ゆあもSNSやお店のマイクで盛大なにおわせをしたりとアレな子なのですが、だんだんとはるぴの方の悪質さ、ゆあの信条が見えてきます。

終盤、はるぴが客を怒らせてSNSに寝顔をさらされるという事件が起きます。
それに対してゆあは当然ながら激怒します。しかし激怒した理由は他の客と関係を持っていたことではなありませんでした。

「枕していてもいいよ。私は寝顔を撮られたりする意識の問題を言っているの!」

なんか、しっかりしたこと言ってるー!

その反面、ゆあ自身はSNSではるぴとの関係をにおわせまくっていました。
プロフィールには「嗅ぐ方が悪いんじゃないですか」(=におわせる側ではなく嗅ぎにくるほうが悪い)と。
これもこれで、なんか正論ー!

ゆあ的には客がにおわせするまでは良いが、ホストが決定的な写真を撮らせるのは意識が低い。ということなのでしょう。
におわせまではセーフ、証拠を残させるのはアウト、と。

ふわふわしているようでしっかりと自分の考え方を持っている女性なのがわかります。

ホスト編は、はるぴのダメ具合にゆあが見切りをつけ、主人公もまた楓を諦め日常に帰っていきラストを迎えます。
完璧ホストのたった一つのミス。しかし絶対にやってはいけないミス。それが主人公を夢から覚めさせました。

主人公は知ることができませんでしたが、楓は彼女のためにプレゼントを用意してくれていました。自分のバースデーの準備で忙しかっただろうに、誕生日が近いから一緒にお祝いしようといった言葉を覚えていてくれていました。それは読み手にとってすごく救いとなりました。

楓に貢ぐために一度は望まず風俗嬢になった主人公ですが、ラストでは風俗もやめ夢を持ちまっすぐと生活していました。明日カノは、ビターエンドだけど一筋の救いがある感じが心地よいです。

ホスト(はるぴ系)は、本当に恋しているように見せて、何なら体の関係まで持つ。これはもはや「疑似恋愛」ではなく「恋愛詐欺」で、そもそも正直やってはいけない売り方ではないのかと思います。そんなのやっていたらトラブルになるし客がもめたり炎上するのも理解できます。
はるぴはダメホストの見本。でもそんなところも含めてゆあは好きなんだろうし恋人かもって夢を見させてほしいし、そのうえでバレるようなことはするなと思っています。

対する楓は、少なくとも本編内では、枕はしない、細客にもプレゼントを用意するなどはるぴとは逆に良い見本のホストキャラです。
楓に本気で恋してしまい、貢ぐために風俗までする主人公の姿には心がざわつきますが、それは主人公自身の選択であって楓は悪くありません。

どちらの場合でも、お客は望まぬ風俗業に従事しながらお店に通っています。そしてそれがさも当たり前のように描かれています。
現実でも、ホストに貢ぐために風俗嬢になったという話はたくさん聞きます。ホスト男性が刺された事件の犯人女性もそうでした。この犯人と同棲までしていましたが、あくまでお客であり付き合ってはいなかったそうです。

これらはホスト界隈では当たり前のことだったのかもしれません。
しかし、女性客が風俗しないといけないようなホスト業のシステムはそろそろ改善されるべきではと思います。
正直、統一教会のやり方が倫理的にアウトなら、(良心的なのは除く)身の丈に合わない額を貢がせる前提の水商売もアウトです。
それを言うといろいろな業界が藪蛇になってしまうのは、わかっていますが。わかったうえで、だからこそ社会がそろそろ変わらなくてはいけないと、強く思います。

ここで冒頭の事件です。
同じような事件は多く、中には自殺した人までいるそうです。
※自殺案件と冒頭の事件を一緒にして書いていました。訂正いたします。申し訳ありません。

また、ネット上でもお金を払えず逃げた客がホストに暴力を振るわれる動画が普通に流れきて、本当に異常だと思います。
もちろんお金を払えず逃げるのは良くないのですが、払えなくなるようなお金を使わせたり、暴力に訴えたり売春を強要したりがまかり通るのは恐ろしいです。
※すべてのホストがそうではなく、まっとうで良心的なホストクラブもあるとは思います。 

事件についてさまざまな意見を読みましたが、「かけシステム(その場で払えないお金をツケにして後で払う)を規制しては」というのがあり、私もこれに賛成です。
普通のお店と同じようにクレカや電子決済、その場での現金支払いしかできなくすれば、払いきれないお金をつい使って望まぬ風俗をやらないといけない可能性は減ります。まあクレカでも借金地獄はありますが、そこまでいくとシステムというより本人の自己管理力の問題になってきます。
※調べてみると、何とクレカまでほぼ無理やり使わせてすっからかんにする悪質な手口があるようです。私の認識が甘かったです。

これならもともとお金持ちなお客さんなら健全に無理せず大金を使えますしね。お店だってバックレられることがなくなります。

後は体の関係を持つ、一緒に住む、付き合っているふりをするなどは詐欺や売春扱いにして徹底的に取り締まる。
これで不幸なことはだいぶ減らせるのではと思います。

ただ、そんな不幸の闇にしか光を見いだせない、ゆあのような女もいれば、闇でしか生きられないはるひのような男もいる。そこに光を照らすのが果たして本当に幸せなのか? 綺麗にしたつもりで見たくないものにふたをするだけにならないか?
行き場のない人のたどり着いた場所をさらに掃除して奪っていいのか? など考えさせられます。

こういう人たちのよりどころを別に作ることも同時に行わなければ根本的な解決には至らない気がします。

恐怖の洗脳編


マンガの感想というよりは社会問題の話になってしまいましたが、次は恐怖の「洗脳編」です。

主人公は高級ソープで「伊織」として働く女子大生の”留奈”です。
彼女がお客さんとして来た”バシ”という人気配信者(歌い手)と恋に落ちるお話です。
もう一人、主要キャラとして「ぽぽろ」というバシにガチ恋する女子中学生ファンが出てきます。

留奈がお金より大切なものを見出そうとし解脱にまで至る過程、バシが配信者として成長していく過程、純真なぽぽろが厄介オタに育っていく過程が丁寧に描かれたハートフル地獄沼ストーリーです。

バシは元カノからちょっとしたことで恨みを買い、ネットにさらされてしまいます。炎上して心に傷を受けていた時、寄り沿ってくれた伊織(留奈)に好意を抱きます。
そして考えなしにお茶したり、家に連れ帰ったり……そういうとこ! そういうとこやぞ! 女で炎上しといてすぐに女にすがるなよ! となるのが、悪い子じゃないけど完璧でもなく、さりとて憎めないバシという人物です。

元カノが晒した理由は、「活動に専念したいから別れてと言われたのにいまだに一曲も歌を作れていない」というものです。晒すのは明らかにおかしいが、ちょっとイラっとするのはわかるw 

いい子だけど、人の気持ちに鈍感。 

このようにバシが完璧な人間ではないのもリアルでよいです。
だって”神様”ではないもの。”人間”だもの。
100%完璧にふるまえる人間がいるなら出会ってみたいです。人間にできないことを24時間求めるのは無理です。偶像に夢を見るのは舞台の幕が上がっている間だけにしないと、厄介オタになってしまいます。

留奈と付き合うことになったバシ。しかし、界隈のことを知らない留奈の行動と、過剰なファンの詮索によって風俗嬢「伊織(留奈)」との仲が疑われることとなります。

そして再び大炎上する……というのが洗脳編ストーリーです。

なぜこの話が刺さったかというとですね。
私もネットいじめされたことがあるからなんですね。

ネットいじめ~参加したイベントが猥褻で条例違反とデマを流され炎上させられたよ編~
https://note.com/simadatuki/n/n496faf7395e4?magazine_key=m10710d7cea1d#i2PRF

ネットいじめ~知り合いのアイドルをストーカーしていた人を逆ギレさせて標的にされたよ編~
https://note.com/simadatuki/n/nfbf01f51c34d?magazine_key=m10710d7cea1d

など。
活動していたらいろいろあります。
私以外でも、知っている界隈でのネットいやがらせや匿名掲示板の悪口噂スレッドとか。
そんなのを見てきました。
(今私の周りに悪い方はいません。平和に生活しています)

だから刺さったというより、フラッシュバックしたに近いかもしれません。

そのくらいこの話はリアルです。

掲示板の書き込みやらSNSの書き込みのノリがまんますぎて笑ってしまいました。特にラストの厄介オタ化したぽぽろちゃんのツイート……まんま! まんまこういうノリだよ!! 

私を叩いた自覚のある奴!! 私以外でも人を叩いた自覚のある奴!! それを面白がったり加害者に賛意を示した奴!!

一回この漫画を読んでみろ! 客観的にみてどれほど醜悪か自覚しろ!!!!

におわせとかにおわせ女と結婚失望とか、何で自分が人の相手に口出しする権利があると思ってるんだ!?
アイドルの恋愛にがっかり失望? 何でステージ以外でのプライベートまで口出しする権利があると思ってるんだ!?

山口百恵だって結婚予定発表と同時に引退宣言しているだろ! ということはアイドルと並行して恋愛やっていたってことだろ!! アイドルは昔からプライベートでは恋愛する自由があるの、そういうものなの! よっぽどモラル的にアウトでなければ舞台上以外のことは見て見ぬふりしろよ!!!!

週刊誌もアイドルの熱愛とかすっぱぬくなや!! 人の人生壊して楽しいのか!? もっと巨悪を追及しろよ!!!!

私は許さない! アイドルも水商売も知り合いにいたから、私自身もネットいじめされたから、当たり前の人権を無視したり人の仕事を馬鹿にするやつ、ネットいじめする奴は私の全存在をかけて絶対に絶対に許さない!!
あなたを傷つける誰かがいたら、全力で言論でぶん殴る!!!!(それ、一歩間違ったらネットいじめ!)

……と、思ったのですが。

私には、ぽぽろちゃんの気持ちはわかっても、共感することはできません。
同じように、ネット炎上をさせる人たちは、いくらこれを読ませても、留奈やバシの痛みに共感することも、やめることもできないのかもしれません。

変わるように期待して変わらない現実を目にしたとき、人は絶望します。
だから、期待しすぎない。人の心は変えられないと思っておいた方が良いかもしれません。

でも。加害者の心は変えられなくても、社会を変えることはできるはずです。
現実に、ネットいじめで自殺者が出てから、法改正されたりと大きな変化がありました。
私のころはネットいじめに怒ると、「気にするな」「現実に何かされているわけでもないのに大げさ(親に言われた)」「騒ぐ方が大人げない」という空気がありました。今は昔ほどそういう空気ではなくなりました。一生懸命訴え続けて、親からも「自分の認識が甘かった、申し訳ない」と言ってもらいました。

自分が死ぬか誰かを殺すかしないと変わらない社会はやるせないです。
これを読んだ方だけでもいいです。どうかどうか、留奈やバシの気持ちを少しでいいから考えてあげてください。そして現実のどこかにいるかもしれない彼らの味方でいてあげてください。

くれぐれも悪口や噂話にあふれた匿名掲示板スレッドには書き込まないでください。あれば見てしまうのは仕方がないです。でも書き込むのはどうかやめてください。そんなスレッドは書き込まず価値のないものにして掲示板から落としてしまうのが一番なんです。
匿名がすべて悪いとは言いませんが、悪口の書かれたスレッドが当たり前のように使われているのは、当事者にはつらいことです

当然ですが悪口スレを普通に利用しているのがバレたら活動者には嫌われます(悪口へのフォローは別です)。

あと漫画内でも書かれていましたが、「匿名掲示板の情報は8割デマ2割本当」は、ガチだと思います。だから情報源にはならないです。
中途半端に詳しい割には嘘が混じっている、憶測で嘘が書かれている、悪意ある誰かがデマを書き込む。それが匿名掲示板です。本当のことも書かれるでしょう。でも嘘か本当か見抜けないなら、精神衛生によくないだけです

あと、ファンに悪口書かれていると思うと辛いですが、ファンになりすまして悪意の第三者が書き込むのもよくあることです。惑わされなくて大丈夫です。

まとめると。
匿名の発言は疑心暗鬼になるから精神やられてパフォーマンス落ちるから応援してるならやめよう。
潰したいならあなたの精神がやられてるからカウンセリング探そう。

経験者より。

魂の叫びはこのくらいにして、漫画の感想に戻ります。

私は留奈が誹謗中傷にしっかり怒ってくれたことが嬉しかった。私のために怒ってもらえたような気持ちになったから。

あたしは……
私の生き方を
私の生活を
私のこれまでを
馬鹿にする
やつらを絶対
許さない

留奈はきっと、今までの人生で(バシも含めて)誰も自分のために怒ってくれる人がいなかったのでしょう。だからこうやって自分自身で怒るしかないのだと思います。

留奈のしっかりさっぱりした性格、に見えて恋に落ちていく女の子なところ、脳内ツッコみするものの仕事はきっちりするところ、私にはできなかったこと(訴訟)をやってくれたところが良くて、作中で一番好きな女性キャラです。

ちなみに私はある案件については警察に相談しまして、被害届けまでは出しませんでしたが、「警察に行き悪質との判断をもらった、これ以上続けるなら法的措置をとる」と警告したところ、収まりました。
出るところ出るぞ」といった時もある程度収まりました。
やはり警察は怖いみたいですね。

あと自分のアカウントで叩いている人たちは、誹謗中傷のスクショを集めてブログに貼る、直接リプを飛ばしてしつこく絡み続ける、をやったらその時は激高しましたが、おとなしくなりました。さすがに絡まれ続けるのも疲れたのだと思います。絡んでいるこちらも途中で疲れたので。

捨てアカウントではない場合、周囲にわかるように批判にさらされることは向こうも嫌みたいなので、わざと周りにわかるようにブログに貼ったりDMではなく直リプで絡んだりしました。

メンタルが持つなら、絡みまくって「こいつに手を出すとすげー面倒くさいことが起こるぞ」と思わせるのは効果的だと思います。
相手より面倒くさくてやべー奴っぽくふるまうのも時には大事です(?)。
※これはまだ相手が周りを気にする理性があるタイプなら効きますが、ガチめのヤバい人だと一線を越える報復してくるかもしれないので、必ずしもおすすめはしません。実体験としてはこういう結果があったという事例として参考にしてください。

なぜか相手の中傷をスクショしてまとめると、「晒された! お前もネットいじめ!」と逆ギレする人がいるのですが、元々自分でネット(全世界)に向けて発信したのですよね? まず己が世界に向けてやったことについて自覚と反省を持ちましょう。

とかなんとか感情移入しながら読んでいたら、違う要素も加わってきておおっとなりました。
タイトル……なるほど……。

優しくて頼りになる先輩が、実は胡散臭い占いにはまっているという描写。
それを「レター先生のおかげかな」の一言で表現するの、さすがすぎる。
一気にぞわっとしました。

レター先生の話は、洗脳編の次の話につながります。この話もなかなかに刺さったので、後述します。

物語は進み、留奈とバシは結局別れてしまいます。
留奈は職場の掲示板でも悪口を書かれまくり、客が減って(これは炎上と別にバシと付き合い始めたことによるメンタルの変化も影響していますが)しまいます。
そんな中、沼黒という常連客は会いに来てくれます。

この時の留奈の内面描写は最初以降ありません。しかし、沼黒のけなげな態度は間違いなく留奈に響いたと思います。言い訳は嘘でも、伊織の仮面をかぶっていても、感情は留奈の本音だったと思います。だからこそ、最後まで留奈はソープ嬢としても心折れず伊織を貫けたのだと思います。
伊織の風俗嬢としての思い出が、悪いものだけにならなくてよかった。

一方、ぽぽろはライブに来て、バシに直接怒りの感情をぶつけようとします。しかし、いざ対面すると、好きの気持ちがあふれてしまいます。

「許せないけど……でも、こんなの、降りられないよ」

と。ぽぽろちゃん(´;ω;`)ブワッ

ライブ後、バシはメンバーからたるんでいる部分に喝を入れられます。
そして、ファンから長文メッセが。
また厄介お気持ち表明かと思ったら、活動を応援する心温まるメッセージでした。
これをみて、バシは本当の意味で心を入れ替えて活動者として一皮むけたと思います。

私もネットいじめだけではなく、全活動期間を通して、”あのときのあれがあったから活動ががんばれる。”というのはたくさんあります。ずっと大事に大事にしています。

そんな風に、ラスト一話前までは収まるところに収まって感動的に終わりそうだったのですが……

ラスト一話のどんでん返しが……

ホラーのそれ!!

留奈を中傷した犯人は作中で明かされず、
ぽぽろは何があったのか「アンチじゃありません」というアカウントでバシを叩く厄介オタ(というよりアンチ)になり、
留奈はしれっと「人を操る対話術」「孤独な人程、成功する」「教祖ビジネス」などの本を読んでいる。

留奈、そっちにいっちゃうの……? 教祖様目指しちゃうの……?
留奈の最後のさめた振る舞いには、人間への絶望や虚無感を感じて、「ああ、幸せになれなかったのか」とやるせなさを感じました。

一番怖かったのは、犯人が最後の最後まで明かされなかったということです。知らないどこかの誰かかもしれない。あるいは隣のあの子かもしれない。これは本当に怖いことです。

留奈は話しかけてくれた隣の席の子の携帯カバーが「推し」だったことでぎょっとします。
強くふるまっていても一連の出来事が相当なトラウマになっていることがわかります。

「自分の拠りどころを他人に委ねるのって不安ていうか…その人がいなくなったら消える幸せって怖くない?」

これは推しというか、バシを本気で好きになって失った留奈の心境を表しているようで切なかったです。

「何が推しだよマジウケる」

そりゃあんな目に遭わされたらそうも言いたくなるよね……。

そしてラストに文章があるのですが、それがまた怖い!!
「サイコミ」で読むと載っているのでぜひご一読ください。

個人的には明日カノの中で一番怖いラストでした。
明るくて楽しい色恋本営鬼枕が恋しいよ。

バシくんも留奈ちゃんもぽぽろちゃんもみんな心穏やかにがんばろね。よいちょ。

落ちは怖かったですが、冒頭でお客さんに返信をしている留奈の姿にはほっとしました。
退職した後もお客に伊織として返信(「もう辞めて大学に戻りました」)してて偉いです。最後の最後まで理想の偶像をやりきったのですから。
このあたり、なじみ客のLINEを辞めた後は放置している、次の章のエミー(優しい先輩だと思ったら占いにはまっていた人)と対照的です。

「What a Wonderful World編(ホステス&占い)」

こうして洗脳編は終わり、「What a Wonderful World編(ホステス&占い)」が始まります。

主人公のエミー(留奈の先輩で占いに大金をつぎ込んでいるお姉さん)が、ソープをやめて田舎に帰ってくる所から話が始まります。
父親の死を知り、一人きりの母のためにと帰ってきたのですが……。

アカン! これもいろいろ刺さる奴だ!!

魂のステージを上げて将来エミーにならないようにしなければ……というか、大学生の留奈&バシに感情移入しているのが黄色信号だって! エミーが目の前に迫っている!
心のゴミ箱に捨てちゃダメ、現実を直視しなくちゃ! 

と、気付かされてシュン…ってなりながら読みました。

エミーの思い出す若いころが、まぶしくて美しくて胸がギュッとなります。
何にも不安のない、何にも怖くない若いころが自分にもあったなあ。
あの頃みたいにできないし、あの頃みたいにしてもいけない。

田舎でホステスを始めたエミーは、お客にお尻を撫でられても我慢していました。それを後輩(いい子)に注意されます。「先輩が許すとかっちゃん(お客)が他の人にもするようになるから」と。

全然違う事案なのですが、自分は絵の展示中、初対面の年上異性から肩をぎゅーっとされた状態で延々とタメ口で絵のアドバイスをされたことがあります。
その時は「変わった人だなー、でもアドバイスは役に立つかもしれないから聞いておくか、でも早く終わらないかな」って感じだったのですが、後で考えると「いや、おかしいよな絶対!? 悪気じゃないにしてもわざとではあるよな!?」と思い腹が立ったことがあります。それは相手にもですし、(アドバイスされたから)「ありがとうございます」と言った自分自身にも。
こういうのって本当に、私だけの問題ではないんですよね。私が許すと他でまた同じことをするし、なんならエスカレートするかもしれない。
「あ、ダメなんだ」と初期段階でわからせるほうが、その人自身も厄介にならずに済みます。
”自分が我慢すれば”は結局、自分のことしか考えていないし、最終的に周囲を不幸にする。というのをこの漫画で改めて気づかされました。
(私もですが気が弱くて言えない人もいると思います。そういう方に責任があるわけではありません。そういう相手を加害する人間だけが悪いに決まっています)

その人は小ざっぱりして清潔感はあり。おそらく若いころはモテたりしたのかもしれない。だから自分なら年の離れた異性に触れても嫌がられないだろうと思ったのかもしれない。(同年代でももちろん嫌ですが、年上だとパワハラも加わって別の嫌さがあります)

私の雰囲気が触っても怒らなそうとか、セクハラ扱いになりにくそうと思わせたのかもしれない。

要は”舐められた”。

正直こういうのを明かすこと自体が自分のマイナスになりそうで言わなかったのですが、いや、ダメだと周知しないといけないと思ったので書きました。(このレベルでそう思うのだから、性加害の告発って本当に勇気がいることだろうと思います)

身近ですらこんなことがあるんですから、ギャラリーストーカーとかギャラリーセクハラ・パワハラって実際たくさんあるのでしょうね……。作品にも作家にも、触っちゃダメです。アドバイスはありがたいこともあるけど、初対面の相手に頼まれてもいないのにタメ口で延々とするのは、ダメです。相手が年下に見えても、仮にあなた自身が同業者で経験値が高くても、ダメです。

アドバイス自体はありがたく頂戴します。強欲なのでもらったものはもらいます。

終盤、エミーが十数年に及ぶ付き合いのレター先生に、本音をぶつけて去ろうとします。
しかし、レター先生は最後の最後まで「レター先生」としてぶれず、本音の見えない教祖としての返事をします。
本音で投げた言葉を受け止めてもらなかったのを悟り、エミーは泣きながら決別をします。

留奈が沼黒に伊織でありつつも本音の感情を見せたのと対照的です。レター先生の対応はまるでAIか何かのようです。

レター先生を年の功でキャラがぶれなくてすごいととるか、留奈を青くさくても人間らしくて素敵ととるか。
どちらがプロとしてあるべき姿なのか考えさせられます。

そして留奈の未来の姿がレター先生かもしれないのも切ないです。

でも、ラストは明日カノの中でも明るい方で救われてよかったです。エミーの周りはいい人ばかり。それはきっとエミーの魂のステージが元から高かったからだね。

私も私の経験は何一つ無駄にせず飲み込み糧にしながら前に進むぞ。という気持ちにさせてくれました。

その他。

ホスト編では、ゆあの「嗅ぐ方が悪いんじゃないですか」は痛々しい主張だが、洗脳編では嗅ぎまわる方が明らかにおかしい。
ホスト編での「枕しててもいい、でもその写真を撮らせる意識の低さが問題」という主張は正論に感じるが、洗脳編でのファンの怒りは理不尽に感じる。

まずホスト編を読ませて、それと真逆の事象を洗脳編で行う構成が面白いです。

なぜ、上記のように感じてしまうのか。
ホストは疑似恋愛を前提とした商売なのに対して、アイドルは必ずしもそうではないからだろうか。しかしファンは「リアコ営業」、つまり疑似恋愛を売りにされていると感じるから怒っている。そのずれが炎上につながるのだろう。
あとはるぴの枕営業は一応仕事の延長なのに対して、バシのは完全なプライベートのこと、という違いもあるかな。

まああれだ、はるぴは枕営業やめようね。よいちょ。


エミーの勤める店のママが、エミーに「ママに生霊がついているとレター先生に言われた」と伝えたときの返答。
「水商売やってたら生霊の10個くらいついてるわよ!」は名言。
いい人に出会えたね。エミー。


レンタル彼女も、ホストも、配信者も、ソープも、占いも、推し事は「娯楽」。無理して相手を怨むくらいなら、無理せず楽しめる距離で楽しむ。推される側も無理をさせないようにする。それが大切なんだと作品を通して感じました。

 まだ最終章は読み始めていません。
 読んだらまた書き足すかもしれません。


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