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八百屋のおじさんと大きなスイカ

あまりの暑さに、扇風機が冬眠から目覚め、再始動。

扇風機を見ると、子どもの頃に青い羽の扇風機の前で、大きなスイカを頬張っていた風景を思い出します。


夏の風物詩、スイカ。


我が家はみんなスイカが大好き。
子どもの頃は夏になると、近くの八百屋さんによく買いに行っていました。

その八百屋さんはトラックでやってきます。

いつもの場所に着くと、トラックの中から野菜や果物、お菓子、お魚など、たくさんの商品を出して並べていきます。


麦わら帽子が似合うおじさんと、
にこにこ優しいおばさん。

私は八百屋のおじさんが大好きでした。
お菓子をくれたり、ぶどうやイチゴなどの果物を味見させてくれたり、とても可愛がってくれました。



スイカを買いにいくと、八百屋のおじさんが大きなスイカをポンポン叩いて、

  今日はこれが一番美味しいよ!
  おまけで安くしとくからもってって。

と、おすすめのスイカを選んでくれます。



母の買い物について行く私の役目は、美味しいスイカを選んでもらうことと、そのスイカを持って帰ること。

落としては台無しなので、責任重大。
暑さと緊張で汗だくになりながら、大切に抱えて歩きます。


一歩一歩。
手を滑らさないように、慎重に。



ようやく家に着くと、そのまま体重計にのり、スイカの重量測定が始まります。

  お母さん、今日のは6kgもある!!


数値で大きさを目の当たりにして、喜びの声をあげます。


しかし、大きなスイカはここからが、また大仕事。

冷蔵庫の大部分を占領する大きなスイカ。


まずは、冷蔵庫を整理して居場所を作ってあげなくてはなりません。

すでに入っている食品に移動してもらい、詰めてもらい、場所を確保してようやくスイカが収まります。


さて、いよいよ3時のおやつの時間。

パンパンに張ったスイカに包丁を入れると、鮮やかなピンク色の果肉が顔をのぞかせます。

まず半分に切り、それをまた半分に…


小さくは切らず、大きなままお皿に分け、
あとはスプーンで思い思いにいただきます。

瑞々しい果肉、シャリシャリの触感、爽やかな甘さ…

見た目も味も、もう、夏そのもの。



夢中で夏を感じていると、母が私の食べ方を見て笑います。

私は、美味しいところを後で食べたい派なので、一番甘いところをスプーンでとって、お皿の隅に置いておきます。

 あとの、おたのしみ♪


皮のギリギリまでキレイに食べ終わってから、残しておいた一番甘い部分をいただくのです。

少しお行儀が悪いですが、食べ終わったあとに、甘くて最高に美味しいスイカの余韻を楽しめますよ。



あれから10年ほどたち、私が大学へ行っている間に、八百屋さんは来なくなってしまいました。

おじさんもおばさんもご高齢になり、後を継ぐ人がいなかったようです。


今でも夏に実家へ帰ると、母がスーパーでスイカを買っておいてくれますが、私の記憶の中では、八百屋のおじさんが選んでくれたスイカが特別で、一番美味しかったです。


今年の夏も、実家に帰れそうにないですが、またみんなでスイカを食べながら、夏の思い出話に花を咲かせたいです。