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全員、寒色よりも暖色を重視して生きている

映画『アバター』で「パンドラ」の空や海は青い。そして、ヒトも動物も青い。

「ナヴィ」は、暖色に関する語彙力が低いかもしれない。

気になった方は続きをどうぞ。


色の名前は、世界中どこでも同じ数あるわけではない。

パプアニューギニアには、色を表す言葉が5つしかない。アマゾンのとある言語には、白・黒・赤の3つしかない。イヌイットは、雪の状態によって、白の表現を変える。(白200色か?笑)リベリアのバッサ族は、紫・青・緑を表す「hui」と、黄・オレンジ・赤を表す「ziza」の2つしかもたない。

上から、英語・ショナ語・バッサの言語
ショナ人はジンバブエやザンビアに住んでいる。

1960年代に行われた研究から
人間が色を認識し名前をつける時には、優先順位があるのではないか?と考えられた。

白と黒が第一優先(白と黒はセットのようなもので、同一1位)。3位は赤。4位は緑。5位が黄。6位が青。7位に茶。

色に名前をつけていった順番が、複数の言語において、同じであったことがわかったからだ。

理由に関しては、目立つ色の順なのではないか?と推測された。

しかし、この法則に当てはまらない例が、その後いくつも発見された。


今度は
「色の名前は、人間のコミュニケーションのためにつけられる」という説が出た。

結論から言うと、この説は正しかった。

このような実験が行われた。

実験に使用された80色の色見本

一色一色、被験者たちにたずねる。
この色を「あなたなら」何色と呼ぶ?

被験者は、英語、ボリビア・スペイン語、チマネ語(ボリビアの先住民族の言葉)の使用者たちだ。※それぞれ、都市化や工業化の度合いが違う。生活様式も違う。

結果

暖色には、多くの人たちが、説明に同じ言葉を使った。
例:この色は黄色です。私も黄色だと思います。僕も、私も。
※認識が一致している
※コミュニケーションがとれている

寒色には、多くの人たちが、説明に違う言葉を使った。
例:この色は青色です。私は緑色だと思います。僕は紺色、私はグレー。
※認識が一致していない
※コミュニケーションがとれていない

後々、この法則は、110に及ぶさまざまな言語で当てはまることが判明した。


理由が調べられた。

写真のデータベースを解析。
「暖色は写真の前景・寒色は写真の背景」
主にこのパターンだった。当たり前の結果だ。

空や海や森は寒色だ(夕焼けなど一時的な話を除く)。人物は暖色だ。動物にも暖色が多い。

寒色とは、この世界の背景色なのだ。
暖色とは、登場キャラクター達の色なのだ。

海と空の境がわからないという写真

どちらを重視するか。答えは決まっている。


ヒトが生きてきた中で、天候や環境の変化も、注目すべき大切なことであったろう。しかしそれ以上に、目の前の獲物や敵である。哺乳類はみんな暖色だ。前景そっちのけで、背景に意識をとられていたら、生き残れなかっただろう。

目線がリアルな画像。こんな日常大変すぎる。

獲得したものや、対峙したもののことは頻繁に話題にしたと思われる。また、食べ物や敵のことを正しく伝達しあうには、統一された表現が必要だったとも思われる。

昨日の夕日のことだとか、生き死にに関係もない過ぎたことを話している余裕は、現代よりは確実になかったはずだ。


色は青が一番好き!という人は、たくさんいる。その人たちの「好き」が思い込みであるとか、そういった話ではない。

しかし、私たちにとって、寒色はあくまでも背景なのである。これは無意識的な話。

〜青い蝶々は実は青くない?
青い瞳は色素ではなく構造によるもの?
など「青色」の話は、また別の機会に。〜

それにしても、パンドラの生物は、ナヴィ・バイパーウルフ・タナトール・イクラン・ダイアホース……と、本当に寒色ばかり。

『アバター』の世界では、暖色を表す言葉が少ないかもしれないと言った理由が、伝わっただろうか。

『PANDORAPEDIA』

リンク先は『パンドラピディア』。無料の『アバター』ファン・サイトで、動物相というコーナーがオススメ。※日本語対応あり


参考文献https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1619666114

https://www.avatar.com/pandorapedia