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スイセン、まさかキミも香料植物だったなんて。
こんちわこんちわ。ハーブ蒸留家のエフゲニーマエダでっす。
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いや〜昨日は寒雨の1日だったのに、今日となっては春を通り越して札幌気温で25℃にもなる夏みたいな1日でしたね!
昨日の雨と今日のカンカン照りあってか、春の花シリーズの彼らが一気に咲き始めました。
そうです、スイセン/水仙(Narcissus sp.)です!
スイセンも実は地中海エリア生まれの香料植物だった事を知る。
道民であるエフゲニーマエダがスイセン/水仙に対してまず第一に抱く印象といえば「毒草」。
それもそのはず。
有名な山菜の代表格アイヌネギ/行者ニンニクの名産地である北海道では、まず「この時期に顔を出す植物はほぼ毒草だからアイヌネギと見間違えるな!」と幼少時代に念仏のように教わってから大人になります。
なのでスイセンやスズラン、イヌサフランやバイケイソウなんかは可食なアイヌネギと打って変わり、間違えて食えば死ぬほどの毒草として記憶される植物なんですよね。
それゆえにバラなどと違い、どこか無機的で怖いイメージを抱く…
中でもスイセンは特に悪名高い毒草なのです。
そういったことからおいら自身近づきがたい嫌悪的なイメージをスイセンに対して抱いていました。
が。
ラベンダーと同様に地中海エリア原産のハーブ・香料植物について調べていると、東アジアのお花的印象が強いユリの仲間のスイセン(Narcissus)ですが実は地中海エリア原産の植物で、花から香水用に精油が採られていることを昨年末に知りました。香料関係の書籍を読んでいても時たまスイセンの香料についてのトピックが目についたりするほど。
精油が採れる(収率はかなり僅か)のはもちろん、生花も匂いを嗅げばしっかりいい香りがするとのこと。
これを知ってからというもの今年の春到来が待ち遠しかったのです!!!
(1年前の春はまだ香料と関係があるなんて1ミリも知らなかったんですけどね)
自宅まわりのスイセンをひたすら撮りまくった1日。
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同じ地中海エリア出身植物のラベンダー花壇をバックにツーショット。
ウチの街というか地区はかなり歴史深いエリアなので、更地のそこかかしこにはかつての住人らが植えて楽しんでいたのだろうスイセンなどが桜の咲くこの時期に花を咲かせるんですね。
わりと雪解け後ちょっとしてから春の訪れを告げる代表的な春の花かと思います。
ちょうど目立つ植物が限られるこの時期にまわりを見渡すと、白や黄色の開花したスイセンの株が目立つのです。
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スイセンって球根植物のイメージがあったんですけど、明らか人が植えてないようなところからでも意外と生えてくるっぽいんですよね…。どういう繁殖戦略なんだろう?(調べてみるとどうやら種によってはタネを作れるらしい)
この街路樹帯は10年ほど前はルピナス(Lupinus polyphyllus)畑になってたんですけど、いつしかルピナスたちは姿を消していました…そして今はスイセンの住処となっているようす。
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ラッパ型の副花冠という独特な筒状構造があるのがスイセンの特色。
6枚の花びらに見えるうち3枚とラッパ構造は正確には花びらではない。
スイセンっていつも下か横を向きうつむいてる印象が強いんですが、この子は気温の高さのせいかそれともまばゆい陽光を求めてなのか南の空/太陽を仰ぎ見るように咲いていました。
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で、木陰に咲く子はこの通り南向きではなくあっちゃこっちゃの下を向いている始末。
まぁこういつも下を向いているのがスイセンっぽいイメージですね。花部が大きく重みで下を向くんでしょうか?
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自宅まわりのスイセン観察をしていると白〜薄黄色のスイセンと花の形が変わらないけれど黄色味が強いタイプのスイセンと2つがいることがわかりました。
うち黄色い方ははじめ(勝手に)香料用種のジョンキル/黄水仙だと思っていたんですけど、ネット画像とを見比べてるとどうも6枚の花被の形状が違うのと明らかに香りが薄いのとで別種であることは容易く予想がつきました。
開花の速度。
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明らかに今日開花のラッシュを迎えていたので、せっかくならば!と思い観察してみました。
ちょうどお昼時から涼しくなる夕方までにどれぐらい花が開くかを見てみると、このような観察結果に!
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で夜1時半頃に再び訪れてみると開花!となっていたようす。
スイセンが完全開花するには半日程度の時間がかかるようですね。
自宅まわりのラッパスイセン(N. pseudonarcissus)生花の香り。
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スイセンって誤食したら死ぬくらいの毒草なんだから生花から発せられる香り物質も吸い込んだら毒に当たるんじゃないかな〜とか恐る恐るですが、香りを味わってみることに。
(溶剤抽出法で)わずかに花の香料が採れるくらいなんだからきっと何かしらの良い香りなんだろうと嗅いで味わってみると…
意外にもこのラッパスイセンからは、緑茶や日本茶をイメージするような、煎茶のような香りがしました。
そうです和風な煎茶の薄く淡い香りがしたのです。そこまで強烈な香りはしなかった。。。
香料系統種と園芸系統種。
どうやらラッパスイセン(N. pseudonarcissus)は、ジョンキル系と呼ばれる本来の香料用水仙らとは系統が違うようなのです。
(コモンラベンダーとヒロハラベンダーみたいな関係)
その辺で春先に咲いているのが見られるのは香りが淡いラッパスイセン(N. psedonarcissus)などがメインで、これらは主に園芸用に植えられるもの。
対して香料用のスイセンは黄水仙(Narcissus jonquilla)をはじめとして口紅水仙(Narcissus poeticus)や房咲き水仙(Narcissus tazetta)などだそうです。
ややこしいのが、ニホンズイセンという和名を持つ種は香料種に該当するフサザキの変種(N. tazetta var. chinensis)にあたるものという事でしょうか。
しかし香料生産地はヨーロッパでなので、もっぱら黄水仙(N. jonquilla)や口紅水仙(N. poeticus)が用いられているようです。
スイセン香料の香りも味わってみる。
ラベンダー農家の身からしたらあまり関係ないのですが、お花の香りの勉強というか試香ができるショップをみつけたので、香料用水仙2種の香りも味わってみました!
⑴Narcissus poeticus香料の香り
第一印象は清潔な香り、なんですがユリ花感、グリーン感が強い香り。
⑵Narcissus jonquilla香料の香り
第一印象は⑴とさほど変わらず似た清潔な香りなんですが、スパイシーにも感じ取れる芳醇さが付加されて、香りが太くなったイメージを抱く香りがします。
2種とも、そこまで大きく異なるというワケではないようで、香りのコクや芳醇さなどが異なってくる感じでした!
同じ時期に咲く他の花たち
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スイセン畑を注意深く歩いていると、何やら青い花も発見。
これはかつての住人が植えたであろうローマンヒヤシンス(写真右手)。
ヨーロッパ産の園芸作物ですが球根植物なので同じ場所に長年生き永らえているようですね。
日本の園芸作物としてみられるヒヤシンスは大きくローマンタイプとダッチタイプの2つであるそう。
写真右のローマンタイプ(H. orientalis var. albulus)はスズランサイズの比較的小ぶりで可憐な花茎を何本か立ち上げるタイプのヒヤシンス。
植物史的にはフランスで発見されたヒヤシンスの変種の一つであるよう。しっかり南方系の甘い花の香りがする。
比較のために園芸店で握りこぶしより花穂サイズが大きなダッチタイプ(Hyacinthus orientalis cv.)も撮ってきた。(写真左)
ローマンヒヤシンスに比べて本当にデカイ。花茎は1本立になるよう。
ダッチヒヤシンスは(恐らく)コモンヒヤシンス(H. orientalis)がオランダで園芸改良を重ねられた品種で、園芸的な見映えのために花数が多く背丈も大きくなるように改良されたようだ。
こちらもちゃんと同様甘い香りがする。確かピンク花品種の方が甘い香りが強かったかな…?
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ラベンダーに見間違えられることが多いムスカリ(毒草)
エフゲニーマエダの個人観測では北海道の春の園芸作物としてスイセンに次いで人気だと思うのがこのムスカリ(Muscari neglectum)。
この子もヒヤシンスの近くにいるのを見つけた。
香料作物ではないので芳香はそんなに感じない。
植物学的に、ムスカリは旧ユリ科ヒヤシンス連に属する植物なので遺伝的に上記ヒヤシンスとかなり近い部類の植物。が、花の構造(見た目)がかなり違ってて、立派なユリのような花は咲かせないようだ。
そんな外見からグレープヒヤシンス、ブドウヒヤシンスという俗名がつけられている。
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加えて、そんな壺のような筒状花のために大いにコモンラベンダーと見間違えられる花/植物の代表。
ラベンダーとムスカリではそもそも開花時期が違うけれど、コモンラベンダーの実物をあまり見る機会がない本州の方には特に見間違え・誤解が大きいようだ。
「ラベンダー」と打って変換表示できるiPhoneの絵文字もあれはラベンダーではなくヒヤシンスだったりする。
ラベンダーはハーブだから食べても毒性はないけれど、
ムスカリはガッツリ毒草なのでマジで気をつけてね!!!
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