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うわ…今日も雨じゃん。嫌な予感が日々強まるのでラベンダーの多湿枯れについて学習する回。

こんちゃこんちゃ。
ついに北海道の夏本番である8月に突入したんですが、コモンラベンダーの収穫がひと段落つき始めたところで突如雨降り日が増え始めました。
3日おきに1降雨日ならぜんぜん調子いいんですが、しかしながら今日を含めて5、6日連続で雨が降ってる気がしてるんですよ。

いわゆる"昨年の悪夢"(2023年9月撮影)

この時期にこの雨降りが集中すると、ラベンダーをしっかり弱らせ枯らした"昨年の悪夢"が蘇ってきます。
「雨が5日も連続してさすがにこれはマズそうだぞ」と第六感が鐘を鳴らし始めたワケなので、とりあえず安心材料をかき集めに走ってみます。

とりあえずデータの確証を得てつかの間の安心を得たいエフゲニーマエダ。


シーズン末期の蒸留を午前に済ませる

あ、午前中〜昼ごろは雲多い中地味に青空が見えてて晴れてたんですよ。
なので残った英国品種たちやらロンプパープル(日本)の小花穂なんかをかき集めて蒸留してました。
もうすでに雨を5,6回は受けているのでオイル品質は誠に期待できない状態ででしょう。。。

8月に入ると蒸留後半組であるラバンジン蒸留の時期に移ります。
ラバンジンの雨耐性ですごいところが、コモンラベンダー(L. angustifolia)は開花時期が来ると花穂全体が一気に開花する性質があるんですが、ハイブリッド種のラバンジン(L. x intermedia)は徐々に徐々に、日々ぽつりぽつりと花を咲かせていきます。
なので雨を受けてもそこまで花の見た目が悪くならない、オイル品質が影響を受けにくい、花の鑑賞期間が長めといった特性があります。
だもので世界的に精油生産専用の品種としてラバンジンが圧倒的多数で選ばれてるんですけどね。

前座・序述

"青い"ハーブを見守る"青い葵"

もうひとつ自慢!
ヘッダー画像はラベンダーとは関係ないんですが、裏庭のヤロウたちを見守ってくれている青いハーブ園の守り神こと「青い葵」です。
茎がツルツルなのでゼニアオイ(M. mauritiana)の青花品種。

マジで青い。この色こそ"葵色"というらしい。

左手は青いハーブティのウスベニアオイ(M. sylvestris var.)。薄とつくが花色が濃いタイプ。
対して、比べるとマジで青く見えるゼニアオイの品種'Blue fountain'。たぶん食える。

アスター咲きのセイヨウノコギリソウ

農道の縁石の割れ目に1株だけ生えていた、保護しているセイヨウノコギリソウの花びらがすべてチリチリで咲く変種。
1回花期は終わったんだけれど、ここ最近の多雨のおかげか再び元気に花芽を伸ばしてきてつい最近咲きはじめた。
変異は株全体で起こっているようで、やはり新しい花茎からも同じくチリチリ・菊のように咲くようで、この子の種子にも形質が受け継がれてたらおそらく新種になるんじゃないかとみている。

【本題】ラベンダーが枯れるヤベェ気候条件をデータで探る。

1)ラベンダーの性質そもそも論。

小株の若い苗木たちは比較的長雨には強い

さて、まず事前に押さえておきたい情報というのが、イングリッシュラベンダー=コモンラベンダー(Lavandula angustifolia)は、猛暑・暑さが苦手だから涼しい北海道ですくすく元気に育つ、のではなく、
「熱帯雨林」「ジャングル気候」のような暑さon湿度になってはじめてマジでダメになるのです。

コモンラベンダーは、確かにシソ科ラベンダー属植物の中でもアルプス山脈の亜高山帯など「雪」が存在するエリアに唯一適応して進化したラベンダー種なのですが、多くのラベンダー属植物はアフリカのサハラ砂漠を中心としたエリアに多く分布していて先の氷河期にはサハラのステップ帯で繁茂していたことがわかっており、つまり砂漠の猛暑・乾燥にはそもそも強い植物種なのです。

短くまとめると、『ラベンダー属植物たちは大昔半砂漠で進化した植物なので暑さと乾燥にはめっぽう強い』のです。

が、「砂漠・乾燥帯で適応進化した」となると、反面長期のジメジメ・雨降りにはマジで弱いのです。

なので、本州でラベンダーが枯れる根本的な原因は、6月初夏から始まる猛暑に加えて梅雨の多湿気候が乗っかってくることにあるのです。
ただ単純に暑いだけ・梅雨のない夏は、ラベンダーにとってはそこまで苦じゃないのです。
(さすがに多くの水分補給をする苗木の土壌乾燥はさすがに枯死に直結しますが…)

2)では昨年の北海道の気候をみてみよう。

ラベンダーにとってヤバそうと思える数値をマークした

さてさて、アメダス観測点はわたくしのラベンダー研究園から10kmあまり離れてますが、近場として岩見沢データを見るほかありません。

単純な猛暑日は無視していて、降雨日からの高温と高湿度に注視してます。
風速
も3m以下となれば湿気が吹き抜けにくいだろうとみてマーク。
高い湿度だけの日は無視、確実な降雨により土壌が湿ったことにはならないからで、根腐れのリスクを上げる因子にはならないと判断しました。

で、みた感&体感ヤバかったと感じた3ヶ月分を算出してみました。

やはり8月から9月半ばまで数日おきの確実な雨と高温、高多湿と風の吹かない日が集中していますね。明らかヤバそう。不快度指数Highの日が連続してそうだ。
これが『ラベンダーを枯らしに来る魔の気候』だとみて他シーズンを見てみます。

去る記憶に新しい今年7月。

まぁ雨の日が集中してきたのに対してなんと気温30℃に迫る日がもう連続しはじめてました。加えて80%を超える連続したジメジメDay。
そりゃ"悪夢の再来"を知らせる鐘が鳴り始めるワケだよ。。。

3)おもしろそうだったので同様に過去4年分の気候動態をみてみる。

なんだかゲノム研究・遺伝子座のデータシートみたいですね。
←から過去に戻ってみていってます。なんだかヤベェ気候のパターンに変化しつつある感じ。
高温日と降雨日が重なる日というのが増えてってるのがわかります。


【付録】カナダ・オンタリオ州のラベンダー栽培情報啓発ページ

コモンラベンダーの植栽最低間隔は120~150センチを推奨。
ラバンジンラベンダーの場合は150~180センチを推奨。
定植5年目で花茎/最大樹冠が重なり合うようになる。

定植から時期浅く苗木が若い頃は黒いウィードシートが日射により加熱され、若い苗木の根っこにダメージを与える。(栽培初期1~2年の期間)

カナダ・オンタリオ州のラベンダー栽培現場でも長期の多雨による根腐れ・枯れが発生している。
対策としては土壌の排水性の向上を促している。

カナダで栽培されるオランダ産英国品種'Twickel purple'は、未開花では淡く薄紫色・開花後明るい紫色に大きく見た目の花色を変えることが記載。

ラベンダー栽培における過湿対策を織り込んだ土壌改善法。

多湿でラベンダーが枯れる(根腐れの根本理由)のは土中で腐食菌が繁殖するためにある。

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。