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【蒸留日記 vol.107】オオハナウドの花冠を蒸留してみる!

※遅刻投稿ですが、本記事オオハナウドの蒸留期日は5/31です!

さてさて続きましては"北海道において"名のある雑草的植物シリーズ。

5月下旬から一気に大きな花を咲かせはじめてこの時期一気に存在感を出してくるセリ科オオハナウド!

丸で囲ったところにオオハナウドがわんさか生えている
この時期白い花を咲かせるのはフランスギクとオオハナウドのようだ

この時期の雑草といっても過言ではないほど生えてくるんですよ。
それも腐るほど生えてきます。もうそのへんにわっさりもっさりと!

で、ちょっと視点変えて同じセリ科植物のノラニンジン(Daucas carota):いわゆる野菜ニンジンの原種植物から精油がとれるなら、同じセリ科オオハナウドからも精油がとれんじゃね?という当然の疑問が浮かび上がったので、そりゃやってみましょかー!と前回に続き軽いノリで蒸留試していきまっす!


■オオハナウド(Heracleum lanatum ssp. lanatum)のプロフィール!

オオハナウドの大花序
茎から放射状に花茎が伸び、その先にさらに小花が付くセリ科で多く見られる散形花序をしている
オオハナウドの小花序
小花序の花びら(Petals)はサイズが非対称に付き、おもしろい形状をとる
大花序の内向き外向きに従った形状となる
オオハナウドの全体像
基本的に何本かで密生している

学名Heracleumはヘラクレウムと呼んでます。セリ科ハナウド属の植物ですね。
”ウド”とは言いますが山菜のあのウド(Aralia cordata)とは全くの別植物みたいで、山菜の方はウコギ科タラノキ属植物でした!

見上げるような高さがあるオオハナウドの草丈

オオハナウドの植物サイズはそのへんに生える普通のものでもまぁ大人と同じくらいのサイズ大きければ2mは超えてるくらいの草丈。
初夏には花を咲かせてしまうので茎が竹やイタドリのように中空の設計となっていて伸長速度がめっちゃ早いんですね。

そして、、、

花冠・大花序の直径は20cmを超える

草丈がデカければ花(花冠)も当然デカい!

花の構造はセリ科植物なので散形花序。ノラニンジン(Daucas carota)フェンネル、ディルの花とほぼ同じつくりをしています。

よく見間違えられますが、キク科ノコギリソウ(Achillea sp.)とは花序の作りが微妙に違い、こちらは散房花序なので別モノ。
しかし精油販売サイトなんかでは結構な割合でセリ科の花と間違えて掲載している例をよくみますw

▶︎あの"世界一の毒草"とも近縁。

毒草マニアは絶対抑えているであろう悪名高きジャイアントホグウィード(Heracleum mantegazzianum)
和名をバイカルハナウドというのですが、こちらもオオハナウドと見事に兄弟的近縁種。

なぜ世界一の毒草なのか?というと、樹液に含まれるフラノクマリンという成分の濃度がめっちゃ高いそうな!
フラノクマリンは液が染みた状態で太陽光に晒すとかなり厄介な皮膚炎症を起こすことで有名な、ベルガモットなど柑橘類の圧搾精油にも含まれてる有害成分ですね。

・・・ということもあって、オオハナウドはバイカルハナウドほどの毒性・有毒成分濃度ではない(アイヌ民族は食用にしていたとの話も)そうなんですが、ゼロでもなさそうなので一応手袋を履いて毒草扱いで蒸留してみることとします。

ちなみになんですが、フラノクマリン類は精油成分主体のテルペン類より重い成分なので水蒸気蒸留法による抽出だとフラノクマリンフリーとなる(蒸留精油には含まれない)、という噂です。根拠の文書などはみっけてません!笑

■材料&蒸留準備

ハナウドの花冠集めはやや大きめのカマを使ってスパスパ花冠を切り落として集めました。小1時間くらい収穫作業しましたかね?

オオハナウドの花冠はデカすぎるのでそのままだと蒸留器には収まりません。なので・・・

大花序を刻んで小花序だけにした

さらに放射状に開いている小花序だけを切って落とし、細切れ状態としました。これだとうまく蒸気が当たって精油が出てきてくれそうです!

バケツ重量852gを差し引いて2557gでの蒸留となった

オオハナウド花のみの素材重量は2557グラム。
お花が相手(花の香りを採りたい)なので蒸留時間は1時間半としました!

■結果は…!?

前回蒸留でヤロウを蒸留したのでカマズレンの青色がついてしまいましたスイヤセン…

抽出結果は1.5mLとなりました!

1.収油率

抽出量[ 2ml ]÷ 素材重量[ 2557g ]x 100 = 0.078%

6月初旬オオハナウド蒸留の収油率/Heracleum lanatum EO yield

一応は精油は出るが特に有用成分が含まれていない限り商用生産には向かない低い収率といった感じですかね!
0.1%を下回るといよいよ蒸留するだけ光熱費のムダとなってしまいますからね。
ラヴァンジュロールが気になるから成分検査依頼してみようかなぁ…

2.香りとか

ラベンダーの情報探求のために購入したフランスの亜高山植物図鑑
フランス-グルノーブル地域にもハナウドは生えているようだ

精油ではなくお花自体の話なのですが、私がフランス語教材として持ってるフランス-グルノーブル地域の亜高山植物図鑑によると、ハナウドはミルラ(精油)的な樹脂の香りがするとの記述がありました。

フランスのハナウド(欧州種)と北海道のオオハナウド(北東アジア種)は同じHeracleum属なので近縁同士なのですが、花から特有の甘い樹脂的な香りがする点においても同じ特徴をもっているようでした!
(南仏ハナウドの香りは嗅いだことない)

で、そのハナウド(Heracleum sp.)に特有の香り特徴(Aroma characteric)と思しき「樹脂的な香り」は、蒸留した後でもちゃんと精油の方に移ってくれるのです!
ということあって、オオハナウドの芳香蒸留水は香りにまったく甘みを感じない、くどい野菜のような匂いなのですね。
明るい土っぽさというか、いい香りとはいえません。

対して精油は、花自体ほど甘い香りはしませんが、ノラニンジンともまた異なった香りがします。
しかしハナウド精油単体で癒されるか?というと怪しいところではありますね…テラピー利用では難易度の高い精油でしょう。

https://www.researchgate.net/publication/270216889_Composition_And_Antimicrobial_Activity_Of_The_Essential_Oil_Of_Heracleum_Lanatum_Michx_From_Uttarakhand_Himalaya?_tp=eyJjb250ZXh0Ijp7ImZpcnN0UGFnZSI6Il9kaXJlY3QiLCJwYWdlIjoiX2RpcmVjdCJ9fQ

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