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ことばにできない「エッセイ集」

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ことばにできない。 出せない手紙の束のようなものです。
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#エッセイ

塵芥記

塵芥記

転職が決まり、社内での引き留めの呑みも終わってしばらくすると、送別会とも言わない純然たるただの呑みが、続くようになった。
上司が毎晩、顔は知っているが話したことはない社員を引き合わせてくれる。疲れていたり嫌だったりという理由では、極力人の誘いを断らないように決めているが、こうも連夜続くとさすがに、素面の体臭すら酒精を感じる気がし始める。それでも、毎夜赤坂見附の改札で上司の背中を見送り、それからゆっ

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「生死の彼岸 : 祖母はまだ、私を見ているようだった」

「生死の彼岸 : 祖母はまだ、私を見ているようだった」

2021年夏祖母の危篤の報を受けた。入退院する様子を、そしてゆっくりと意識の無くなっていく様子を代わる代わる見舞いに行く兄弟から聞きながら、それでも生前の挨拶を諦める事に決めたのは、私が祖母のことを、あまりよく知らなかったからだろう。

 生死の彼岸:祖母はまだ、私を見ているようだった

 みちこさん。伊予ばあちゃん。卒寿をとうに越え、白寿も見える祖母は、2022年眠ったまま年を取る。2021年の

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