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【絵本】「シニガミさん」 宮西達也

「だれでも、じぶんが 生まれた日  たんじょうびは しっています。 でも、じぶんが 死ぬ日を しっているひとは だれもいません。 それが わかるのは、その日を きめるのは   わたくし シニガミでございます」



「シニガミさん」 宮西達也



「この絵本、すごくよかったから読んでみない? こんど読み聞かせしようと思ってるんだけど、感想よかったら、聞かせて!」


いつもボランディアで読み聞かせをしている妻が、絵本を出してきて僕に言いました。


「いいよ、読んでみる。どんな絵本?」


すると


目の前に差し出された絵本が・・・


「シニガミさん」


うっ、タイトルがすごい!( ̄_ ̄ i)


真っ黒の表紙にシニガミさんが、ニヒルに笑っている・・・


冒頭

だれでも、じぶんが 生まれた日
たんじょうびは しっています。
でも、じぶんが 死ぬ日を 


しっているひとはだれもいません。


それが わかるのは、
その日を きめるのは
わたくし シニガミでございます


一気に興味が湧き、読みはじめました。


自分が死ぬ日はわかりません。


明日なのかもしれないし、30年後かもしれない。


ひょっとすると、120歳くらいまで生きるのかもしれない。


自分自身、全くそんなことわからないし、もしも、わかった人がいたとしても、それは・・・・・・


わかっているのは、シニガミだけなのです。( ̄ー+ ̄)


シニガミは、どんな姿にもなれるのです。花や草、雲や空、そして、絵本の冒頭は木になっています。


シニガミが化けている木のそばで、コブタが苦しそうに倒れています。


シニガミはわかっています。
コブタはあと何日かすると、死んでしまうのだと。


そこに


はらぺこのオオカミがやってきました。

「あー はらへったな・・・なにか うまいものたべたいな・・・」


ふりかえると


コブタが倒れています。


オオカミはコブタにとびつき、食べようとしましたが、なんか様子が変。コブタは、苦しそうな息をしています。

「こ、こいつ・・・びょうきか・・・

うまそうだけど、びょうきじゃなぁ・・・。」


オオカミは、コブタをかかえて家に持ち帰りました。


その光景を見ていたシニガミは、つぶやきます。

「そうそう あの オオカミも あと なん日かで 死んでしまいます。まぁ、ずるくて きらわれもののオオカミです。 しかたありませんね。 ホホホホ・・・」


家につれて帰ったオオカミは、コブタをふかふかのふとんに寝かせて、つぶやきます。


「元気になったら食ってやるからな!」 と。


つぎの日


オオカミはコブタに、あったかいコーンスープをつくってやりました。


そのつぎの日は


へんてこな歌を歌いながら、おどってあげました。


それを見ているシニガミは言うのです。

「元気になんかなれませんよ。あなたたちはもうすぐ死ぬんですから」 


オオカミは、一生懸命コブタを看病するのですが、病気はよくなりません。


オオカミは、花をつんできました。

「き、きれい」


コブタは、小さくほほえみます。


気をよくしたオオカミは、つぎの日も野原に花をつみに行きました。


そのとき、オオカミは思い出します。

「むかし おじいちゃんが、はなも はっぱも まっかなくさを たべると、どんな びょうきも なおるって いってた! よーし!」


それから、毎日、毎日、風が吹く日も、雨が降る日も、まっかなくさをさがしつづけました。


しかし


まっかなくさは、みつかりません。


コブタは言います。

「もうだめかもしれない 元気になって オオカミさんに食べてもらいたかったのに」


オオカミは、コブタに

「な、なんで あきらめるんだ!

な、なぜ、よくなろうとしない!


なぜ、生きようとしないんだ!


げんきになったら たのしいことや


ステキなことが いっぱいあるんだぞー!


おれさまに たべられたいんだろー!


だったら げんきになるんだ! わかったかー!」





「は、は、はい・・・」


オオカミはすごいガケのところに、まっかなくさをさがしに出ました。


火曜サスペンス劇場のような、するどい急なガケです!


シニガミは、さみしそうに言います。

「ただ このガケを おりて、生きてかえったものは ひとりも いません・・・」


風もビュー、ビュー吹いています。


オオカミは、身震いしながらガケをおりてゆきます。


この絵を見ていると、オオカミとコブタの親愛度がわかります。


もうオオカミにとっても、コブタにとっても、お互いがいなくてはいけない存在になっていました。


オオカミがいのちがけで、まっかなはっぱをつかんだ 


そのとき


絵はそこで終わっています。


そのまま、ガケから落ちてしまったのか?






それから、何日かたちました。

「ホホホホ・・・。わたくしが いったとおり、あの オオカミは ガケからおちて、コブタは びょうきが なおらず 死んでしまいました。・・・と、おもいます?



あのね、いま、あのふたりは━━


さいごのページのオオカミとコブタの
幸せそうな絵をぜひ実際にご覧ください。


さすがのシニガミさんも、あのふたりを死なせたくなかったんでしょう。


シニガミも神さまなんですよね。


あきらめないこと、希望をもつこと、無心で人のためにつくすこと


そうすれば、運命は変わる!


シニガミさんのニヒルな笑み。


僕にはそう映りました。( ̄ー+ ̄)




【出典】

「シニガミさん」 宮西達也 えほんの杜


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