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新人ライターや編集者に教えている 「赤字は直すだけでなく、読め!」

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。

前回、前々回と新人ライター&編集者向けの記事を投稿したので、そろそろ別のネタにしようかと思っていた矢先、「大人がなりたい職業」の第1位にライターが選ばれるという、衝撃のニュースが!?

喜ばしいというか、舐められている(笑)というか、なんとも言い難い心情になりつつも……そんなにニーズがあるのであれば、ということで、今回も新人ライター&編集者向けの記事第3弾を書きたいと思います。

書くだけじゃ上手くならない?

SNS界隈でも「文章が上手くなりたい」というコメントをよく見かけます。それに対し「とりあえず書け!」みたいな回答をする人も。たしかに書くことは大事なのですが、それでプロレベルまで上達するかといえば、正直「う〜ん」と言わざるを得ません。

そもそも「文章が上手い」とは誰が判断するのか?
当たり前のことなのですが、それは「読者」ということになります。

すべての媒体には必ず想定するターゲットというものがあり、そのターゲットである読者層に向けて書き分けをすること必要だと、第1弾「短文のススメ」でも書きました。

さまざまな媒体、さまざまな読者。それに対し、さまざまな文章のスタイルがあります。明確な目的もなく、闇雲に文章を書いても「自分なり」というひとつの物差しでは、読者に評価される文章が書けるようになるとは限りません。

「じゃあ、どうすればいい?」
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。


添削されなければ上手くならない

ターゲットに刺さる文章を書くというのは、自分視点だけで判断するのが難しいもの。そこで各媒体には、Webであればディレクター、紙媒体であれば編集者というコンテンツのクオリティをチェックする役割の人が必ず存在します。

このような人々が書き手と読者との間に立ち、媒体にふさわしい適切な文章や表現になっているかをチェックしているわけです。

いざ、書き上げた原稿を媒体の担当者に提出。そこで担当者による添削を受けることになります。そして、添削の結果は「赤字」として執筆者に戻されます。

この「赤字」の入れ方。担当者によって相当な個人差があります(笑)。昔、社内20名ほどの全ディレクターに同じ原稿に赤入れしてもらい、比較検討するというワークショップを開いたことがあるのですが、本当に入れ方は十人十色でした。

きめ細やかに説明文付きで入れる人もいれば、かなりざっくりとした入れ方をする人も。とはいえ、執筆者は赤字の指示に従って原稿を修正することになります。

ここで、私が後輩たちに個人的に教えていること。

「赤字は直すだけじゃなく、読め!」です。

新人さんや若手の執筆者の中には、「赤字は直せばいい」と単純に考えている人が大勢います。「修正して納品すれば問題ないでしょ」と。

しかし、こういう考え方をしていると、「文章が上手くなりたい」という当初の目的は遠き道のりになると思います。それはなぜなのでしょうか?

赤字は情報の宝庫

原稿に記載された「赤字」。その赤字には、媒体担当者の意図が込められています。理由もなく記載することは一切ありません。それは単に文章の基礎的な観点から入れられたものもあれば、媒体の特性に準じたもの、そこに込められた意図はさまざまです。

例えば……
「〜体言。〜体言。〜体言。」と書かれたものに対し、
「〜体言。〜です。〜体言。」と修正指示があった場合。
意図としては……
「体言止めが連続していると、リズムがぶつ切りになって読みづらい」
ということが考えられます。

さらに……
「〜がおすすめです。〜なので、おすすめです」と書かれたものに対し、
「〜がおすすめです。〜なので、〜に便利。」と修正指示があった場合。
意図としては……
「同じフレーズを重複させてはいけない。です、も連続で繰り返さない」
という情報が読み取れます。

上記のような文章の基礎的な指摘以外にも……
「この冬、例年よりも積雪量が増加。極寒の季節となりました」と表現したものに対し……
「この冬は、例年よりも雪が多く、寒さが厳しい季節になりました」と修正が入る場合も。
これの意図としては媒体の特性が関係しており……
「熟語表現を減らし、柔らかい表現に変換すべし」
のように「媒体に合った表現に注意してほしい」という意味合いが。

ここでお気づきかと思いますが、赤字の意図を読み取ると、そこには「文章上達」のためのヒントが隠されています。

これまでは「自分なり」というひとつの物差ししか持っていなかった状態から、赤字を入れた担当者の視点「新たな物差し」を手に入れることができるのです。そして、そうした物差しをたくさん増やしていくことで、より読者の視点に寄り添った文章が書けるようになっていきます。

「赤字は読め!」

このように赤字を読み込んで、原稿を書く際の判断の基準「物差し」の幅を広げていくこと。これこそが文章上達の近道といえます。

無闇に書くだけでは、物差しはなかなか増えていきません。他者に添削してもらい、さらにその他者の視点を手に入れていく……。この積み重ねを延々と繰り返していくと、いつの間にか「文章が上手い!」と評価されるようになると思います。

「赤字は読め!」です。

文/編プロのケーハク

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