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新人ライターや編集者に教えている「わかりやすい文章は“雑踏”でも読める!」
今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。
最近、わけあって大学受験レベルの現代文の試験問題を解いたりしてます。
これでもベテラン編集者ですから、文章のプロですから、読むのも書くのも膨大な量ですから、当然、勉強せずとも100点でしょうと……。
80点(泣)。
結構、間違えてしまうんですよ。皆さんも思い出してみてください。評論文とか随筆とかが例題にあって、これらの意図するところはなにか? みたいな問題。
ゲラ読みのようにかなり意図を読み込んで、「これが正解でしょ!」と自信を持って答えたものが、間違っているという……。「ええええ〜!!! マジか!?」
例題に「わかりにくいんじゃ! 赤字入れたろか!」と逆ギレする始末です。
普段、仕事で扱っているプロのライターさんの文章は、なんとわかりやすいことか……。
「文章のわかりやすさ」アンチも
最近、SNS界隈では「わかりやすさ」アンチみたいな意見もたまに見かけます。ベストセラーなどの目に触れやすい文章は、圧倒的に「わかりやすさ偏重」の傾向にあるので、その気持ちはわからなくもありません。
「わからないものは、わからないままでいい」(by又吉)
たしかに私もそう思うんです。小説とか随筆とか、作家さんの文章に関しては。
不条理な情景描写の連続から導き出される心情表現や、相反するものの葛藤がそのまま真実となる考えなど、パッと見で理解しにくい表現はたくさんあります。しかし、文章表現そのもので世界観を構築することが目的であるものは、それでよいと思います。解釈を読者に委ねるスタイルもありです。これらは「情報を伝えること」が目的ではなく、文章表現そのもので心を動かすことが最優先なのですから。
文章の目的が違う
「表現で楽しませること」「情報を伝えること」
この目的の違いを同列に考えられてしまうと、話がややこしくなります。
冒頭の現代文の例文に戻ります。随筆は文芸(文章表現そのものに価値)に入るのでわかりづらいものもあるでしょう。
でも、評論文はちょっと引っかかりますね。「対象に関する筆者の主張を論理的に伝える」ことが目的とすれば、伝わりづらい文章は問題かもしれません。
試験問題の例題になる評論文に多いのが、主語が追えないほど読点で連なる「果てしない文章」です。
「〜は、〜であり、〜である一方で、〜だったり、〜だったり、〜しながら、同時に〜し、〜するため、〜見方によっては〜であると言えなくもないが、結局〜であると考えた一部の〜が、〜になるというわけだ」
なにが言いたい! となることが多かったりします(笑)。
注意深く読み込めば、理解できるのでしょうが、「主張を伝える」ことが目的と考えると、「赤字を入れてもいいのでは?」と思ってしまいます。
わかりやすさとは?
媒体ごとのターゲットに合わせた文章というのは、これまでの記事でも語ってきましたが、わかりやすさってなんだ? となると、今回の試験問題の件が参考になるかもしれません。
雑誌や文芸ではない一般書籍、web記事のような「情報を伝える」ことが目的の文章の場合、試験の例題のような「じっくり読み込んで、ようやく理解できるレベル」だと、わかりづらい文章とジャッジされると思います。
それはなぜか?
読者がじっくり読み込んでくれるとは限らないからです。
たとえば純文学の作品を読むとき、積極的に本の中に入り込んで、文章が意図するところを能動的に考え、解釈に努めるのではないでしょうか?
では、雑誌やweb記事を読むときはどうでしょう?
移動しながら、音楽を聴きながら、お菓子を食べながら、人と会話をしながらなど、半分は現世に感覚を残しておく「ながら」の状態にあることが多いのではないでしょうか?
「脳内は受動的な状態。でも、情報はすんなり入ってくる」
情報を伝えることを目的とする場合、個人的には、これが大事だと考えています。積極的に考えないと理解できない文章ではなく、白紙の状態(どんな状態)でもスッと内容が頭に入ってくること。
リズムだったり、一文の長さだったり、熟語の数だったり、わかりやすい文章には、いろいろな要素があります。一方、捉え方によっては、これらも「意識半分でも情報をキャッチできる」ようにするための要素といえるのではないでしょうか。
ライターは作家ではないので
読者の文章を読むシチュエーションを縛らないようにし、いかなる「ながら」の状況でも理解できる文章。「雑踏の中で読んでも理解できるようイメージしてください」私は新人さんに指導するとき、こんなイメージを伝えています。
もし試験問題の例題になったら、すべての人が楽勝で100点を取れるような文章ですね(笑)。
文/編プロのケーハク
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