新聞紙に日々の生活を焼き付ける「現在の青図 -社会の皮膚-」のつくりかた
「現在の青図 - 社会の皮膚-」とは?
Blueprint of NOW -Social Skin-
新聞紙に感光液を塗布し、記事の内容の関連するモチーフを焼き付けフォトグラムを制作する作品シリーズ。
2017年から定期的に制作をしています。「社会の皮膚(=新聞)」にその時の時間を焼き付けることで「社会の情報」と「個人の記憶」の関係を探ります。
現在の青図 - 社会の皮膚 -Blueprint of NOW -Social Skin-
現在(2021/01/19)、2回目の緊急事態宣言下でこの記事を書いている。
しばらく、このシリーズの制作はしていなかったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年4月、緊急事態宣言が発出された頃、このシリーズの制作に熱が入った。
その理由は、制作をしながら少しずつ実感・理解していくことになるが現段階で言語化でき符に落ちている2つを記したい。
1つめは、「大きな物語による大きな力」が、自分自身の生活のリアリティと乖離している実感があった、その「大きな物語による大きな力」と、自分自身が今、生きていること、感じていることなど、生活すること自体との関係性を重ね合わせ確認する必要があった。
2つめは、非常事態にも慣れが生じてきてしまう恐ろしさを日々感じていた。その慣れていく怖さを、制作をすることで補正したいと感じている。
制作の様子は随時TwitterやInstagramでアーカイブをしている
作品制作は6つのプロセスで行われる
1:新聞紙に感光液を塗布し、感光面をつくる作業
刷毛で画面全体に均一に感光液を塗布し、乾燥させる。
2:画面のレイアウトを考えモチーフを配置する作業
日々の生活の中で使用している日用品や、食べたもの、行事で制作したものなどを織り交ぜながら画面のレイアウトを考える
3:太陽光で露光する作業
冬は陽差が弱く、露光時間は約20分。また南中高度が低く、影が伸びやすいのでレイアウト時にモチーフの配置に配慮する。また露光中に風などで軽いものが動いたり飛ばされたりするので注意が必要。
4:露光の様子を確認する作業
未露光の感光面は黄色だが、露光が十分の感光面は青くなる。
露光の状態、潜像が現像前に目視できることがこのプロセス(サイアノタイプ )の最大の特徴とも言える。モチーフをずらして見て、色彩の変化の差が十分であればOK。
5:現像作業
制作の中でもとてもワクワクする瞬間の1つ。露光した場所が水で現像することで鮮やかな青となって現れる。未露光の場所は元の支持体が現れる。
新聞紙はとても薄く、水に弱いので細心の注意を払いながら現像する。
6:シワを伸ばす作業
乾燥した新聞紙にはシワが多くある為、アイロンを使いシワを伸ばす。
そして、完成!
「現在の青図-社会の皮膚-」
Blueprint of NOW -Social Skin-
2021.1/15
812mm×546mm
Cyanotype on Newspaper
現在の青図 -社会の皮膚 2021.01/15-
制作の一連の流れを動画にしてアップしました。(追記日:2021/03/04)
制作中に緊急事態宣言についての町内アナウンスが入るのにも慣れてしまう中、慣れていく日常で、慣れない制作をしながらしっかり記録して記憶するこの作品シリーズを今後も継続的に行なっていきます。
制作を応援してくださる方はお気持ちをいただけたら嬉しいです。
また手作りの感光紙を販売しています。おうちでカメラを使わない写真を制作して見ませんか?
https://asaworks.official.ec/items/30438926
この記事が参加している募集
⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター