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世界が驚く日本独自のランドセル文化「なんでそんなに高いんですか?」【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.88】

毎年4月になると日本では新しい学年が始まり、小学生はランドセルを背負って通学する。そんなランドセルだが、調べによると、6割の保護者は5~7万円でランドセルを購入しているようだ。

江戸時代末期、幕府がオランダから輸入したRanselがランドセルの始まりとされている。その後、次第に独特の形になり、通学用ランドセルとして全国に普及し、日本の小学生のトレードマークになった。

小学生のほとんどが使うランドセルは、「工房系」と「大手メーカー製」の大きく2つに分類される。

工房系で最も有名なブランドは、皮職人がすべて手作りする高級ランドセルの土屋鞄製作所で、最高級の価格は14万円だ。しかし多くの保護者は、大手メーカー製の人工皮革のランドセルを選ぶ。平均価格は5万円だ。

記者は2019年末に、セイバンの兵庫県の姫路と室津にあるランドセル工場を訪問した。

複雑な製造工程

姫路工場工場長の金本は、ランドセルを快適に背負うために大切なポイントは肩ベルトにあると教えてくれた。直接、体に触れる部分で、位置が少しずれると快適さに影響が出る。「肩ベルトに“天使の羽”が入っていて、これが一番大切なことなのです」と金本は言う。

2003年、セイバンは特許パーツ“天使の羽”を開発した。肩ベルト内部の翼の形をした樹脂のパーツだ。天使の羽により肩ベルトが根元から立ちあがり、背中の比較的高い位置でランドセルを保てる。これによって体感重量を20%減らす効果を実現した。

ランドセルは、本革が一番良いと考えがちだが、実はそうではない。76%の保護者は人工皮革を選ぶのだ。

「人工皮革は本革より軽く、雨やキズに強い。表面に加工も施してあり、手入れも簡単で、お子様でも安心して使えます」と裁断担当の世良直也は言う。

「ランドセル作りはとても複雑です。250以上のパーツで作られ、工程も多数あります。時代と共に機械化しても、機械化が難しい工程も多く、手作業が必要なのです」

ミスの許されない職人技

ランドセル1つに、多くの職人と多くの工程が密接に関わり、やっとでき上がる。少しのミスや、力不足で縫い目が不均等になれば、そのランドセルは不良品となる。室津工場工場長の大西則彦は言う。

背中上部の肩ベルトをつなぐパーツは、一本のベルトが動くと、もう一本が連動して動く。体がどの方向に動いても、重さが均等に両肩にかかり、重心を安定させる。ランドセルを快適に背負うために位置は大切なポイントだ。少しのずれも許されない。そのため特別に部品を1つ加え、裏面から固定し、ずれないようにしている。

最も難しい工程は、でき上がったランドセルの前の部分と後の部分を組み合わせて縫い上げるところだ。職人はランドセルを回しながら縫い合わせ、二層、三層と生地が重なる箇所もあり、力と技術が必要となる。

ランドセル作りは毎日同じことを繰り返す仕事のようだが、職人は良いランドセルを作ることに喜びを感じる。

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