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アカデミー作品賞、個人的ランキング⑥(40~31位)

みなさんこんばんは。
今回は作品賞ランキングの続きを書いていきます。

40位 『パラサイト 半地下の家族』(第92回・2019年)

6ノミネート・4受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞
ノミネート : 編集賞、美術賞

他のノミネート作品
『ジョーカー』(11ノミネート・2受賞)
『1917 命をかけた伝令』(10ノミネート・3受賞)
『アイリッシュマン』(10ノミネート・0受賞)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(10ノミネート・2受賞)
『ジョジョ・ラビット』(6ノミネート・1受賞)
『ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語』(6ノミネート・1受賞)
『マリッジ・ストーリー』(6ノミネート・1受賞)
『フォード vs フェラーリ』(4ノミネート・2受賞)

 外国語映画賞(国際長編映画賞)で一度もノミネートすらされたことのない韓国映画がなんと作品賞を受賞したということで、日本でも大きな話題になりかなりのヒットを記録したのは記憶に新しいでしょう。
 さて本作ですが、ポン・ジュノのこれまでの実績を考えても妥当だと思いますし、外国語映画が作品賞というのは快挙だと思います。
 しかし一方でパンドラの箱を開けてしまったなとも思います。アカデミー賞はそもそもアメリカの映画賞であって、「世界映画賞」ではないはずです。それはカンヌやヴェネツィアの役割でしょう。候補になるまでは分かりますが、受賞はすべきではなかったと思います。
 さてそれは置いておいて、本作は物凄い期待をしていて、プレミアシートを予約して観に行ったんです。ただその期待が大きすぎたんでしょうね。社会問題をエンタメに消化する力は素晴らしいと思いましたが、あんまりスッキリしないなというのが正直なところでした。

39位 『ガンジー』(第55回・1982年)

11ノミネート・8受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、主演男優賞(ベン・キングスレー)、脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、撮影賞、編集賞
ノミネート : 作曲賞、録音賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞

他のノミネート作品
『E.T.』(9ノミネート・4受賞)
『ミッシング』(4ノミネート・1受賞)
『トッツィー』(10ノミネート・1受賞)
『評決』(5ノミネート・0受賞)

 この回は順当に最多ノミネートの本作が最多受賞を果たしました。スピルバーグの傑作『E.T.』が受賞できなかったことを嘆く声が多いですが、『E.T.』は確かに傑作ですが作品賞らしいかと言われると微妙です。
 その意味ではガンジーという歴史上の偉人をスケール感たっぷりに描き出した本作は作品賞らしい作品賞と言えるでしょう。
 特筆すべき演出はありませんが、ベン・キングズレーのガンジーになりきった演技、過不足なくテンポよく描き出す演出、インドを詩情豊かに映した撮影と全てが上手く噛み合っています。

38位 『巴里のアメリカ人』(第24回・1951年)

8ノミネート・6受賞
受賞
: 作品賞、脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、撮影賞、ミュージカル音楽賞
ノミネート : 監督賞、編集賞

他のノミネート作品
『暁前の決断』(2ノミネート・0受賞)
『陽のあたる場所』(9ノミネート・6受賞)
『クォ・ヴァディス』(8ノミネート・0受賞)
『欲望という名の電車』(12ノミネート・4受賞)

 この回はMGMから二作作品賞候補があがっていて、それは本作と『クォ・ヴァディス』なのですが、MGMとしては歴史大作である『クォ・ヴァディス』を本命としていたため、本作の受賞は戸惑いだったそうです。そして名誉賞という形で黒澤明『羅生門』が受賞しました。
 この年は傑作が多く、主演男優賞を除く演技賞を受賞した『欲望という名の電車』やジョージ・スティーヴンス『陽のあたる場所』、アーサー・ミラーの戯曲を映画化した『セールスマンの死』など。
 本作は今もミュージカル映画の金字塔として語り継がれる名作ですが、実は非常に奇妙な構造の作品です。後半のダンスシーンはリアリティを無視し舞台装置のようです。それがマイナスにならず、ミュージカル映画の名手ヴィンセント・ミネリ監督による実に鮮やかな手腕がダンスを輝かせます。
 作品としては『欲望という名の電車』などの方が好きですが、作品賞としては本作で納得です。

37位 『マーティ』(第28回・1955年)

8ノミネート・4受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、主演男優賞(アーネスト・ボーグナイン)、脚色賞
ノミネート : 助演男優賞(ジョー・マンテル)、助演女優賞(ベッツィ・ブレア)、美術賞(白黒)、撮影賞(白黒)

他のノミネート作品
『慕情』(8ノミネート・3受賞)
『ミスタア・ロバーツ』(3ノミネート・1受賞)
『ピクニック』(6ノミネート・2受賞)
『バラの刺青』(8ノミネート・3受賞)

 この回は少し変わっていて、作品賞候補作のうち監督賞でもノミネートされているのが本作と『ピクニック』だけです。監督賞では『旅情』のデヴィッド・リーン、『エデンの東』のエリア・カザン、『日本人の勲章』のジョン・スタージェスが入っています。また稲垣浩監督の『宮本武蔵』が名誉賞を受賞しています。
 さて本作ですが、元々はテレビドラマで、その映画化作品です。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞しています。
 気の弱いマーティが一人の女性と出会い自分を見つめ直していくというとてもいい話で、作品賞としては少々小ぶりかなとは思います。ただやはり主演のアーネスト・ボーグナインが素晴らしく、相手役の女優さんや母親も素晴らしいです。主演男優賞に『エデンの東』ジェームズ・ディーンがいる中、よくとれたなと思いますが、マーティというキャラクターを会員は愛したのでしょう。
 小ぶりで地味ではありますが、とてもいい作品でした。

36位 『ディパーテッド』(第79回・2006年)

5ノミネート・4受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞
ノミネート : 助演男優賞(マーク・ウォルバーグ)

他のノミネート作品
『バベル』(7ノミネート・1受賞)
『リトル・ミス・サンシャイン』(4ノミネート・2受賞)
『硫黄島からの手紙』(4ノミネート・1受賞)
『クィーン』(6ノミネート・1受賞)

 無冠の帝王マーティン・スコセッシが遂に悲願のオスカーを受賞した作品です。ただスコセッシファンからは「これじゃないだろ!」と総ツッコミを食らっているという笑
 それもそのはず、本作は香港映画『インファナル・アフェア』のリメイクです。僕としてもスコセッシなら『グッドフェローズ』とか『アビエイター』とか『ギャング・オブ・ニューヨーク』とか今までにもあったじゃん!と思いますね。
 ただそれは抜きにすると元の作品のおかげというのもありますが、非常によくできた話で、スコセッシの中では最もクセがなくストレートに面白い作品だと思います。
 スコセッシの得意とするマフィアの話でもあり、本領発揮という感じです。あまり期待しないで観たのですがかなり面白かったです。スコセッシにはあと二回くらいアカデミー賞とってほしい。

35位 『風と共に去りぬ』(第12回・1939年)

13ノミネート・8受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、主演女優賞(ヴィヴィアン・リー)、助演女優賞(ハティ・マクダニエル)、脚色賞、撮影賞(カラー)、美術賞、編集賞
ノミネート : 主演男優賞(クラーク・ゲーブル)、助演女優賞(オリヴィア・デ・ハヴィランド)、作曲賞、録音賞、特殊効果賞

他のノミネート作品
『愛の勝利』(3ノミネート・0受賞)
『チップス先生さようなら』(7ノミネート・1受賞)
『邂逅』(6ノミネート・0受賞)
『スミス都へ行く』(11ノミネート・1受賞)
『ニノチカ』(4ノミネート・0受賞)
『廿日鼠と人間』(4ノミネート・0受賞)
『駅馬車』(7ノミネート・2受賞)
『オズの魔法使』(6ノミネート・2受賞)
『嵐が丘』(8ノミネート・1受賞)

 もうこれはアメリカ映画と言えば!というくらいの作品ですよね。作品賞初のカラー作品でもあります。それと同時にKKKを正義として描くことから『國民の創生』とともにキャンセルカルチャーの対象とされています。
 とはいえこのスケール感とヴィヴィアン・リーの美貌には抗えません。不朽の名作というのは納得の名作です。またハティ・マクダニエルは黒人として初めてオスカーを受賞しました。(ただしこのときは黒人差別が根強く、白人のテーブルには座らせてもらえず端っこに座らされました)
 ヴィヴィアン・リー演じるスカーレット・オハラはこれほど共感できないヒロインも珍しいというくらい自分勝手。黒人をひっぱたくシーンが差別的と言われていますが、実は彼女は白人黒人と関係なく引っ叩く人です笑そしてハティ・マクダニエル演じる乳母は常に正しい。この映画で唯一正しいのがこのマミーです。
 もちろん今観るのには注釈がいりますが、やはり名作と言って差し支えないと思います。

34位 『ブロードウェイ・メロディー』(第2回・1929年)

3ノミネート・1受賞
受賞
: 作品賞
ノミネート : 監督賞、主演女優賞(ベッシー・ラヴ)

他のノミネート作品
『アリバイ』(3ノミネート・0受賞)
『懐しのアリゾナ』(5ノミネート・1受賞)
『ハリウッド・レヴィユー』(1ノミネート・0受賞)
『The Patriot』(5ノミネート・1受賞)

 初のトーキー映画の作品賞です。これは全く期待しないで観たのですが、思った以上に素晴らしかったです。特に結末!
 ブロードウェイで生きる姉妹の話で、一応その姉妹が男を取り合うという話なんですが、結末でエンタメに生きるか恋愛に生きるかという話になってすごくよかったです。
 女性の権利なんかは今よりずっと軽視されていた時代、恋愛ではなくエンタメ業界に身を置くことを決意する自立した女性を描いたという点で特筆すべきものがあります。

33位 『プラトーン』(第59回・1986年)

8ノミネート・4受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、編集賞、録音賞
ノミネート : 助演男優賞(トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー)、脚色賞、撮影賞

他のノミネート作品
『眺めのいい部屋』(8ノミネート・3受賞)
『ハンナとその姉妹』(7ノミネート・3受賞)
『愛は静けさの中に』(5ノミネート・1受賞)
『ミッション』(7ノミネート・1受賞)

 この回は『愛は静けさの中に』でマーリー・マトリンがろう者として初めてオスカーを受賞、『コーダ』でトロイ・コッツァーが受賞するまで唯一の受賞者でした。またこれは史上最年少(当時21歳)記録でもあります。
 さて本作は社会派監督オリヴァー・ストーンがベトナム戦争を陰惨に描いた作品です。この映画を特別なものにしているのはウィレム・デフォー!無冠の名優として今も現役ですが、このときのデフォーはセクシーすぎ!たまらん!
 戦争ものは基本苦手なんですが、デフォーがいるというだけで評価爆上がりです。
 またオリヴァー・ストーンの凄惨な描写も一線を画すものがありすごくよかったですね。

32位 『ノマドランド』(第93回・2021年)

6ノミネート・3受賞
受賞
: 作品賞、監督賞、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)
ノミネート : 脚色賞、編集賞、撮影賞

他のノミネート作品
『Mank/マンク』(8ノミネート・2受賞)
『ファーザー』(6ノミネート・2受賞)
『ミナリ』(6ノミネート・1受賞)
『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(6ノミネート・2受賞)
『シカゴ7裁判』(6ノミネート・0受賞)
『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』(6ノミネート・2受賞)
『プロミシング・ヤング・ウーマン』(5ノミネート・1受賞)

 コロナウイルスが直撃、ノミネート作品もかなり地味です。その中で本作は前哨戦を独走、あまりにも本命すぎるため授賞式では作品賞が最後ではなく主演男優賞が最後という異例な形になりました。(結果的には大失敗でしたが笑)
 個人的にはこの中でベストは『プロミシング・ヤング・ウーマン』なのですが、本作に不満はないです。というか素晴らしい作品だと思います。
 実際の放浪者を使ったリアリティあふれる作品の中にフランシス・マクドーマンドが自然にいる。これはすごいことです。クロエ・ジャオという才能はとんでもないなと思わせられました。
 次に手がけた『エターナルズ』は賛否あるようですが、僕はクロエ・ジャオ作品としか言いようがない哲学が溢れた作品ですごく好きです。確かにバランスはあからさまに悪いですが。

31位 『夜の大捜査線』(第40回・1967年)

7ノミネート・5受賞
受賞
: 作品賞、主演男優賞(ロッド・スタイガー)、脚色賞、編集賞、録音賞
ノミネート : 監督賞、音響編集賞

他のノミネート作品
『俺たちに明日はない』(10ノミネート・2受賞)
『ドリトル先生不思議な旅』(9ノミネート・2受賞)
『卒業』(7ノミネート・1受賞)
『招かれざる客』(10ノミネート・2受賞)

 これは今知ったのですが、この回は本来の授賞式のスケジュールが二日延期されたそうです。その理由はキング牧師の暗殺事件。なるほどこの作品は黒人差別を扱った内容でもあり、作品賞に相応しいですね。
 この年はニューシネマとして旋風を巻き起こしていた『俺たちに明日はない』があり、マイク・ニコルズの『卒業』やリチャード・ブルックスの『冷血』もその系譜ですよね。また日本からは岩下志麻主演版『智恵子抄』が外国語映画賞にノミネートされています。
 さて本作ですが、シドニー・ポワチエ演じる南部に来た黒人の刑事が自身の危機にも見舞われながらロッド・スタイガー演じる白人警官と事件を解決していくというミステリーです。シドニー・ポワチエがノミネートされていないのが本当に謎なんですよね…
 ミステリーとして非常に面白く、シドニー・ポワチエとロッド・スタイガーのアンサンブルも素晴らしいですね。ドライで客観的な描写がとても好ましく、黒人差別を扱いながらもすごく誠実な作品のように思いました。


ということで今回はここまで!
いよいよ大詰め!ベスト30は次回から!

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