第36回東京国際映画祭 個人的星取&短評 ※随時更新


コンペティション部門

『ロクサナ』★★★

コンペのイラン映画
思ったよりいい映画!と思ったけど、終盤の急展開からのラストは流石に放り投げすぎ
とはいえユーモアがあって演出も堅実、悪い映画だとは思わないが…

『わたくしどもは。』★

コンペの日本映画
これはひどい
つまらなすぎて途中離脱
名優たちの無駄遣いもいいとこ

『雪豹』★★★☆

安定のペマ・ツェテンクオリティーで僕は好き。ジンパの演技がちょっとオーバーなのが気にはなったけど。
星空に雪豹の絵面が強すぎた。惚れ惚れするほどの映像美。

『西湖畔に生きる』★★★★

『春江水暖』で電撃デビューを果たした新星グー・シャオガン監督新作。
話も語り口も前作と全く違ってびっくり。もっとスローな人間ドラマかと思っていたら、マルチ商法にハマった母親を息子が助け出す話だった。
素直になかなか面白かった。グー・シャオガン、こんな演出もできるんだと幅の広さを証明してみせた。

『鳥たちへの説教』★☆

『死ぬ間際』ヒラル・バイダロフ監督新作。眠くなるだろうなと思っていたらやっぱり寝てしまった。
愛しあう男女、「猟師」と呼ばれる男の三人が出てくる、戦争により引き裂かれる男女、ということしか分からなかった。
『死ぬ間際』はこんなに難解じゃなかったのにどうしたバイダロフ。いや、『クレーン・ランタン』も大概だったか…

『ロングショット』★★★

なんか惜しい。終盤銃撃戦が始まるんだけど、この人がここにいたらおかしくない?とか辻褄が合わないと感じる部分が多々。
元射撃選手を丁寧に描いているし、銃撃戦自体の演出は悪くなかった。面白いは面白いが少し長すぎかな。中だるみは感じた。

『ペルシアン・バージョン』★★☆

ミュージカル風演出も思いのほか自然でよかったし、テンポもいい。
ただ、中盤がやや中だるみ。過去篇をもう少し短くして、現在の方をもっと描いてくれ。
また、倫理的に納得できないご都合主義も目立つ。母と子の和解も結局「母性」で解決してしまうし、父親(母も子も)問題は何も解決していないで終わってしまう。レズビアンなのにたまたまやっちゃった男をなんとなく受け入れて終わるのってなんかモヤモヤする。
間違いなくいい映画ではあるんだが、消化不良な部分が露呈してしまっているのが残念。

『真昼の女』★★★

最初はテンポも悪いしダメかもと思っていたが、ラストに向けて加速度的に面白くなっていった。
「真昼の女に出会ったら全て話さないと心が闇になる」という都市伝説めいた設定に惹かれるし、オチのつけ方もよかった。
主演女優さんの顔がイザベル・ユペールに似てるなーとずっと思っていた。この写真だとそうでもないけど。
でもやっぱりこの内容で137分は長いよ。最初のテンポが悪いのが長いと感じた原因だろうか。

『ゴンドラ』★★★

安定のファイト・ヘルマーだなぁという感じ。映画というよりコント集みたい。ウェス・アンダーソンといいスタイルの踏襲だけになってしまっている映画はあまり好みではないのでこのくらい。
ただ、今までとは異なり、男性に対抗する女性たち、そして女性同士の愛を描いているのが監督としては挑戦なのかな。いい塩梅でそのへんは描いていてよかった。
個人的にはそこまで好きではないけど安定して面白い。コンペの水準作といっていいのでは。

『エア』★★★☆

本作がワールドプレミアなのに驚くが、まあこのご時世だしね。クオリティとしては普通に映画祭レベルだと思った。
女だからとバカにされながらも一級のパイロットに育っていく戦士を描いている。
反戦映画としての姿勢は保ちつつ、丁寧に描いていく演出は流石だ。
飛行機シーンもそれなりに迫力があったし、全体的な戦争描写もよかった。
確かに長いが、かと言って不必要な要素があるかというとそんなことはないと思う。静かなトーンで紡がれ、一人の女性の半生を丁寧に描いた力作。

ワールド・フォーカス部門

『ディープ・ブレス 女性映画監督たち』★★☆

まあ普通のドキュメンタリーだなあという感じ。女性監督たちが手掛けた知らない作品で気になるものがいくつかあったのは収穫。
映画の断片、インタビューで構成され、時々ダイバーの映像が入る。海の映像は美しかった。このテーマならもう少し工夫しても良かったのではと思うが、これはこれで。 

『20000種のハチ』★★★☆

主題であるジェンダーへの描き方はもちろん、芸術や信仰についても深く描いた良作。
「性別は関係ない」と言いつつも、いざ自分の子供となると向き合えない母の葛藤もじっくりと描いていた。
おばさんがすごくいい。アイトールと向き合い、彼女を肯定してあげる。
ただ、少し長すぎる。演出が冗長な印象。じっくり描くのはいいが中盤は間延びしている気がする。

『湖の紛れもなき真実』★★★★☆

正直前作『波が去るとき』はあんまりだったので期待していなかったが、本作はなかなかよかった。
ディアスは物語よりも引きのある長回しでみせる映画作家だと思っているので、変に話をつくりすぎた前作より、投げっぱなしで全然進まない本作の方がいい。映像力が戻ってきたと感じた。
物語としては警察の腐敗、反抗できない不自由さというのはある。しかし、本作はそれ以上に過去を忘れられない人々への鎮魂歌であると思った。主人公もそうだし、火山灰に埋まった家を掘り続ける人、父の死後にそこに住み着く人など。
映像でそれを示した流石の力量であった。ラヴ・ディアスの映画はこうでなくっちゃ。

ユース部門

『パワー・アレイ』★★★★

とてもよかった!鮮烈なクィア映画であり、シスターフッド映画でもある。音楽の使い方が非常にいい。
中絶が違法とされるブラジル、奨学生として選ばれる寸前に妊娠してしまったバレー選手を描いている。
一応ハッピーエンド、なのかな。イランにしてもブラジルにしても宗教が絡むと本当に面倒くさいよね。
スポーツ映画、クィア映画、フェミニズム映画、サスペンス映画…色んな要素をまとめた監督がまず素晴らしい。長編デビュー作ならではの瑞々しさもあり、あらゆる意味でバランスの取れた作品

ガラ・セレクション部門

『哀れなるものたち』★★★★★

素晴らしい!そもそもクセの強い原作だから、どう脚色するのか楽しみだったけどそうきたか。エマ・ストーンのための映画と言っていいくらい彼女が躍動している。
魚眼レンズを使った美しい撮影、現実とおとぎ話の間のような美術と衣装が本当にすごい。現実のカリカチュアが上手いのかな。
思いもよらぬところへ連れて行ってくれる物語自体も素晴らしい。胎児の脳を移植されたため、まず言葉を覚えるところから始まるが、どんどん成長していく過程が面白い。自分の性も生も自分自身で決める。そんな力強いメッセージがランティモス独特の映画話法で伝わってくる。

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