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at 道東 with ドット道東 ③ピエさんのいる知床

道東のアンオフィシャルガイドブック、ドット道東を持って旅に出た。

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②はこちら↓

7月22日 知床酒場ピリカデリックへ

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ドット道東で大きく4ページにわたって記事の載っているピエさんの経営する知床酒場ピリカデリック。「※ピエさんは一人しかいません」とおかしなことの書かれているピエさんとは何者なのか。どうしても気になり、夕陽のあたる家にチェックインするなり、ピリカデリックへ。

道すがら、あんな色んなことをできる人が本当に料理までできたら何もかなわないじゃないかと、冗談半分に話していたが、料理人・ピエさんの出す料理は美味かった。北海道の食材を使った魚介類の料理は、どれも酒にあう。美味い。特にブリやサーモンのスモーク。

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テーブルは家具職人・ピエさんの手作りだという。かなり大きな板でとても立派で店の雰囲気をばっちり決めている。

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バーテンダー・ピエさんの出すカクテルも素晴らしい。オリジナルを、と頼んだら涼しげなカクテルを出してくれた。

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「明日はどこ行くの?」「ウトロ2泊なんで、ここらでプラプラしようかなあと」「ええ!?なんも決めてないの?自然ツアーとかも?」「んーどこか行けばなんかあるかなと思って」

「予約の要らないところでツアー組んであげるよ。まずはフレペの滝だろ、いやその前にプユニ岬、まあここは飛ばしてもいいけど。それから自然センターで20分の映画を2本見る。昼飯はどこでもいいや。で、ホテル地の涯に行って、三段の湯と滝見の湯を見学してから、木下小屋で風呂に入る。ここは300円で入れるからね。そこから知床五湖の高架木道に行く。でも明後日俺のツアーに来るならこれは飛ばしていいや。それでカムイワッカ湯の滝だな。これ行ってからウトロに戻ってきて、オロンコ岩とゴジラ岩を見て、夕陽を見て、ホテルに車を置いてからピリカに来ると、ちょうど開店時間だから。時間ちょうどでびっくりすると思うよ」

知床ツアー作成者・ピエさんはあっという間に明日の予定をばちっと決めてくれた。

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そして「明後日は俺、小ループっていう当日予約のみのツアーやるから来なよ。これなら事前に予約しとく必要ないから。」と自然ツアーガイド・ピエさん

あれ、ピエさんは2人どころではないのでは?

その後も飲んでいると、ピリカデリックのステッカーをくれた!あとでInstagramを見てみると、「ピリカデリックに来て、 何かしらの条件をクリアすると もれなくプレゼントっ‼️」とのこと。条件はなんだったのかしら?

ピエさんからもらった明日の予定のメモと、ステッカーを大事にバッグにしまって、店をあとにしてホテルへの坂道を登っていった。

7月23日 ピエさん作成のツアーへ

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プユニ岬は昨日一応見たので飛ばし、フレペの滝へ。自然センターに車を停め、散策。このフレペの滝への散策路も数日に1回はヒグマが出て閉鎖されるらしい。手をたたいて音を立てながら歩いていく。海が見えてくると崖が表れて、乙女の涙という別名もあるフレペの滝が見える。いやしかしこんなに泣いてたらもう乙女ってレベルじゃないぞ。

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フレペの滝 別名・乙女の涙

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帰り道、散策路のすぐ近くにエゾシカが6頭。草を食んでいる。こんなに近くに見れるとは。ヒグマじゃなくてよかった。

自然センターに戻ってから、『知床の冒険』『THE LIMIT』の20分ずつの2本の映画を見る。知床の自然の様子、一方でマナー・ルールを守らない観光客が自然を楽しみづらい状況を作り出してしまっていること、自然と観光の共生の限界が近いこと、シリアスで無駄のないタッチで描かれる。これは確かに知床を訪れる観光客は必見である。ただ楽しむというだけは許されない。いかに共生できるかを考えて節度を持った観光をしなければならない。

一旦ウトロの町に戻る。

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昼飯はどこでもいいと言われているので海鮮を食べたい我々は旅の駅、に向かい、海鮮を。美味い。やはり魚はいくらあってもいい。

そこからまた山の方へ向かい、地の涯ホテル方面へ。ここには三段の湯と滝見の湯という野湯がある。2台がすれ違うとちょうど、くらいの道を進んでいくと、途中から駐車場に収まりきらなくなったらしい車の路駐が。難儀しつつもホテルの駐車場にたどり着き、たまたま空きスペースを見つけて駐車。

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こちらは滝見の湯。三段の湯は、ちょうど他の人が入っているタイミングで撮ること入ること叶わず。滝見の湯は熱すぎて入る気になれない。そもそも気温も暑すぎる。本当に道東??一応木下小屋も覗いてみるけれど、明らかに登山者用という感じで、暑さにやられている我々はそそくさと戻って車の冷房にあたり始めてしまった。

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引き返す途中、川遊びするしかないと思わせる川(イワウベツ川)があったので吸い込まれた。穏やかで浅く、河原もしっかりある。水は冷たく、暑さにやられた我々が求めていたのは温泉ではなく、こちらだった。

すっかり童心に返り。石積みをし始め、泥積みもし始めてしまった。久しぶりに爪と指の間に土が入り込むこの感覚。10年ぶりくらいだろうか。

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自分作の石積み。屋根のような三角の石を最上部に載せ、大変趣のある仕上がりとなっている。

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彼女作の石積み。圧倒的な高さ。しかし、曰く「なんか卑猥な形になっちゃった」

久しぶりの川遊びに満足。本来の川遊びの主たる小さな子供たちがきたので、大人は退散。

道道93号まで引き返して、一路カムイワッカ湯の滝を目指す。途中誤って、五湖の駐車場待ちの大渋滞に入り込みながらも、無事砂利道へ。

砂利道?

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そう、カムイワッカ湯の滝への道は途中から砂利道。道道ですよね???こちらの動画もご覧あれ。どれほどガタガタな道か、お分かりいただけるだろう。

意外と砂利道の距離があることに驚きながらも、カムイワッカ湯の滝と思しきあたりまで着いた。途中に路駐している車が多く、どこまで進めばいいのかわからないが、とりあえず前の車に着いて行くと、案内の人が駐車場へ誘導してくれるとのこと。しばらく待つと、空きが出来て停められた。

車から降りるとあら不思議。あらゆるところが砂で汚れている。道東に来てから時折、信じられないほどに砂で汚れた車を見かけていたけれど、納得。

因みに、手前に停めていた車は、硫黄山などへの登山客で、駐車場はカムイワッカ湯の滝に来た人用であるとのことだった。

ここでも何も準備をしてきていない自分は、普通の服に裸足で滝登りに挑むことに。他の人はちゃんと、川用のシューズや、水着を着てきている...。

湯の滝という名が示す通り、ぬるま湯くらいの水が流れることに驚きながら、緩やかな川を登っていく。すると比較的高い滝が。これが1の滝で、その後5の滝まであるらしい。

裸足で行くか迷いながら過ごすうち、からだのうちからふつふつと根拠のない自信が生まれ、ちょっと登るか、と。と書くと凄そうだが、よく見たら1割弱くらいは裸足で全然登っている。

上に登ると、まあさらに少し水が温かくなったのかな。特にすごい!ということはないけれど、やはり人間「ここから先立ち入り禁止」と書かれていると、そこまで行かなければ気が済まなくなり、行ってしまう。

上りは良い良い下りは怖い。滑る斜面をちびちびと下る。と横ではもうお尻をつきそうになっている彼女の姿が。なぜ逆四足歩行?手をあげることも叶わなくなっており、助けようがなかった...。そのまま尻餅をついた彼女はジーンズの後ろ半分が浸水した。

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行きによらなかった、プユニ岬。夕陽を眺めるのもまた良い。オロンコ岩とゴジラ岩はちょっとめんどくさくなって省略。宿へ。

宿に戻ると19時前後。本当にピエさんの言う通りの時間になった。ちょっと悔しいのと、これまでで飲もうと思って買ったものの、飲むことなく輸送していたお酒があるのとで、宿で1次会。

そして未だ持ち歩いているらいでんスイカ(②参照)を如何にせんやと思い、ピリカに電話。「昨日行って観光ルート組んでもらった2人なんですけど20:30で予約大丈夫でしょうか。」「大丈夫だよ〜」「それと、ご迷惑かもしれないんですが、どうしても買いたくて買っちゃったスイカが1玉あるのを切ってもらったりできますか?...」「すいか?いいよ!」わお。

すいか専用バッグに収めたらいでんスイカを持ってピリカへ。

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ピエさん「らいでんスイカじゃない!らいでんは岩内町の方だね」カネヤンさん(ピリカの店員さん)「よくこれ2人で1玉買おうと思ったね笑」

手際良くザクザクと切っていって、お店にいたお客さんに振舞っていってくださる。そして我々にも。一口食べるなり甘い!これはすごいなと我らがことながら感心してしまう。

地元の方々は、スイカなんて何年ぶりと。意外とそんなに食べないものらしい。

作ってくださったルートで周ったら最高に楽しめて時間もぴったりで悔しかったからホテルで飲んできたこと、映画が良かったこと、温泉に入るには暑すぎて河原で遊んできたこと、車が汚れる理由がわかったことなどなどを報告。

カネヤンさん「知床来る人って、船予約できないと、何もできないってもうがっくりしちゃう人が多いんだけど、2人ならなんでも楽しめそうね!全然調べないで来ても、河原で遊ぶとか、スイカ買っちゃうとか、面白すぎる笑 2人ならどこでも楽しめそうね!」

確かに我々は旅行に特別すぎる非日常は求めていないかもしれない。むしろその地の日常を求めている。住んでいないところの日常は、それはもう非日常だから。

ピエさんとカネヤンさんが店の配置を真剣に話し合っている。こんな日常会話も特別。

先程までスイカを切り、店の配置を考えていたピエさんは、カクテルの注文を受けるなり、バーテンダー・ピエさんに早変わり。

お客さんが「シェイカー振る動画、撮っときなよ!」と。

「なに〜動画ぁ?実はちゃんとバーテンダーってとこ撮ろうとしてんだ?」そう言いながらピエさんがシェイカーを振り始める。シャカシャカと心地よい音。

シェイクが終わった途端、何を思ったか撮影を止める僕。「最後の注ぐとこまで撮らないとダメでしょ!そこまでが大事なんだから!」ピエさん含め他のお客さんからもダメ出し。すぐに撮影を再開して「危ねえ、途中で動画止めるとこでしたわ」とナレーションを加え、さも途切れていない感を演出した。

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ピリカの夜はまだまだこれから。ここからもお客さんが来る。環境事務所や財団に所属して知床の自然環境に関わる仕事をされている3人組が隣に。

最初こそたわいもない会話をしていたけれど、徐々に知床の環境事情、観光事情、観光客のマナー、一方で観光客に対応しきれていない知床側の課題の話に移っていく。

真摯に自分事として受け止め、自分たちでどうにかしないといけないと考えておられた。そこには地域社会の課題も関わるし、将来も関わってくる。自然センターで見た『THE LIMIT』にも重なる危機感。

若い人々がしっかりと危機感と使命感を持って考えているところの未来はとても明るいように思われる。

都市計画を学んだ人間として、一緒に考え、良い策をとる手伝いをできないかと思うけれども、それにはあまりにもまだ知床を、ウトロを知らなさすぎる。どこかでやっている例をあげるのが精一杯だ。もう一度会う縁があれば、話をしたい。

面白い場所で、いい人々に巡り会えた。知床の人の面白さを思いながら、宿へ戻った。

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