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ソフトバンクのゼロ配当と配当性向の国際比較

ソフトバンクグループが2020年3月期の決算を発表しました。1月~3月期に日本企業としては過去最大となる1兆4,381億円の赤字を計上し、決算説明会では「ゼロ配当」の可能性にも言及しました。

孫社長は「保有株式に対して純有利子負債が占める割合は14%。コロナ危機の中でより安全運転をする」と説明した。その上で「配当もより安全運転をする。配当は固定的におこなうのではなく未定、ゼロ配当もあり得る。従来は事前に配当方針を公表しているが、経営の選択肢としてその幅を持っておこうと思う。上場以来初めてだと思う」と続けた。

今回は、日本、アメリカ、ヨーロッパの配当性向を比較します。

横並び意識の強い日本企業

配当性向の国際比較

上記は、2017年度の配当性向を国際比較したグラフです。

日本企業の特徴として、配当性向が30%前後に集中している点が挙げられます。全体の6割が20%~30%台という狭い範囲に収まっています。日本企業は横並び意識が強い、との指摘もあります。

配当性向は投資がかさむ成長企業では低く、成熟企業では高くなるはずだが、日本では横にらみで決める企業が多い。配当性向25%の東急不動産ホールディングスは「同業他社や上場企業の平均を参考にしている」(兼松将興執行役員)という。

企業のステージと配当性向

一方で、欧米企業は配当性向が広く分布しています。特にアメリカでは配当ゼロ企業が極めて多く、メリハリの利いた配当政策を採っていることが良く分かります。

そもそも、株主にとっての投資リターンは「株価上昇+配当」です。したがって、株価上昇のポテンシャルが高い成長企業に対しては、投資家はあまり配当を要求しません。

つまり「配当はゼロでいいから、どんどん事業に投資して儲けて株価を高くしてね」というスタンスです。日本の無配企業としてはメルカリが代表的です。同社のIRページには以下の記載があります。

現在、当社グループは成長過程にあるため、事業の拡大と効率化にともなう中長期的な企業価値の向上が株主のみなさまに対する最大の利益還元につながると考えており、創業以来、配当は実施せず内部留保の充実をおこなってまいりました。今後も、当面の間は内部留保の充実を図る方針ですが、将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主のみなさまへの利益還元を検討してまいります。

一方、成熟企業になると事業投資の機会が限られてきます。そうした企業に対しては、投資家は増配や自社株買いといった株主還元を求めます。

株主からすると「投資のチャンスがないなら、キャッシュを企業の中に貯め込むのではなく、株主に返してね」ということになります。

配当としてキャッシュを受け取った株主は、再投資先を探します。そうして経済全体にお金が循環していくわけです。

横並び意識が強く配当性向が3割前後に集中する日本企業に対し、批判的な声が上がるのにはこうした理由がありました。

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