見出し画像

年間1億円?株式上場の維持コストはどのぐらい必要なのかを整理してみた

2022年の4月に東証の市場区分変更(市場再編)が予定されています。新設されるプライム市場には現在より高い水準のガバナンスが求められる予定で、上場維持コストは高まることが予想されます。

けれど、そもそも上場維持コストとは何なのでしょうか。また、実際にはどのくらいのコストが発生しているのか、なかなか実態が掴めない印象があるのではないでしょうか。

今回は、そのあたりを3つのポイントに整理してお伝えします。

1.上場維持コストは年間1億円以上

株式市場への上場を維持するには、年間どのぐらい必要なのでしょうか。上場企業には四半期毎の決算開示義務や、経営上重要な情報をタイムリーかつ適切に情報開示する義務など、さまざまな制約が存在します。

これらに必要なコストは、年間約1億3,000万円と言われています。この金額は、産業能率大学の倉田洋教授が計算したものです。倉田氏はもともとIT企業の出身で、その時の経験をもとに上場維持コストを試算しています。

ちなみに、この数値は東証マザーズ上場を想定したものです。

2.上場維持コストの中身はどうなっているのか?

産業能率大学の倉田洋教授の試算によれば、マザーズへの上場を維持するには、年間1億3,000万円が必要とされています。全体の金額は分かりましたが、その内訳はどうなっているのでしょうか。

倉田教授の試算の内訳は下記の通りです。最もコストがかかるのは内部統制の関連費用です。これに年間5,000万円程度が必要になってきます。他には監査法人への監査費用が3,000万円、IR関連費用が2,000万円で続きます。

ここで分かるのは、企業が適切に運営されているかをチェックすることに最もコストがかかってくるということです。上場企業には、投資家保護の観点から様々な制約が発生することが良く分かります。

画像1

3.東証の市場再編の影響は?

2022年4月に、東証は市場再編を予定しています。現在の東証1部や2部、マザーズといった市場から、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3市場に再編される予定です。

市場再編にともなって、コーポレートガバナンスコードの改訂が予定されています。特に最上位市場にあたるプライム市場に上場する企業には、現在より高いレベルのガバナンスが求められることになります。

その結果、企業の上場維持コストは高まることが必死です。マザーズの上場維持コスト1億3,000万円を上回るレベルのコストが必要になってくるものと考えられます。

その結果、いくつかの企業では上場維持コストと、上場によって得られるリターンのバランスが取れなくなってくる可能性があります。そうした企業にとっては、上場廃止も一つのオプションになるのかもしれません。

実際に、2000年代初頭に上場企業に対する規制が強化されたアメリカでは、上場企業の数がピーク時の半分に減っています。ベンチャーキャピタルをはじめ資金調達の手段が多様化した現在では、必ずしも上場しなくても良いと判断する企業が出てきているわけです。この動きは日本でも広がっていく可能性があるのではないでしょうか。

今回は以上です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?