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函館の内側性

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函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_1

函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_1

地元、函館について。
僕の長年の疑問だった、函館の人たちの謎の地元愛の強さ。
エドワード・レルフの『場所の現象学』にある"内側性"というキーワードを通してみると、その所以が見えてきました。
気が付いたら、長い文章になってしまったので、何回かに分けて投稿します。論文のような少し固い感じにはなってしまいましたが、読んでいただけるとうれしいです。



1.函館の内側か、あるいは外側かこの文章は、"地

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函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_2

函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_2

3.内側と外側のあいだ"函館に対する想いの強さ"
これは、"函館の内側と外側との区別の強さ"と言い換えることができるだろう。であれば、その内側と外側は何によってつくられるのか。あるいは、そのあいだには何があるのか。
そのように考えるならば、そこのあるのは言うまでもなく、境界である。

柏木博は彼の著書、『しきりの文化論』のなかで、壁や塀などの物理的な境界とともに、自己と他者、うちとそと、聖と俗、日

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函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_3

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4-ⅱ. 行動的内側性これは自然条件による物理的あるいは視覚的内側性とも密接に関係する。分かりやすくいうならば、函館の人たちの行動範囲の狭さについてといった方が良いかもしれない。

基本的に、函館からはどこにも行けない。
函館から一番近い10万人規模の街を上げるなら、それは札幌になる。そしてその距離は250キロほどあり、車で休みなく行っても5時間程かかる。
今、僕の住んでいる千葉県からであれば、東

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函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_4

函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_4

6.戻りたいと同時に、逃れたい場所"そんなに函館が好きなら、ではなぜあなたは函館に暮らさないのか"
そんな問いをこれまでに何度か投げかけられたことがある。
その度にどう答えたらいいのか、これまでよくわからなかった。

僕がいま函館を離れ、千葉に暮らしているのは、本当は函館が好きで戻りたい気持ちがあるけれど、仕事や諸々のやむを得ない理由があるからだろうか。
少し考えてみるけれど、多分そんなことではな

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