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なでしこJAPANの対スウェーデン戦を見ていて改めて提案したいと思った国際スポーツのルール変更


1.《フィジカル》が弱い?

女子サッカーワールドカップ、日本はベスト8まで進み、スウェーデンに敗れました。
日本チームの健闘、特に最後まであきらめることなく全力を尽くす姿は素晴らしかった。

観ていて印象的だったのは、スウェーデン選手とボールを奪い合う場面で必然的に『体当たり』的状況となり、身長・体重ともに勝る相手に日本選手が『当たり負け』するシーンの多さだった。足を引っかけたり手を使って突き飛ばせばファウルだが、バスケットボールなどとは異なり、体が当たるのはそうならない。

ニュース記事でも、『フィジカルの差』という表現で指摘されていた。『フィジカル』は『身体的』のような意味ですが、ここでは、まさに『当たり負け』を指摘しているようです。

男子サッカーでもかつて、芸術的なコーナーキックで知られる天才レフティー中村俊輔が、「フィジカルが弱い」とトルシェ監督に酷評され、日本代表に選ばれなかった。
まあ、それが現状ルールでは『現実』なのであろうけれど、国際試合であの美しい弧を描くロングシュートを見られないことに、腑に落ちないものを感じていた。

2.スポーツの国際ルールは《合理性》から変更される

「日本人は体格的に劣るから仕方ない……」
という声も聞く。
── でも、本当に仕方ないのだろうか?
── 現状ルールに問題点はないのだろうか?
我々の周りには、国際ルールに関する、この《仕方ない》があふれていないでしょうか?

国際スポーツのルールは、主に《欧州主導で変更》される。その理由を見ると、
・公平性
・選手の健康面/安全性
だけでなく、
・エンタメ性/客ウケ性
もあるようだ。
総合的に言えば、
・合理性
ということになる。

そして時に、上記のような理由を挙げて改正されたルールが、大活躍中の日本人アスリートにとって不利な方向に作用することがある。

よく知られているのは、

1988年ソウル五輪で鈴木大地がバサロ泳法で金メダルを獲得した直後、ルール改正により「潜水距離は10 mまで」に制限された(現在は15 m)。

スキーのジャンプ競技では、日本選手が活躍した長野オリンピックの後、1998-99年シーズンからスキー板の長さを制限する方式が変更された。それまでは「身長プラス80センチ以下」だけだったが、「身長の最大146%(最長で270センチ)まで」に変わった。

いずれの改正にもそれなりの合理性があり、国籍とか人種の問題を深読みするよりは、この《合理性》の観点からのみ議論し、判断するのがいいと思う。

3.日本の伝統スポーツは《合理性》より《精神性》重視?

この《合理性》を無視する方向なのが、むしろ日本の伝統スポーツかもしれません。

もっともいい例が格闘技です。
ボクシング、レスリングなどは体重別に戦う。理由は言うまでもなく、公平性と安全性の観点からでしょう。
しかしながら柔道は、嘉納治五郎の思想「柔よく剛を制す」もあり、体重別階級制度が世界的に議論され、採用されたのは、柔道が正式競技として初採用された1964年の東京オリンピックでした。
この時も、
「武道に体重別はそぐわない」
という反対論がかなりあったようです。
その後も、柔道思想から《無差別級》が存在していましたが、結局このクラスの優勝者が最重量級の優勝者と重複するため、1988年のソウルオリンピックから廃止されました。
《合理的判断》ですよね。

国技(ホント?)・相撲も体重別ではありません。
200キロ近い力士と100キロそこそこの力士との対戦は、見ている側にはスリリングであり、《小》が《大》をうっちゃったりするのは爽快でもあります。
しかし、はっきり言って《危険》以外の何者でもありません。

4.チーム・スポーツも個人格闘技と同じように考えた方がいいんじゃない?

以前から私が感じていたのは:

ボクシングやレスリング、柔道などの国際試合を体重別にするのならば、身長差がはっきり有利不利に顕れるバスケットボールやバレーボールは、《公平性》の観点から、

── 身長別にすべきじゃないの?

ということでした。

もちろん、個人格闘技と違ってチームスポーツなので、身長別にいくつもチームを作るなんて非現実的です。
総量規制的なルール(チームの平均身長で規制するか、総身長合計とするか、規制せずに「ハンデ」制とするか、等)となるでしょう。

身長173 cmでNBAプレーヤーとなった田臥勇太サンのような選手は各チームから引っ張りだこになるはずです。

5.《フィジカルの差》って結局、《体重差》

そして今回、ではサッカーはどうだろう、と考えました。
もちろん、GKや、ゴール前のヘディング合戦では、高身長が有利です。
でも、あれだけ激しい『肉弾戦』を見ると、サッカーはやはり、体重の総量規制とするのが《合理的》であるように思うのです。ゴール前でのCKボール争奪戦も、本質はやはり『肉弾戦』です。たとえばひょろりとした長身軽量選手はヘディング前に弾き飛ばされかねない。

── 『フィジカルの差』って結局、『体重差』じゃないの?

女子選手の体重データは手元にありませんが、日本とスウェーデンのチーム平均身長は約164 cmと171 cm、差は4%強になります。体重はこの3乗に比例すると想定すれば13%強、7分の1近い差になります。
即ち、体重の総量規制がルール化されたら、スウェーデンは日本チームより間違いなく1名、ひょっとしたら2名少ない陣容で戦わなければならなくなるはずです。
(これは強調したいが、別に日本チームを勝たせたいわけじゃなく、ゲームをよりフェアに、との考えです)
いやいや、スウェーデンチームでも、軽量巧者のプレイヤーが台頭してくるかもしれません。その方が面白い!

── もう単純に『フィジカルが弱い』なんて言わせない。
体重を分母にして割り、《標準化したフィジカル》に換算した上で、『強い・弱い』と言ってくれ!

詳細は詰めていかなければいけないが、この『体重総量規制ルール』により、小柄であっても巧みなボールさばきを見せる選手が活躍する機会が増えるし、何より怪我が減る。

6.最後に重要なひとこと

さらには(こじ付けだとあなたは言うかもしれないが):

── 「体が大きな選手が小さな選手を弾き飛ばしても構わない」価値観は、「大国が小国を踏みにじっても構わない」価値観に通じる。
こんな価値観は、国際スポーツルールから変えていこうではありませんか!

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