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J3 第26節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs FC今治】来年に繋がるプレーは何か

2021.11.14 J3 第27節
鹿児島ユナイテッドFC vs FC今治

こんにちは。
今回もご覧いただき、ありがとうございます。

今節のお相手は今治。
今治タオルをふるさと納税で頼んだんですよね、先月。肌触りが良くて使い心地良いですね。アリです。

肝心のFC今治は、ここ3戦で富山・福島に勝利を挙げ、調子を上げてきていたところです。9月30日に橋川監督の就任が発表されて以降、3戦で体裁を整えてきました。戦略レベルでは行き当たりばったりですけどね、GMさん!

しかし、なるほど上位陣に勝利を挙げられるくらいにピッチ上の具体レベルでは改善されていました。

鹿児島にとっては昇格可能性が完全に消滅する息の根を止められた敗戦になりましたが、残り3戦、来年に向けて何をすべきか考えるためにも僕の見方を紹介します。

ご笑覧ください。

スターティングメンバー

まずはスタメン、鹿児島から行きましょう。
ウェズレイに代わって藤原がスタートで帰ってきました。後述もしますが、帰ってきた試合で良いプレーを見せられるのは藤原良いところだと思います。

また、SHは左米澤・右島津で来ました。米澤はスタメンでしたが、最近のプレー時間の少なさが気になります。この時期になると嫌な想像が広がりますが、杞憂で終わることを願います。

一方の今治。
前節からは26番高瀬→18番東家、16番梁→44番小松の2人が代わりました。19番島村は凄いですね、SBからIH、今節はWG。今シーズンだけでいくつのポジションやってるんでしょう。

ただいつものローテーション内でスタメンを組んできた今治です。いつも通りの今治ですが、挙動を次から見ていこうと思います。

前半

今治のプレッシング・守備ブロック

今治の守備セットから見ていきます。
まずはプレッシング。

プレッシングは鹿児島の4-1-2-3様のビルドアップに、中盤を噛み合わせる形の4-2-1-3の形で嵌め込んできました。これは予想の範疇です。

加えて、2人の鹿児島CBに対してはIHやWGが前進してプレスすることもありました。WGはかなりSBを気にしながら出てきており、外切りしながらCBの外側からプレスを掛けています。

また、IHはマークの対象である鹿児島DHが落ちながらビルドアップに参加した時、そのままCBへのプレスに参加する形が多かったと思います。WGにしろIHにしろ、自らのマークを背中で消しながらCBに圧を掛けるという考え方で実行していました。

しかし、ハイプレスというわけでもありません。あくまで自分のマーク・スペースをケアする思考が強く、撤退がメインになっていました。

また撤退後、守備ブロックでは4-5-1。4-1-2-3のチームの守備時ではお馴染みになってきた4-5-1ブロックなんですが、鹿児島もこの「5」を越えることが難しいゲームになりました。

今治2ndラインの5枚は5レーンをそのまま埋めるというより、圧縮して中央から3.5〜4レーン分を埋めるポジショニングを取ります。中盤が同数なのに加え、中盤のスペースを消されたことで、鹿児島はここ数節作り出せていた中盤3人の数的優位を活かして前進することが難しくなっていました。

裏を返せば、大外レーンは明け渡しを許容するという考え方でもあります。が、言っても今治WGはハーフスペースの外半分には立っているので、最終ラインから何の工夫も無く大外にパスが入っても追いつけるよ!という設計になっていました。

引きつけてリリース

じゃあ工夫しようぜ!という話です。
10:45〜を見てみましょう。

今治のクリアボールが藤原の元に入ったところです。今治2ndライン前でボールを持ちますが、2ndラインまで距離があるので前進。ライン間で待ち構える中原への楔を匂わせることで、24番近藤を中央に引きつけます。

そのことで、大外に待ち構えるフォゲッチへのパスコースが空きます。また、2ndライン5人の選手は1ライン化していたので、ライン間にポジショニングしていた中原を活用して一気に置き去ることができました。

今治の5枚のラインをどう突破するかに悩まされ続けた鹿児島でしたが、このように上手く前進出来たシーンもあったのも事実です。

「WG脇」・「4」を狙う

また、ここ「狙ってるんだろうなという思惑は伝わってきました。

まずはWG脇。
非保持で逆ボールサイドの今治WGは、中央付近まで圧縮してきていました。2ndライン突破の糸口として、特に砂森はこのWG脇を位置取る場面が多かったように思います。

ロブパスなどで圧縮を裏返し、WG脇の砂森にボールが渡ると、今治最終ラインを晒せた状態になり、砂森→米澤のラインが開通しやすくなります。前半に米澤が裏抜けを多発出来たのは、このように2ndライン脇を取ることで今治最終ラインを晒し、米澤の質を活かせたことが要員の1つでした。

また、2ndラインが厚いなら最終ラインの「4」を直接脅かしても良いな!ということで、低い位置からロングパスを通していた場面も多く見られました。

サイドチェンジで大外のSH→インナーラップのSBが受けたり、もしくはその逆で大外のSBが裏抜け・クロスを上げられる場面を作ろうとしていたと思います。

今治は2ndラインが厚い為、最終ラインを晒されると一気にピンチを作られるので、ライン間を埋める意識が強いです。その裏を突く・最終ラインを押し下げてライン間を広げる狙いは真っ当です。

実際、前半の飲水タイム後は嵌って、チャンスは作れていたと思います。特に右サイドへのサイドチェンジは効果的で、フォゲッチのインナー・オーバーラップが効きました。

ただ、そうして前進した後、ゴール前をどう崩すかについてはもう一つ工夫が足りず、クロスをそのまま放るだけなどになり、中を固める今治DFを攻略しきれませんでした。中原の試合後コメントに同意です。

(中原・試合後コメント)
--先制されてからは前半に得点できそうなチャンスはあった。
決定機がなかった。もう一工夫必要だとピッチの中では感じていた。もう少し遠くからでもミドルシュートやアーリークロスを入れるべきだったのではという印象を持っている。

今治・ビルドアップ

今治のボール保持に話を移しましょう。
基本は4-3-3の形のままビルドアップを試みる今治。WGやIHが落ちてきてビルドアップに絡んだり、WGがインナーに入ることはあれど、基本形は4-3-3だったと思います。鹿児島の守備としては、そのままの陣形で嵌め込める形ですので、各選手のやるべきことは明確でした。

そこで、20分過ぎ~は25番楠美やIHが最終ラインに落ちて、3-4-3様の形でビルドアップを試み始めます。このことで、鹿児島SHを最前線へのプレスに誘導し、SBやWBへのパスコースを開通したり、2トップ脇から運べるようになりました。

しかし前半は、25番楠美がボールに寄り過ぎな傾向もありました。本人は「立ち位置が下がっておかしくなっていた。」とコメントしていますが、鹿児島のプレス強度が上がったところで、押され気味になり、鹿児島のプレッシングが嵌めやすくなった時間帯でもあります。尤も、デュエルは五分五分で鹿児島が優位とは言い切れませんでしたが。

(25番楠美・試合後コメント)
--後半に修正したのはどんな部分か?
ビルドアップのときに立ち位置が下がっておかしくなっていた。良い立ち位置を取ってボールをしっかりつなぐことを言われた。そういう練習を普段からやっているのに、怖がって蹴ってしまったり、逃げてしまっては意味がない。ボールを取られてもいいので、そこをやっていこうと意識した。後半開始早々に点が取れたことで、相手も前がかりになってスペースができたので、自分たちのリズムに持っていけたのが良かった。

上記コメントの通り、修正出来たのは後半に入ってからだと思いますが、鹿児島がプレスに出たスペースを突くべく、1stプレスラインの後方で、プレッシングに選択肢を与えるようにポジショニングをしていました。

また、IHやWGが落ちる動きも顕著になりました。ビハインドの鹿児島は、所々でボール奪取すべく落ちる動きに付いて行きますが、その代わりに上がってきたSBが裏のスペースをすかさず取ってきます。

まさに、「前掛かりになってスペースが出来たので、自分たちのペースに持って行けた」展開になってしましました。

後半

位置的優位を取れない

前述のように、後半早々の失点もあり、前掛かりにならざるを得なかった鹿児島。その裏のスペースを突かれ続けます。3失点目など。

さらに51分。
今治は負傷交代で24番近藤に代わり、16番梁が投入しました。16番梁の投入で少し今治の守備の仕方が変わったと思います。ビルドアップにてフォゲッチにボールが入った時に、44番小松が背中で自身のマークを消しながら、フォゲッチまでプレスに出るようになりました。

これにより、前半の4-5-1でなく、2ndラインに段差が付いた陣形になりました。4-1-4-1に近いです。この陣形攻略として、44番小松がプレスに出た裏のスペースを突けたシーンが無かったわけではないのですが、素直に相手の陣形に合わせ、1on1が多発するボール保持が過ぎたかなと思います。

良い・悪いは別として、オープンな展開でスペースと時間に余裕があるなら、1on1の連続でも鹿児島の選手達は質で剥がせる可能性もありますが、今治はリトリート主体。オープンな展開を許してくれません。

結局最後まで、1on1の連続・狭いスペースでデュエルに勝てるわけでもなく、試合終了まで進んでしまいました。

あとがき

今節の敗戦により、昇格可能性が消滅。
残り3試合、来季に繋がる試合を!という言葉が各所で聞かれます。

確かにそれは真っ当ですが、来季に繋がる試合ってなんだろうと考えると、具体的な例を挙げるのは僕には難しいです。

来季の監督・選手人事も不明瞭、ご時世柄シビアな判断を決断しなければならないと考えると、何を目指せば良いか分かりません。これは残しておきたい!が見出せない段階でもあります。

現状の個人的な結論としては、「劇走」に立ち返るべきだと思います。

でもコンセプトを体現するって難しいですよね。ただ死ぬほどハードワークしても、空回りしたら「気持ちが見えない」という評価する人が必ずいるので。今節なんか良い例です。

とりあえず若手を使ってみて「育成」すれば良いんでしたっけ?デュエルに勝利を求める?確かにそうかもしれません。あるいは沼津戦や熊本戦のように、相手を見て、要所を抑えて、その要所で勝つ・負けない部分ですかね。

全てを引っくるめて「劇走」を表現できる残り3試合に出来るでしょうか。いや、そこだけは求めたいです。

何も掛かっていない試合でこそ、進歩を見せられるチームを期待したいですね。

残り3試合もよろしくお願いします。

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