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J3 第24節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs アスルクラロ沼津】勝利と原点回帰?

2021.10.23 J3 第24節
鹿児島ユナイテッドFC vs アスルクラロ沼津

こんにちは。
今回もご覧いただき、ありがとうございます。

今回のお相手は沼津。
福島・宮崎の衝撃から比べると、一段力は劣る相手だと思いますが、難敵ではあります。

にしても。
やっと勝てましたねぇっ!!!
リアルタイムでは見れませんでしたが、久しぶりにニヤニヤしながら見返しが出来ました。

今節は、メンバー人選・戦術を取っても、沼津攻略には理に適っていたと思います。

今日も一つ一つ振り返ってみようと思います。
ご笑覧ください。

スターティングメンバー

TACTICALista_2021H沼津戦スタメン

鹿児島のスタメンから行きます。

メンバー変更は、藤原→ウェズレイ・八反田→田辺・秋山→山谷・米澤→島津・萱沼→山本の5人変更。三宅がトップ下、右SHに山谷が入る布陣となりました。

沼津対策として素晴らしい配置だったと思いますが、会見では質問も言及もありませんでした。真意は明確ではありませんが、試合に合わせてというよりはコンディション面や競争原理を働かせたいなどの意図だったのではないかなとは思います。

詳しくは、後ほど言及します。

続いて沼津。
メンバー変更は22番徳武→28番井上・24番深井→15番菅井の2人。

しかし、やり方に大きく変わりはありません。
鹿児島もそのやり方を攻略するために良い振る舞いが出来ていたと思います。

前半

瓜生と鹿児島の守備

立ち上がりは自分たちのペースで推し進められました。
その理由は、沼津のボール保持に対する対策が大きかったと思います。

沼津は左SHの7番瓜生が中央に入り、フリーマンとして振る舞ることでビルドアップをサポート。それに準じて瓜生が空けることになるサイドのスペースは、SBの38番濱が前進することで、幅を確保します。

それくらい瓜生の組み立て能力は高いと思うのですが、鹿児島の守備はそれを踏まえてプレッシング出来ていました。

まず、瓜生・濱と対峙する山谷は、中に絞る瓜生にパスを通させないため、頻繁にCBまでも前進して中切りを優先します。このことで、上手く前進出来ない沼津は38番濱が落ちてきてビルドアップに参加。沼津の生命線である左サイドを押し込むことが出来ました。

島津と比べて山谷はCBにプレスすることも多かったと思いますが、それが狙いというよりはSBを押し込めていたことと山谷の機動力、沼津も右を中心に組み立てようとしていたことに起因していると思います。

また山谷が外回りされ、SB→中央のスペースにパスを通されても、DHがサイドに出てきたり、フォゲッチが勇気を持って前進したり、鹿児島の右サイドでは自由にさせないという強い気持ちが見えました。

走れ山谷!

また、38番濱の押し上げを抑えるために、山谷を多く活用していました。

試合開始直後からウェズレイ→山谷へのロングボールを活用するなどして、右サイドで押し込む・38番濱の裏を取るといった意識が強く見られていたと思います。

特に第1Qは山谷が前向きでボールを受け、仕掛けられるシーンも多くなりましたが、こういった沼津のやり方を逆手に取ったボール循環が出来ており、主導権を掴むことに成功しました。

ここについては、フリーロールの瓜生がボールホルダーをサポートしようとしすぎる結果、濱が孤立。鹿児島右サイドでのボール奪取・カウンターが容易になる場面も多かったです。12:20なんか好例ですね。

とにもかくにも、スカウティングを活かした意識が奏功した鹿児島右サイドでの攻防でした。

アンカーロール田辺

また、DHとトップ下が流動的に旋回し、入れ替わるのが板についてきた上野体制。今節もその傾向はありましたが、ビルドアップに話を限定すれば、アンカーの位置で効果的にプレー出来る田辺の起用し、アンカー役を固定しました。

特に序盤は、彼の影響でボール保持が円滑だった所以もあります。

TACTICALista_2021H沼津戦田辺1

守備セット時は4-4-2で構える沼津でしたが、まず田辺は2トップの間に立ち、二人に影響を与えます。それにより、CBは2トップ脇を前進することができ、沼津SHに対して選択肢を与えることが出来ました。

さらに。

TACTICALista_2021H沼津戦田辺2

それじゃダメだ!ということで2トップがCBまでプレスを強めると、上図の様に中盤で数的有利が生じます。特にビルドアップの出口になりやすい田辺を捕まえに行くため、沼津DHは縦関係になるので、サイドを裏返しやすい展開にもなっていました。

また、SBはインナーラップ中心でCB-SB間の位置取りを多用していました。このことで、最終ラインをピン留めしたり、そのままハーフスペース滑走したりします。

これまでの上野体制は臨機応変にSB・SHが内外を交換していましたが、今節は沼津SB裏を取りたい思惑も重なって、SHが大外タスクを担いましたね。なんとなくパパス2.0みを感じます。

4-3-3様の泣きどころ

4-3-3様ということは、守備時にアンカー脇を狙いどころにされる訳です。

27:15や37:00は、中原が前に出たところを裏返され、田辺脇を取られたところからピンチを迎えました。

この辺は上野監督のコメントにもありましたが、コンパクトネスが足りず、プレスに行ききれないことも原因になっていたと思います。

セットDFは相手の特徴を消せていましたが、ネガトラの部分では物足りないところもあった印象。守備強度やボール保持時のポジショニングを、もう少し担保したいなと思った場面であります。

後半

DH瓜生と左右対称

後半から沼津が選手交代を行います。
14番徳永に代わって20番佐藤が投入されました。

これに伴い、20番佐藤は左SHへ、7番瓜生はDHに移動します。中央でビルドアップに関わっていた瓜生が本格的に中盤へポジションを移しましたね。

この変更により、少し風向きが悪くなります。
前半は鹿児島の4-3-3様フォーメーションに対して、DHが最終ラインに落ちたり、DHが縦関係になることで4-3-3化し、中盤の三角形が噛み合わないようにしたりして、前進しようとしていた沼津。

鹿児島としても沼津のアンカー役が1人だったので、中原1人で対応でき、三宅は比較的CBへのプレスに集中しやすい環境が整っていました。

それが、瓜生がDHに入ったことでDHの横並びが多くなり、三宅は後方のケアをしなければいけない・中原も田辺脇を取られないように後方で構える必要が出てきたことで、4-2-3-1でブロックを敷く場面が前半より増えました。

これにより、山本はCBの片方にプレスが間に合わなくなり、沼津としては前進が容易になったことで、ボール保持される時間が長くなった時間帯でもあります。

機動力を活かして前まで出て来れる山谷サイドから攻められることは少なかったように思いますが、反対にシワ寄せが来て、山本が追えないCBを追うか、SBを見るかの選択を迫られたのが島津。大外にポジショニングした3番安在や11番染矢がオープンな状態で受けられることが多くなってきました。

その状況は、20番佐藤が瓜生ほど分かりやすくフリーロールに徹するわけでもないので、沼津SBの上がりが左右均等になってきていたことも影響していました。

ただ、島津は無理にCBまで追わず、大外のケアに回ることで安定させていたと思います。2点リードの局面でしたし、わざわざ前から嵌め込みに行く必要は無いですからね。

積極的なシュートの姿勢などで存在感を示した島津でしたが、個人的には守備面での貢献が有難かったかなぁと思います。PKを与えたこともありましたが、11番染矢相手に1on1を仕掛けられる盤面だと仕方なかったのかなと思います。

守備の対人能力は伸ばすべきではあると感じますが、判断レベルでは悪くない島津でした。

気合いのライン突破、三宅

今節はトップ下起用の三宅。
決してポジショナルではありませんが、今の鹿児島の問題を解決すべく、自分の長所を存分に発揮してくれていました。

43:00や50:35の「DH2人に囲まれちゃいるが、自慢の技術で無理矢理ライン突破したるぜ!」は思い描いた通りのトップ下三宅像なのではないでしょうか。

また、SHが沼津SBをピン留めして三宅がハーフスペースに抜け出したり、インナーラップしたSBが沼津最終ラインを押し下げたスペースを使えたり、など前方のスペースを活用する意識も良かったです。

そう見ていくと、約束事が整理されたチームの中で三宅が輝けた理由も自ずと当然に思えてきます。

前後分離の沼津プレッシング

試合も大詰めになってくると、沼津のプレッシングが明らかに強度が落ちました。

沼津は前線やDHを入れ替え、強度の回復を図りましたが、前4枚とその他後方の選手でプレッシング強度に差があり、前後が分断されたような形になっていました。

特にDHのところでは、先ほどの「気合いライン突破三宅」が炸裂する盤面となっていたので、チャンスも作れていたと思います。

ただ、終盤には中村や野嶽寛といったイケイケな若手が入ってきて、オープンな展開に付き合い過ぎた印象があります。前節チャンスを貰ったとはいえ、主力への道のりは長そうな中村・久しぶりにリーグ戦出場の野嶽寛がアピールしたがるのは真っ当ですが、少しヒヤヒヤしながら見ていました。

そんな中で、中村が管理出来なかった大外のスペースから前進・押し込まれ、失点を喫したものの3得点が効き、勝利を挙げることが出来ました。

原点回帰?

流動的な中盤3枚・ハーフスペースに入るSB・大外に張ったところからスタートし、質を活かそうとするなどのやり方は、どうもパパス体制と被ります。

なんだか細かく繋いで…からの失敗シーンのイメージばかりが先行している印象ですが、パパス体制では相手の盤面を見ながら、有効な場合には手数少なく攻めるやり方にも取り組んでいましたよね。

尤も、選手の多くがパパス体制を前提に集められたことを考えると、この着地は自然とも言えるかもしれません。

パパス体制と比べて、新たな要素として今節プラスされたのは、三宅のところでしょうか。
「ポジショナル?なんだそれ!関係ねぇ、ぶっちぎるぜ!」というプレーは当初の理想では無いと思いますが、現状の課題を打破する上では期待通りの活躍をしてくれました。

次は首位熊本戦です。
再びトップ下三宅の起用があったとしても、今節ほどには上手く行かないと思いますし、監督が指摘していた強度不足・コンパクトネスの欠如は致命傷になり得ると思います。

今節は勝利を喜ぶだけ喜んで、次節はどのような采配をするかゼロから注目したいと思います。個人的には熊本対策が見えるところまで仕上げられたら、上野監督の信用度がグーンと上がるかなと思っています。

何より調子がどうあれ熊本に負けるわけにはいきませんので。
というわけで、次節もよろしくお願いします。


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