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大学卒業後、新卒Shumpeiの就職。 昨日の自分と今日の自分を比べてどうなのか。

こんにちは!今回は、私が新卒で就職した話について少し綴ろうと思います。平和構築を学びにイギリスの大学院に留学したり、国際協力系のNGOで働いていますが、新卒で入った会社は今の分野と関係のないところでした。仕事内容を一言で要約するならば、「輸出入品の品質・数量を検査する仕事」です。これだけではざっくりしすぎているので、もう少し具体的にいうと、船で日本に輸入品として輸送されてきたり、輸出品として港で船に積まれたり、港にある積まれる直前の貨物を、商社や船会社などの依頼に基づいて、どれだけあるのか、状態に異常はないのかなどを第三者の立場で公平に検査し報告する仕事です。

簡単な例え話で説明します。500mlのオレンジジュースを送ろうとするAさんと、それを買いたい海外のBさんがいるとします。Bさんは海外にいるため、日本のAさんがちゃんと満杯のオレンジジュースを適切な状態で送り出してくれているのか確証を持てません。証拠と言って写真を送ってもらったりしても嘘をつかれてしまってはどうしようもありません。そこでAさんはBさんに信用してもらうためにXさんを雇います。(Bさんが雇うパターンももちろんあります。)このXさんが私がやっていた検査員です。Xさんは依頼を受け、送り出される寸前の品物を確認し、約束されている数量や品質などを証明するレポートをスタンプとサイン付きで発行します。こうして利害関係を持たない第三者機関が介入することでAさんとBさんの取引が安心して行われるわけです。

この第三者機関という立場はオレンジジュースに異常が起きた場合でも活かされます。例えば、Bさんがオレンジジュースを受け取ったとき中身が200ml減っていたとします。Bさんは500ml分の金額を支払っているので、200ml分の損害が発生してしまい、それを補填するために保険会社に連絡し保険金を請求します。保険会社は、Bさんが一方的に出してくる情報を鵜呑みにするわけにもいかないので、損害状況を確認する必要があります。そこで調査依頼を受けるのが検査員Yさんです。Yさんは、Bさんのオレンジジュースのところに行き、Bさんが主張するとおり損害が起きているのか、他に異常はないかなどを調査します。また、タイミングが良かった場合は運び屋にも事情を聞くこともあり得ます(運び屋は忙しのでもういなくなっていることがほとんどですが。)。オレンジジュースの判りうる限りの損害状況と原因が書かれたレポートをYさんは発行し保険会社に提出します。レポートを受け取った保険会社は、オレンジジュースの状態を確認し、Bさんには過失がなかったことも確認し、Bさんに保険を支払うことを納得します。この時、幸いにもYさんの調査で、残った300mlの品質に問題はないことが分かり、Bさんは300mlを予定通り消費し、損害は200mlで済みました。同時に、レポートには運び屋の運送方法に問題があったせいで、ペットボトルに穴が開いたことが書かれていました。それを根拠に保険会社は運び屋に損害賠償を請求します。このように売り手買い手の間だけでなく、保険が絡むケースでも私の仕事は必要とされました。最も保険関連の検査は経験や知識をより必要とするので中堅・ベテランの仕事になりがちでしたが。

調査対象の貨物は、石油(原油、ナフサ、重油、軽油など)、液体ケミカル製品(キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、IPAなどなど)、鉄スクラップ、コイル、穀物、ソーダ灰、砂、鉄鉱石、フェロクロムなどで多岐に渡りました。液体貨物からマテリアル系の貨物まで品も様々だったので品質の確認もそうですが、数量を測るにも各々適切な方法があって覚えることが多かった仕事でもありました。また、タンカーやバルカーといった船の種類・構造、船乗りについても人並み以上には詳しくなりました。船の世界は時間にシビアなので、プレッシャーの中で正確に作業をする能力もつきました。また、港湾は人間関係がとても重要な世界でもあったと思います。上下関係が厳しかったり、気難しい人がいたりもしましたが、それに負けず突っ込んでいく勢いみたいなものも身につけられたように思います。

以上が、ざっくりとした新卒の就職先の仕事です。別の記事でも書きましたが、大学院に行くためのお金を貯めるために4年間ここで勤めました。ではお金を稼ぐだけなら何をやっても良かったのに、なぜこの職だったのかですが、それはざっくり2点あります。1点目が英語を使う機会がある仕事だったということです。この仕事は外航船(要するに船員が基本的に外国人で国をまたぐ船。ごく稀に日本人がいます。)相手に仕事をすることが多い仕事だったので、コミュニケーションは英語です。また、レポートも英語で作ることが多いです。大学を卒業して英語に触れる機会が減りそうだったので、将来的にも英語を使って仕事をし続けたいと思っていた私にとっては、英語を使う職場であることは大事なことでした。2点目は「検査員」という響きが良かったことです。この肩書きからは、現場で人と話したりモノを視たりして何かしらの報告をしたり、情報をまとめたり、アドバイスしたりする作業が含まれていて、現場と事務所、五分五分スタイルの仕事であることが感じられました。直感的に、NGOや国連で働くことになっても私がやりたい仕事のあり方に近いと思いました。ずっとオフィスで仕事をするのが嫌いというわけではありませんが、外に出て前線に出たりするスタイルの方が私の性に合ってるのだと思います。

以上が簡単な新卒で就職した会社の仕事内容と、就職動機でした。今、この時期を振り返った時にこの選択はよかったのか。NGO、国連、その他様々な舞台で活躍されている方の経歴は十人十色です。これといった正解はないので自分自身がいかに点と点を繋げていくか、自分が打てる一手一手をいかに大事にするかに尽きるのではないかと思っています。確かに、中には一貫した経歴を積み、上手にキャリア形成をしている人がいます。そういった人たちの中には、大学卒業後お金を貯めることなくそのまま大学院に進学した人、都会出身で関東の有名大学に行き大手企業に就職した人、フルタイム就職よりも給与が無いまたは少しのインターンをいくつもやって貴重な経験を積んだ人など、スタートラインが違ったのが垣間見える人たちを見かけることもあります。しかし、これは仕方ないことです。環境や境遇のせいにすれば上には上がいるのが世の常なので、生産的な見方ではありません。あなたが羨ましく思う人にも羨ましく思う人が必ず存在します。逆にあなたの境遇を見て羨ましく思う人も必ず存在します。今自分にできることはなんなのか。他人と比べてどうなのかではなく、昨日の自分と今日の自分を比べてどうなのか。これが人生で大事な視点だと信じています。一歩一歩の積み重ねが、遠くまで届かせてくれて、気づいた時には光景が結構変わっていて驚かされるのです。これを読んでくださっているあなたも、もしかしたらもうすでに経験したことがあるかもしれません。そこまで登ってこれたのは、紛れもないあなた自身の努力の蓄積とあなたを色々な形で支えてくれた人たちのお陰です。自分自身と支えてくれる人たちに感謝の気持ちを持つことができれば人生豊かな勝ち組ですね。


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