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ほんのこと

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『ここはとても速い川』

『ここはとても速い川』

仕事で新刊本を読んで、プレゼンしなければいけないんです。
それがほんとに苦手で、でもその場で知ったかけがえない本がある。
だから私もいつか、ためらいなく「よかった」っていえる本を見つけられればいいなとおもっていたのですが、はじめてそんな本がありました。

それが『ここはとても速い川』です。

短編が二つ入っていて、
私は表題作の
『ここはとても速い川』が好きでした。
主人公の集は児童養護施設で暮ら

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もっかいあの話して。

もっかいあの話して。

おととし『図書室』の話をまわりのみんながしていたときから、岸さんの本きっと好きやろなとわかっていた。
『リリアン』のたたずまいにひかれ、はじめて手にとった。
ほんとにはわかってなかった、こんな大切になるものなんて。

中面の文字のならびが、こんなにも静かな小説をはじめて見た。
ずっとしゃべってるから、声はきこえる。
音楽のはなしもするから、たくさん曲もきこえる。
でもなんかわからんけど、ほんまに静

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『2020年の恋人たち』

『2020年の恋人たち』

島本理生さんの小説は初めて読んだ。
装丁と帯に惹かれてしまった。

たとえば
自分にとって大切だった人、
その美点に支えられてた人、
「世界にはこういう良さもあるのか」と教えてくれた人。
一人ではない、たくさんいる。

そんな人たちの
本人にもどうしようもないループする行動、
一生変わらない、合わない根本気質、
「ここが決定的に違うか、なら一緒に行けないね」となる思想、
それらもたくさん見てきた、

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『好き』

『好き』

「そうか、私、高橋留美子さんの絵が好きなんだ」
10月半ばのことだった。
仕事帰り、いつものように一駅歩いていた時、その言葉がぽつんと胸の中に来た。
その時にはすでに、体全体にその感情は染みわたっていた。体の方がじわじわ先に、気づいていたのだと思う。

私にとって「私が本当に好きなもの」に気づくのは、本当に難しい。
特に、目の前で誰かに何かを熱心におすすめされた時など尚更だ。

何が起きるかという

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届いていた!
待ちきれなくて玄関で開けて読んでしまう。
大好きな人と、また新しい1年を迎えるような、そんな気持ちになる。
どれだけこの手帳たちが好きか、なかなか張り合えるものが浮かばない。
みんなどこかでこの子と一緒に幸せな1年を過ごすんだなあ。

『海をあげる』

『海をあげる』

ほんとうに傷ついたとき、言葉を失う。

それがどういうことがわかる人は
この本が大切になる人だと思う。

数年前、ある人に言われた。
「あなたは感情が遅い。
それはしょうがないことだから、
そうと分かって応じていかなきゃいけない」
けっこう意外な言葉だった、自分では。
自身の早すぎる反応に、
追いつかず振り回されていたから。

じわじわと時間をかけて
その言葉が真であることを知った。
私は早い。

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「吉本さんSNSいろいろやってるんですね!いいなぁ~。西さん唯一公式HPのブログやってるんですけど、めったに更新しないのに、1日に何度も待ち焦がれて見に行っちゃいますもん。切ない~~」とTさん。カンチ、それはもはや恋だね。

「わたし」を駆け抜けた「わたしたち」

「わたし」を駆け抜けた「わたしたち」

わたしが今ここで
自分と一緒に生きている。
毎日も
ちょっとした心の動きも
実はとらえきれてない重石も
わたしがわたしといてくれるから
端っこだけでも垣間見える。
だからこうして
わたしがわたしでいること以上に
ほしいものなんて実はない。

『わたしの全てのわたしたち』は、なんという本なんだろう。
こんな気持ちにさせられるなんて。

全編が詩としてつながっている物語で気軽にちょこちょこ読める。

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雪の日は本の中で温まろう。

雪の日は本の中で温まろう。

静かな東京に雪が降る。巣ごもり日和ですね。たまりにたまった本を少しでも…!ともくもくと読んでいる。そしたらまた「この本について話してみたい」というタイプの好きに出会ってしまった。

櫻井とりお『虹いろ図書館のへびおとこ』

小学校に行けなくなってしまったほのかが、たまたまおんぼろ図書館にたどり着く。そこでであう、みどり色の司書、少し年上の男の子、たくさんの本たちとのお話です。

自分が小学生のとき

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高橋源一郎『誰にも相談できません みんなのなやみ ぼくのこたえ』

高橋源一郎『誰にも相談できません みんなのなやみ ぼくのこたえ』

私は実は(?)好きなものをたくさんの人におすすめしたくないんです。
自分にとって大切な、色鮮やかで確かな気持ちは、空気に出すだけで酸化してしまうから。
「こんな気持ちになったんだよ」ということを、相手と自分にだけ分かるやり方で、なんとなく示すことが多いです。
とくに本ともなると、内容を説明するっていうのがどうもやぼな気がして、うーーん、となります。

でもこの本は、そういうことをやってみてもいいん

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