第9話 新たな企業の買収と銀行リスケ。


新店舗のオープン準備や社内の制度改革、既存店の売上向上の為に東奔西走しながら、僕たちは同時に2つの大きな作戦も進行させていた。

1つはフランチャイズ加盟店の再編・拡大だ。
当時、オンデーズの店舗は直営7対FC3の⽐率だった。この直営店を、運営力の高いフランチャイズ加盟企業へと売却し、多くの店舗をフランチャイズ化させる事で、資産をオフバランスし、財務を建て直しながら直営3対FC7と、逆の比率に持っていこうという計画である。


店舗の管理は各地の優良企業に担当してもらい、負担を軽減することで余ったリソースを、本部機能の強化にもっと集中させる狙いがあった。
そこで、僕は知り合いの会社から、個人的に親交の深かった、ある人物を、オンデーズに引き抜いた。某FC本部に勤めていて、FC運営に関する豊富なノウハウを持っていた「小松原徳朗」だ。オンデーズの持つ可能性を熱く語りながら連日飲みに誘い口説いた。 

小松原は、計算高くクールに物事を進めて行く俳優の柳葉葉敏郎似のナイスガイだ。営業マンとしての⼿腕もすこぶる高く、前職で親交のあったフランチャイズ加盟店の社長達に、オンデーズを紹介しては加盟を促したり、豊富なノウハウと人脈で、順調に新規加盟店を開発し、獅子奮迅の勢いで、直営店の売却と新店舗の拡⼤に乗り出していった。


そして、もう一つの作戦は、雑貨販売のチェーン店「ファンファン」の買収だった。


2008年6月下旬

「ちょっと、前職で取引のあったコンサル会社から、面白いM&A案件の話がきましたよ」

オンデーズを買収してまもなく4ヶ月が経とうとする頃、入社したばかりの小松原は、奥野さんへ分厚い資料を手渡しながら言った。
突然、話を振られ、まだ話の意図が上手く飲み込めていない奥野さんに、小松原は柔和な顔で丁寧に説明を始めた。

「ファンファンという雑貨の店舗をチェーン展開している企業が、先月初めに民事再生を申請して、事業を引き受けてくれる再生スポンサーを探しているみたいです。このブランドはショッピングモールからの受けも凄く良いし、きっと伸びる業態だと思います。オンデーズで買収して一緒に経営したら面白いんじゃないですかね?」

ファンファンは、ピンクとハートをテーマにした三百円均一の雑貨ショップだった。
その独特な世界観が評判となり、特に10代後半から20代前半の女性に人気を博していた。しばしばテレビ番組や雑誌にも採り上げられていて、表参道にある本店には芸能人が頻繁に来店する等、マスコミへの露出も多かった。

2005年に1号店をオープンしてから、約2年で全国40店舗以上に急拡大。売上高三十五億円に従業員数250名と、オンデーズとほぼ同程度の規模の会社であった。
この(株)ファンファンは、「大規模な循環取引(架空取引)を中心とした粉飾決算で多額の融資を引き出した後に負債総額三百億円で大型倒産したブレインビート社のグループ会社であり、親会社の破綻に連鎖する形で民事再生を申請していたのだった。

「これは、興味ありますねぇ。ちょうど良いタイミングかも…」
ざっと資料に目を通した奥野さんは唸った。ちょうど銀行からの新規借入にも限界を感じ始めていて、次の一手を模索していた状況でもあった。

小松原は言った。

「裁判所から選任されたFA(フィナンシャル・アドバイザー)は、エンデューロ社というコンサルタント会社で、私の前職の同僚が今このコンサル会社にいるんです。すぐに奥野さんに紹介しますね」

数日後、エンデューロ社の林田氏と接触した奥野さんは、僕をいつもの喫茶店へと呼び出した。

「先日、小松原さんの紹介でエンデューロ社の林田氏から詳細を聞いてきました。これが、上手くいけばまさに一発逆転もありえますよ。とりあえず、早速ファンファン買収を軸としたオンデーズの新しい再生プランを作成したので、見てもらえますか?」

奥野さんは、そう言いながら少し興奮気味に書類の束を僕へと手渡した。
民事再生したファンファンの事業を譲り受けれることができれば、リース以外の債務は引継ぎせずに売上が倍以上に増え、借入の対売上高比率が大幅に改善する。早期の黒字化も可能な体質になる。

手渡された再生プランの内容に僕も一気に引き込まれた。

「なるほどね。ファンファンを買収する事で一気に売上を倍にしてしまうってことか。まさに『火事を消すなら爆弾を』って感じだね。ハハハ。面白い!」

僕は、興奮気味に手を叩いた。
奥野さんは、細かい数字と買収までの手順を僕に説明し終えると、覚悟を決めた表情で、最後にこう言った。

「この3ヶ月、四葉銀行と由比ヶ浜銀行の融資で何とか凌いできました。しかし、昨日遂に、資金繰り計画で当初予定していた、みそら銀行から融資をはっきりと断られました。各銀行の融資に対するスタンスは、これから益々厳しくなると思います。銀行返済のリスケ(リスケジュール)を行うならば今です。もうこのタイミングしかないでしょう。
しかし銀行にとって、返済リスケは絶対的な『悪』です。普通にお願いしても、そう簡単にOKはもらえません。なので、このファンファンのM&Aを柱とした再生プランを最初に出すこのタイミングで、返済リスケの要請を一気に行うべきです。順調に行けば、7月下旬に裁判所のスポンサー決定が出ます。確定後すぐに、銀行へ返済リスケの協力をお願いしに行きましょう。今のままでは業務に支障のない範囲での返済の目処はもう立ちません。やるしかありません!」


2008年7月4日

僕たちはエンデューロ社に対して「スポンサー意向表明書」を提出した。
ファンファン事業の譲渡希望額は一億円。

別途エンデューロ社に対するFAの手数料が三千万円必要のため、総額一億三千万円の投資だ。エンデューロ社の林田氏も「たぶんこの金額で大丈夫だと思います」と事前に言っていた。

それから1週間後。

六本木ヒルズからほど近い場所にあり、小ぶりだがセンスの良い5階建のビルに入居する(株)ファンファンの本社を僕たちは初めて訪問した。裁判所が選任した管財人弁護士と面会する為だ。

ファンファンの中沢社長他、経営陣との顔合わせを終えた後、管財人弁護士から開口一番に告げられた言葉に僕たちは、一瞬耳を疑った。
弁護士は、表情を変えずに淡々とこう告げたのだ。

「一億では足りません。譲渡希望金額は二億円にあげて下さい。他にも数社がスポンサーの意向表明を行っています。ファンファンが欲しいならば、二億円が最低ラインです」

(エンデューロ社の林田さんが言ってた話とまるで違うじゃないか!それも倍額の2億って…!?)

想定していた買収金額が一瞬にして倍増してしまった現実に、僕たちは言葉も出せず、会議室は重苦しい空気に包まれた。
当初の一億ですら新規に調達できるかどうかギリギリのラインだったのに、ここにきて倍の二億が必要となると、この買収計画は完全に頓挫する可能性が高い。そうなると銀行の各銀行返済リスケ交渉の作戦も根底から崩れてくる。最悪の場合はオンデーズ自体が完全に資金ショートに陥り民事再生だ。

しかし、本社に戻る帰りの道中、僕の肚は完全に決まっていた。

(いや、二億円で再度提示する。ここで引くわけにいかない。何が何でもファンファンを手に入れる)

ファンファンは人気ブランドであり、デベロッパー各社からの評価も高い。この人気雑貨チェーン店を手にすれば、ショッピングモールを運営する大手デベロッパーへの発言力も大きく増すことが期待できた。
当時のオンデーズは、過去に酷い運営状態が長く続いていたため、デベロッパー各社からの評価は地の底まで落ちていた。契約満期に従い黒字店舗でもモールからの撤退を迫られるなど、僕が買収した後も出店区画の確保は困難を極めていた。

さらに、ファンファンはブランディングやマーケティング戦略が巧みで、中小企業ながら広報やマスコミ対策も抜群に上手い。それらの様々なノウハウを吸収できるのもとても魅力的だ。当時のオンデーズに欠けていた要素をいくつも補完できる為、シナジー効果は高い。ファンファンを知れば知るほど、僕はどうしてもこの会社を手に入れたいと強く思うようになっていたのだ。

弁護士からは、「裁判所のスポンサー決定には民事再生を申請した会社側の経営陣や社員の意見が色濃く反映されるから、直接、経営陣と話し理解を得たほうが良い」というアドバイスを得ていた。

僕は早速、ファンファンの本社に足繁く通い、中沢社長と面談を繰り返し、食事にも出かけながら、再生への思いや、具体的な計画を熱く語りあった。
中沢社長は、僕の父親と同世代の60歳。大手商社を脱サラしてファンファンを仲間たちと起業していた。可愛いピンクの雑貨を扱うファンファンのイメージには不釣り合いな大柄な体躯に日に焼けた黒い肌、少し白髪混じりのオールバックが印象的なベテラン経営者然としていた。

中沢社長は、息子程に歳の離れた僕の話に熱心に耳を傾けてくれると、僕の提案した再生計画にも強く賛同してくれ、「田中さんのオンデーズを是非スポンサーにして一緒に再生に臨みたい!」と管財人弁護士へ熱望してくれることになった。


2008年7月15日

「社長! やりましたよ! 決まりました。ウチがファンファンのスポンサーに指定されました!」

お昼を少し過ぎた頃、会議室で一人、ビックマックにかぶりつきながら仕事をしていた僕のところに、奥野さんが満面の笑顔で報告にきた。

無事に管財人からオンデーズがファンファンのスポンサー最終候補先として指定されることが決まったのだ。
この決定を受けて、すぐに僕と奥野さんは各銀行に大至急のアポを取り、ファンファン買収を含めた新しいオンデーズ全体の再生プランの説明と、半年間を金利支払のみとする旨の返済リスケの交渉に回った。

しかしながら、予想していたとおり、すんなりと返済リスケの申し出を承諾してくれる銀行は皆無だった。
各銀行の担当者たちは皆んな、再生プランを一瞥すると、呆れたような表情を浮かべながら否定的な言葉を浴びせかけてきた。

「はあ? また会社を買収する?、それで、買収の資金はどうするのですか?」

「ベンチャーキャピタルや投資家から調達の努力をしますが、最悪の場合、僕の親族から借入をしてでも用意する予定です」

「社長さん、あんたねぇ、親族から、そんな資金が手当てできるアテがるのなら、買収資金なんかに使わず、まずは当行への返済に回してくださいよ!」

「借金の返済に回したところで、二億程度の資金では完済できるわけでもないし、売上がすぐに上がるわけでもなく、その場凌ぎにしかならないじゃないですか!僕が今、個人で調達できる全ての資金を、目先の返済の為だけに溶かしてしまったら、もう後には何も残りませんよ。僕の個人的な資金は、あくまでもオンデーズが成長できることだけに使います。長い目で見れば、その方が銀行さんにとっても必ず良い結果になるはずです!」

「知りません。とにかく当行はこの再生プランには反対しますし、リスケにもすぐには応じられません!まずは7月末の返済は約定どおり履行してください!話はそれからです!」

まるで、「お前にオンデーズの再生なんて無理だ。とにかく目先のお金を一円でもいいから返済に回せ」とでも言わんばかりの銀行の反応にショックを受けながら、会社への帰り道、僕は奥野さんに愚痴をこぼした。

「何で銀行は理解してくれないんだよ。今ここで、なけなしの金を目先の返済に強制的に回させても、結果的にオンデーズが潰れてしまえば、全額回収できなくなるだけなのに」

「銀行は、稟議の決裁が下りない限り、絶対にその場で応諾はしませんよ。そういうもんです。事情を理解してくれてたとしても『わかりました。でも返済は履行して下さい。』と言うことしか立場上、できないんですよね。事情も理解しようとせずに、ただ一方的に非難してくる銀行もありますから、それよりはまだ全然ましですよ」

こうして3日間をかけて全ての取引銀行を回ったものの、結局、一部の銀行にはアポ入れと説明が間に合わずに7月の末日を迎えることとなってしまった。


2008年7月31日

遂にその日がやってきた。

「本日、銀行の返済をストップします」

朝9時の始業前に臨時の朝礼が行われた。静まり返った社内で、奥野さんが重たい口を開いた。

「皆さん、よく聞いてください。本日、全ての取引銀行への借入れ返済をストップします。銀行からの電話が殺到すると思われますが、全て『奥野から折り返し電話します』とだけ返答して、他の人には絶対に繋がないで下さい」

本部の社員達は、これから何が起こるのか今ひとつ想像できていないようであったが、奥野さんを筆頭に経営陣の緊張した面持ちと「銀行返済を止める」という言葉に、只事ではない事態の片鱗を感じ取っていて皆一様に不安にかられていた。


朝9時 始業開始。

案の定、銀行の開店時刻である9時前後から、銀行からの電話がひっきりなしに鳴り続けた。奥野さん一人で電話の応対を行ったが、各々の電話が長時間となるため、電話を折り返すこともままならない。奥野さんのデスクはすぐに伝言メモで埋め尽くされていった。
真っ先に電話をかけてきたのは、前日までに説明を終えていた七六銀行だった。

「残高不足で返済が落ちてませんけど、どうなってるんですか!」

「昨日お話したとおり、本日の返済分から猶予のお願いをしております」

「まずは本日分の約定返済を履行してもらわないと、話が進められません」

「折返し融資が否決され、返済できる資金がありません。しっかりとした再生計画を準備した上でのリスケのお願いですから、どうかご協力をお願いします」

「承諾できません。まずは返済を行って下さい」

「今日の返済を行うと、来月以降の従業員への給料が支払えなくなります」

「それは知りません。当行への返済分ぐらいできる資金はあるでしょ?ウチだけでも返済して下さい」

「特定の銀行さんにだけ返済すると、リスケ計画自体が成り立ちません」

「いや、とにかく入金して下さい」

「出来ません。お願いします。ご理解ください」


禅問答のように、糸口の見えない堂々巡りが延々と続けられた。
前日までに説明が出来なかった銀行には、状況の説明がイチから始まるため、更に時間がかかる。

奥野さんが電話を切り、初めて「ふ~」と息を吐いて背伸びをした時は、既に午後の3時を回っていた。
電話の応対が一段落をすると、今度は突然に借り入れ残高5位の琵琶銀行の課長がアポなしで本社に直接押しかけてきた。
青天の霹靂とも言える突然のリスケ要請に、琵琶銀行の担当者は殺気立っていた。


「とにかく直ぐに社長の個人保証を入れて下さい!!」

「返済リスケに応じて頂ければ個人保証も差し入れます。」

「まずは誠意を見せなさい!それでなければリスケの検討も何も出来ません!」

「御行だけ特別扱いは出来ません。全ての銀行さんに対して、個人保証の差入れはリスケの条件とさせて頂いています」


またもや堂々巡りが続いた。しかし奥野さんの毅然とした態度に対し、もう埒が明かないと思ったのか、琵琶銀行の課長はイラつきながら言い放った。

「我々は金貸しですから、甘く見ないほうが良いですよ。このままだと、8月末が期日の借入手形を交換に回しますよ!」

この課長代理の脅迫を聞いた奥野さんは、次の瞬間、憤然として立ち上がるなり大声で怒鳴った。

「要件はわかりました。もう話すことはありません。お帰りください!」

ただならぬ雰囲気に駆けつけた僕は心配そうに尋ねた。

「奥野さん、どうしたの?そんな怖い顔して…」

「あの課長はちょっと酷すぎます。銀行が融資用の手形を交換に回すことなど、通常の延滞対応ではあり得ません。たぶん僕が銀行出身だということを知らずにあんな脅しをかけているんでしょうけど、虚偽が悪質すぎます!」

この琵琶銀行の課長は、翌日も朝から電話をかけてきては「社長の個人保証をすぐに入れろ。誠意を見せろ!」と怒鳴り散らした。さらにRBSの小原専務にも電話を入れると『騙したのか!旧経営陣のRBSがなんとかしろ!』と狂ったように電話をしてきたらしい。

僕は奥野さんから報告を受けると頭を抱えた。

「困ったもんだね…」

「はい。このままやりたい放題されると、リスケ計画全体にも影響が出る恐れがあるので、思い切った手を打ちます」

「どうする?」

「私個人名で支店長宛に抗議文を出します。それも配達証明付き内容証明郵便で」

「抗議文て…大丈夫なの?」


すると奥野さんは、8月3日に本当に抗議文を発送してしまった。抗議文にはこう綴られていた。
・銀行の守秘義務に抵触する疑義。
・借入手形を交換に回す旨の脅迫。
・自分(奥野さん)は、一般の銀行員よりも”衡平性”の解釈は深い。優良銀行である琵琶銀行の対応としては驚愕の念を禁じ得ない。紳士的な対応を求める。

「こ、こんなの出しちゃって大丈夫なの…?」

内容を見た僕が慌てて尋ねると、奥野さんはメガネのブリッジを人差し指で押し上げながら、意を決したように答えた。

「この程度のクレームなら大丈夫ですよ。でも、今回は私の個人名で通知していますので、『奥野が勝手にやった』ことにして下さい。 ただし、個人保証の要求に対しては『奥野の承諾が必要』で必ず押し通して下さい」

「いや、いいよ。奥野さんは自分の責任の中で、俺と会社を守るためにやった事なのだから責める気なんて別にないよ。人に下駄を預けた以上は、滑ろうが跳ねようが文句は言わないよ。ハハハ。もうここまできたら、思う存分やって。そして必ず乗り切ろう」

僕はそう答えて、これからも繰り返されるであろう銀行との血みどろの交渉に、真っ向から立ち向かっていく決意を更に強めたのであった。


2008年9⽉ 

裁判所の正式な決定を受けて、オンデーズはファンファンを遂に傘下に⼊れる事ができた。買収を決め⼊札に参加してから僅か3カ⽉でのスピード決着である。
しかし、無謀にもこの時点でもまだ、肝⼼の買収資金の目処は立てれていなかった。
⼊札に参加した時点ではオンデーズ⾃体の売り上げや収益が改善しつつあったことから、新しい企業の買収であれば、個人投資家やVC、銀行などから新規の資金を調達できるだろうと、強気の戦略に出ていたのだったが、その後、僕が陣頭指揮を執った⾼⽥⾺場店が失敗した事や、リーマンショックなどが重なり、オンデーズを取り巻く環境は悪化。資金調達は思ったようには運ばなかった。

せっかく買収に成功したものの、実態はまだ買収資金の具体的な目処すらまるで立てられていない状態だったのだ。

結局、アテにしていた新規の資金調達は全くできず、僕個人の全財産と貯金を全て切り崩し、この頃、急死した父親から母親が相続した資産を全て売却してもらい、そのお金を借り、更に個人投資家からの短期のつなぎ融資も高金利で個人で借り入れて、なんとか買収資金の二億円をギリギリで用意することができた。

こんな場当たり的な力技で、無理やり買収を成功させたまではいいが、その結果、オンデーズの資金繰りは前にも増して酷い綱渡りの状態、更なる火の車に追い込まれてしまった。

遂には、明日にも社会保険料や税金の滞納を検討しなくてはいけないような始末だった。

そして一発逆転をかけて挑んだファンファンのグループ化だったが、喜んだのも束の間。

事態は新店舗の失敗が、まだ子供の可愛い悪戯であるかのように見えてくるほど、思わぬ形で最低最悪の状況に向かって転げ落ちて行くのである。


第10話に続く・・

*本記事は2018年9月5日発売の【破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book) 】から本編の一部を抜粋したものです。

https://www.amazon.co.jp/破天荒フェニックス-オンデーズ再生物語-NewsPicks-Book-田中/dp/4344033507




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