愁愁

あかんやつや

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最近の記事

たにゆめ杯2の選を終えて(選評その2)

前回に引き続き、私の選で最終候補として選出した作品について評を書きました。 今回は良かった点だけでなく、最優秀賞/個人賞に推せなかった理由も記載しました。他選者さんの意向とは関係なく、私独自の選の基準に拠るものなので「こいつ何にもわかってねえなあ!」と読んでいただいて構いません。 また、この記事を書いた時点で公開されていない作品については単語の引用も極力控えたため、やや曖昧な評になってしまったのはお許しください。 朱美 さまざまな「花」を詠みこみつつ、「煙草」「マッチ」「灰

    • たにゆめ杯2の選を終えて(選評その1)

      前回の記事の続きになりますが、たにゆめ杯2の選考にあたり、今回の最優秀賞受賞作でもあり、私も最優秀賞に推した「海秋風」、および私の個人賞であるコンソメパンチ賞受賞作「水の器」について、選考報告に書ききれなかった評をお送りします。長くなります。 1.「海秋風」(中野功一さん) まず、どの歌も情景描写と詩性のバランスに優れていると感じました。2首目では直接の言及はされていないものの、「BRT」と「柳の並木」の取り合わせで新潟市街の風景が浮かびました。4首目の、日常に突如あらわれ

      • たにゆめ杯2の選を終えて

        Twitterユーザーを対象に募集した短歌コンテスト「たにゆめ杯2」の選考結果がこのほど発表されました。 今回は選者として全142作品と向き合う機会をいただき、私なりに誠実に、厳正に選を行なったつもりです。その選考の過程を記録したいと思います。 1.選考の流れについて 最終候補作の選出方法は各選者に一任とのことだったため、私の場合は下記の①〜③の流れで選を行いました。 ①142作品の採点 最優秀賞を選出する基準で全作品を採点した。 まず1作品を7〜8分かけて通読し、良いと

        • 幻想句集を読んで・四(雷)

          前回の記事(参(海霧))はこちらから。 https://note.com/shueshueshu/n/n7e8ec6c705dd 蒸した日に顔を壊してから捨てる/「iwa」西沢葉火さん 人形(またはぬいぐるみ)を捨てるところだろうか。顔を壊すという行為はそこにあった顔立ちや表情を損なうということだ。主体は何か理由があって、これから捨てる人形の顔を誰にも知られたくないようだ。「蒸した日」という語句からは、主体が額にかいている汗や、息の荒さがむわっとした臭いとともに伝わってくる

        たにゆめ杯2の選を終えて(選評その2)

          幻想句集を読んで・参(海霧)

          前回(弐(虹))の記事はこちらから https://note.com/shueshueshu/n/neeb4830b399d 眼球Aになるまでの手記夜盗虫/「まなうら療法」縞田径さん 夜盗虫は蛾の幼虫で、夜に地上に現れて園芸植物を食害する。「眼球A」とは点Aなどと同じく、明確な名前のないものに対する記号だろう。 「〇〇の眼球」ではなく「眼球A」に変化するということは、元の名前を失っているということか。そうすると夜盗虫が食べていたのは眼球の持ち主だったように思われる。夜盗虫が

          幻想句集を読んで・参(海霧)

          幻想句集を読んで・弐(虹)

          壱(青嵐)の続きの鑑賞文です https://note.com/shueshueshu/n/n115db9779904 向かふから来るものもあり茅の輪かな/「結界」おふうちゃんさん 夏越の祓の儀式のひとつである茅の輪くぐり。そのルートは一方通行になっていて、通常反対側から別の参拝者が歩いてくることはない。もしあるとしたら、それはきっと人ならざる者だろう。 舞台が神域であるため、神様という読みもできるのだが、そうではないと読んだ。八十八ヶ所巡りの逆打ちや通夜の逆さ水など「逆」

          幻想句集を読んで・弐(虹)

          幻想句集を読んで・壱(青嵐)

          https://note.com/tadayou_k/n/n61c0a2502ab7 海月ただようさん主宰のネットプリント「幻想句集」に参加させていただきました。 妖しい句、シュールな句、うつくしい句が揃っているので、鑑賞文で少しだけご紹介できたらと思って記事にしました 蜜病のノウゼンカズラ歩き出す/「狂夏」赤片亜美さん ノウゼンカズラは盛夏に、唇のような形の赤い花を無数につける。花は蜜を豊富に含んでいて、虫や小鳥を呼び寄せる。「蜜病」ということばに、官能的だけれどおどろお

          幻想句集を読んで・壱(青嵐)

          わたしの母親の話

          子供の時からわたしの母親は「産まなきゃよかった」が口癖だった。 彼女はとにかく短気で、わたしと妹たちは事あるごとに鼻血がでるまでビンタされていた。同じかそれ以上気難しい父親とは毎日のようにつかみ合いの喧嘩をしていた。不満があれば、我慢することなく店にいつでもクレームを入れていた。わたしの幼少期の実家は、たたかいのほのおが消えぬ修羅の家だった。 わたしが大学生の時、母親に癌が見つかった。決して初期ではないと告知されてから母親は変わってしまった。 白砂糖は毒だといってぜんぶ捨て

          わたしの母親の話

          「文鳥 春夏/秋冬」(よしおかえり)を読んで

          #文鳥短歌 のタグをご存じだろうか。 ツイッターで文鳥のかいぬし達が文鳥や、文鳥との暮らしを詠んだ歌のタグである。文鳥歌会も開催されており、わたしも参加させていただいた。 このたび、歌人で文鳥歌会の主宰者でもあるよしおかえりさんが文鳥歌集を発行したとツイッターで知り、幸い二冊とも手に取ることができた。文鳥歌集は、気まぐれに短歌を作り短歌を読むかいぬしと、この世に生をうけて五か月になる新米文鳥二羽の家へやって来た。 すごい。めくってもめくっても、文鳥短歌。拙い感想ではあるが

          「文鳥 春夏/秋冬」(よしおかえり)を読んで

          平成最後に震災の海を見た話

          「ありがとう平成」「こんにちは令和」。 世間が寄ってたかって平成を総括しにかかっていた平成31年4月末、連れの提案で唐突に車で岩手宮城の海辺を旅することになった。 しかし、10連休である。今さらホテルなど取れるはずもなく、布団と電気ポットと、連れがどうしてもというのでなぜかソーセージ焼き器を車に積んで車中泊の旅に出た。 仙岩峠を越えて盛岡を通過し、一日半かけてやっと沿岸地域である久慈に到着した。わたし自身は仙台盛岡に仕事で来ることはあっても、沿岸部を訪れるのは初めてだった。連

          平成最後に震災の海を見た話

          にんげんを休んでいる話

          私事なのだが、仕事へいけなくなってしまった。 きっかけはとてもつまらないことでついったーにも書いたのだが、仕事で疲れて帰ってきた夜、睡眠導入剤と安定剤を酒で飲んだら昏倒してしまったことだった。失禁もしていた。あのときわたしは一回死んでしまったのかもしれない。それからなんとなく一度も出勤できずじまいで土日挟んで四日めになる。 いまは朝目が覚めて、睡眠導入剤で夕方まで寝て酒を飲んでまた寝るクソみたいな生活をしている。気分転換に連れが一度ラーメン屋に連れていってくれたがそこでもつま

          にんげんを休んでいる話