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治川の詩集

37
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2021年9月の記事一覧

三秒間

三秒間

1.2.3で 息を吸って
4.5.6で 息を吐いて

簡単なこと
当たり前のこと 

それでも私は生きやすくなった
息がしやすくなった

どうしても 生きるのが辛くなったら
すこしだけ 生きるのを辞めればいい

1.2.3で 息を吸って
4.5.6で 息を止めて

3秒間だけ自殺する

そんな世界

そんな世界

自分だけが歳をとった
そんな世界ならいいのに

好きなものは過去となり
仲間達は新たな道を歩んでいき
私はまだ変わらずにいる

自分だけが歳をとった
そんな世界ならいいのに

桜の花が咲いて散るたび
街の景色も変わって行く

何もかもが無くなって
何もかもが遠くなって

私だけが取り残される
この何も無い世界に

歳をとることは幸せではなかった
大人になることが幸せではなかった

嗚呼
自分だけが

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金木犀

金木犀

金木犀の香りがこんなに良いものだと
気づいたのは昨年だった

昨年の春に社会人として産まれ
昨年の秋に人生の終わりを悟った

金木犀の香りがこんなに良いものだと
気づいたのはこの頃だった

会社の外に出ると ふわりと薫る
甘くて 優しい けれどねっとりとした
夕陽に映える秋の香り

未来はあるのかと荒んでいた
あの頃を懐かしみながら
またこの香りに酔いしれる

金木犀の香り

登場人物

登場人物

「こんにちは」
と挨拶すれば 忽ちあなたは
私の物語の登場人物になる

そのまた逆も然り 私も
誰かの物語の登場人物になる

少しでも関われば 情が芽生える
例えどんなに無関心だったとしても

居なくなれば寂しく思い
心を揺れ動かす

「こんにちは」
と挨拶すれば 忽ち私は
あなたの物語の登場人物になる

ならばせめて

あなたの物語を壊さないように
傷つけないように 
傷つかないように

片隅で

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