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祖母の背中に学んだマルチタスク

家事をする時は、洗濯機をスタートさせてから旦那のハンカチにアイロンをかけ、ミルクティー用のお湯を沸かす間にシンクの皿洗い。乾いた衣類を所定の位置に戻しながら、布団のシーツ替え。そうこうしている間に洗濯が終わるので、洗い物を干す……といった感じでちょこまか動き回っています。
さらにこの合間にツイッターを見たり、note記事を書いていたり、スマホのゲームをしたり。タスクの進み具合に合わせて、ゲームの行動値を使ったり回復させたりを行っていることもあります。

休日、家の中で右に左に動く私を見ていた旦那が言いました。
「かーちゃん、よくそんなに色々なこと並行でこなせるね?
俺はそういうの全然だめ、ひとつの事しか出来ないから尊敬する」

もちろん、旦那も会社でメインの業務をしている時に他の作業を頼まれるような事はあるはずなので、私だけがマルチタスクに特化しているわけではありません。
私は旦那より少しだけ、同時に二つ以上のことを考えたり、実行したりしていてもそれが苦になりにくい性分なのでしょう。

ならば、私がマルチタスク的活動を普通にするようになったのはいつからだろう。
接客業経験が多かったので、品出しの合間にお客様に声をかけられて商品を案内するなどの積み重ねでそうなったんだっけ?

記憶の糸を手繰っていった先に辿り着いたのは、亡き祖母が実家でてきぱきと家事をこなしている記憶でした。
ああそうか、おばあちゃんの影響だと気づいた時、ずいぶん嬉しく感じたものです。


昔、私の実家には洗濯機が二台ありました。一台は家の洗面所、もう一台は庭にある井戸の小屋に(と言っても、水は組み上げではなく水道が引かれていました)。
私や妹が学校で汚してくる衣類を、二台の洗濯機フル稼働で洗い上げてくれていたのが母と祖母でした。

洗面所の洗濯機に衣類を突っ込んで動かし、残っている衣類をバスケットに詰めて井戸の洗濯機へ。両方を回している間に、私達が学校が持ち帰ってきた上履きを洗ってくれたり。
洗濯機も今と違って二層式なので、毎回脱水側に入れて水分を飛ばし、その後にすすいで脱水をして……を洗濯機を往復して祖母は繰り返します。当時六人だった家族の衣類を洗い上げるのに、何往復していたことでしょう。

なおその後、妹に子供が生まれて八人になった家族の衣類洗濯も、体力の許す限り祖母は引き受けてくれていました。
背中の骨が曲がっていて、常々体が痛いといいながらもそうやって動いてくれたのは、ひ孫可愛さからだけではなかったように思います。

祖母は戦後の時代を苦労して生きてきた人で、時間は無駄にせず動くもの、という意識が体に染みついていました。几帳面な性格で、休んでいていいよと言ってもやる事がある限りは辛さをおしてでも動いてしまうタイプです。

人生経験上祖母の方が手際がいいのは当然で、私が母に頼まれて慣れない手つきで夕飯を作っていると、祖母が手を出してきてちゃちゃっと仕上げてしまった事も、たびたび。
怒られているわけではないのですが、私の出番ないかな……と、ちょっと料理に苦手意識を持ったりもしました。
でも祖母の作ってくれる遠州焼き、美味しかったんですよ。


ひとつのタスクにかかる労力と時間を把握すること。
手を放していられる時間で他に何ができるかを考えて行動すること。
そうしたことを、祖母は小さな背中で雄弁に見せてくれていたのだ、と大人になって気づきました。

庭の小さな畑にチューリップなどを植えて花を愛でることや、書道も好きだった祖母。彼女の活動は、亡くなる前に病床に伏せるまで変わらず続きました。
そのおかげか認知症とは無縁で旅立っていったため、通夜に来て下さった祖母の旧友が「つい数日前まで、お電話で話したのに、突然でびっくりして……」とおっしゃっていたのを記憶しています。

祖母のようなガッツはない孫です。祖母の方がずっと辛い体調で長い事過ごしていたので、弱いなあと痛感します。
それでも私がやる気の出た時にあれこれを効率良くこなすのは、祖母の教えを守っているような、そのありがたみを噛みしめる行為のような気がするのです。

時間は有限。私自身も「あー、あれやってる間にこっちの事ができたな! しまった!」といったがっかり感に打たれ弱い方なので、祖母の教えのおかげでもったいない時間の使い方を回避できているのがとても有難いです。

できる範囲で、やれる事をコツコツと。
時々祖母を思い出しながら、頑張っていきたいです。

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