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手術。麻酔の力。

手術室に入ると、手術用の部屋がいくつか並んでいて、自分は一番奥の部屋に案内された。
入ると、着替えや消毒用のスペースがあり、その場で専用キャップとスリッパを着けさせられた。

病棟から一緒についてきてくれた看護師さんはここでお別れ。手術室の看護師さんに必要事項を申し送って、「それじゃ、がんばってくださいね。」と一言声をかけて、手術室を後にした。

この何気ない一言が、意外と嬉しかった。看護師さんの声掛けって、安心感がある。患者さん側に立つとより感じる。

そして、いよいよ手術台のある部屋へ。
中はちょっとひんやりしていて、心地よいオーケストラの音楽が流れていた。
手術台の前には麻酔科の先生とその助手さんがいて、宜しくお願いしますと挨拶した。
その後、助手さんに促されて、手術台の上に仰向けになった。

手術台がとっても温かい。ヒーターがついているのだろうか?部屋のひんやり感と丁度良くマッチしていて、心地が良い。

助手さんが点滴のラインを取っている間に、麻酔科の先生が、麻酔するにあたっていろいろ説明してくれている。

自分はそれに受け答えしながら、手術始まる時ってどんな感じなんだろうなーと呑気に考えていた。

点滴のラインを取った後、麻酔科の先生と助手さんが、セッティングしながらいろいろとやりとりしている。
その話に、オーケストラの心地よい音楽がBGMとして入ってくる。

それを目を瞑りながらしばらく聞いていた

・・・ところで記憶が途切れた。

「もう終わりましたよー。どうですか?さっきまでお父様とお母様もいたんですけどね~」

目を開けた時には、薄暗い部屋でベッドの上に寝ていた。目の前には主治医の先生がいて、そう話しかけていた。

その時は状況が整理できず、ぼんやりとしながら受け答えしていたが、徐々に状況が分かってくると、驚いて一気に目が覚めた。

遠い視線の先に、アナログ時計が掛けられていたので、時刻を見てみると午後6時をまわっていた。あれから約9時間経っていた。
トリミングした編集動画のように、9時間分の場面がバッサリ切り取られて、今に至る。そんな気分だった。

不謹慎は承知の上で、死ぬ瞬間ってもしかしたらこんな感じなのかもしれないと思った。本当の「無」。それぐらい衝撃の疑似体験をした気分だった。

これが、全身麻酔の力か。

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