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「税務署より基準が厳しい」と言われるリンクスの経費の使い方と、豊かに生きる人を増やす投資

先日、会社で税務調査を受けた。もちろん何か問題が起きたためではなく、定期健診のような調査だ。お世話になっている税理士さんや経理を担当している妻のみゆきとともに調査に立ち会ったが、これが面白かった。

税務調査では、税務署の方から多くの質問を投げかけられる。税理士さんが調査のあとで教えてくれたところによると、裁判でいう判例のようなものが税務調査にもあり、突っ込まれるパターンが一定決まっているのだという。こうした知見に触れることはあまりないので、新鮮で学びの多い体験だった。

もうひとつ、今回の税務調査で印象的だったことがある。それは、税理士さんから「税務署より厳しい仕訳だ」と言われたことだ。たしかに、リンクスは従業員150名ほどの規模であるにもかかわらず、会議費は月あたり1万円を切っているなど、利益につながったかどうかを基準にして透明性の高い経理を行っている。この経費をはじめとした「お金」への考え方は、リンクスが債務超過を解消し、事業を伸ばすことができている要素のひとつでもある。

そこで今回は、リンクスとして、そして僕個人としてのお金に対する考え方、さらにこれからお金をどのように使っていこうとしているかを話したい。


税務署より厳しいリンクスの経理部長

まずリンクスでは、経費の公私混同を徹底して排除するよう心がけている。仕事の話しかしていなかったとしても、妻や役員を務めている妹との食事を経費とすることはない。そして管理職やほかの役員との食事も原則経費としていない。

「節税的な意味でも、真っ当な内容だったら経費とした方がいい」と税理士さんには言われるが、その選択はこれまでしてこなかった。

この背景には、経理を担当する、とにかくまっすぐな妻の意向もあるが、僕自身もそれがいいと思っている。節税するといっても実際に削れる金額は微々たるものだし、本当に利益を上げるために使った金額だけを経費とすることで、投資対効果がより明確になると考えるからだ。

一方で、どの出費が利益につながっているのかを明確に判断するのは難しい。業務効率化のためのシステム導入など短期的に効果が見られるものはわかりやすいが、それこそ社員との食事や外部の人との会食などは、線引きが曖昧になりがちである。すぐに何かが変わることはなくても、長期的に見れば利益拡大につながるかもしれないからだ。

そこで、その場で話したことをもとに「これは経費とするべきか」の内部審査を行っている。これを担当しているのが妻だ。とにかく不正や曲がったことを嫌う性格ゆえに、彼女ひとりで税務署より厳しいのだ(笑)

さらに毎月、勘定科目一覧のすべてを管理者たちへ公開もしている。実はリンクスは僕が代表に就任した当初は億単位の債務超過を抱えていたのだが、こうした経費削減の試みや、職員の会社への信頼感を高めるための透明性の確保が功を奏して、債務超過の解消につながった。

税務調査

子どもの体験に優先的に投資する

今はこうして経費の公私混同を厳しくチェックしているリンクスだが、僕が代表に就任する以前は、仕事の話だけをする場合に限ってではあるが家族間の食事も経費としていた。

それを代表に就任したタイミングで一切辞めた。財務状態をクリアにしたいし債務超過も解消したいとの想いで、家族で暮らす環境も変え、支出を抑えることができるようにした。

当時家族5人で住んでいたのは、築30〜40年ほどのアパート。洗濯機を置くスペースが室外にあるような、古い造りの部屋だった。債務超過解消の見通しが立ったことと、次男の小学校進学を機に現在の家に引っ越すまでは、ずっとそこに住んでいた。

湿気が溜まりやすく日当たりも良くないためにカビが生えやすいのが難点だったが、ベランダが広く、夏は子ども用のプールをベランダに用意してみんなで遊ぶこともあった。このアパートの近くを通った時には、お金を使わずに楽しむために試行錯誤していた日々を思い出し、妻と懐かしい話をする。

当時、多くのお金を使えるわけではなかったものの、子どもたちの体験には積極的に投資を行っていた。現在も続けているペンション巡りはそのひとつだ。

このような生活が苦しい局面においては、できるだけ節約して少ない額でもなんとか貯蓄しようと思う人もいるかもしれない。質素な暮らしをしながらも、僕が子どもの体験に投資しようと思った理由は、多くの経験によって子どもたちの感性が豊かになると考えたからだ。また、「今貯蓄をしなくても、事業を成功させればいい」という考えがあったからだとも思う。

家族で宮古島へ

貯金をするのはなんのため?

とはいえ、僕も以前からこうした考えを持っていたわけではない。代表になった2020年以降、お金に対する考え方や使い方が変わっていった。

億単位の債務超過があるなかで代表に就任し、覚悟を決めて債務を背負ったことで、今と未来しか見なくなったのが大きいのかもしれない。今を最大限活用すること、そしてそれによりこれからの未来をよくすることだけに集中するようになったのだ。

多くの人が貯蓄をするのは、「何かあった時のため」「老後のため」だと思う。そしてこれは、「もし自分が稼げなくなったら」と同義だと僕は捉えている。そう思うのであれば、ただ貯蓄をするのではなく、何か今と違うことでお金を稼げる術を身につけるために使った方がいいのではないだろうか。その方法は自己投資のようなスキルアップはもちろん、金融投資のように自分のお金自身にお金を稼ぐ力をつけてもらうための試みでもいい。稼げなくなった時のために貯金するのであれば、今そのお金を自分に投資しようと伝えたい。こうした取り組みをせず、貯蓄だけをしているのはもったいないと僕は思う。ただ漠然と貯蓄を続けていても、いくらあれば安心ということはなく、不安は解消されないのではないか。どうして不安なのかをまず具体的にして、そのために何ができるかを改めて考えることをおすすめしたい。

家族で宮古島へ

職員がいつでも飲食を楽しめる食堂を作りたい

今を最大限活用することを意識して日々経営に向き合ってきた結果、先述の通り昨年債務超過を解消することができた。そして今年は、予測をかなり上回る利益を上げられている。

現在はその利益をどのようにして職員に還元するか考えている。アイデアのひとつとして上がっているのが、職員たちがいつでも飲食を楽しめる食堂を作ることだ。職員であれば無料か500円くらいで利用できるようにしたい。

人とのつながりは、オキシトシンと呼ばれる幸福物質を発生させる。単身の職員もこの食堂で食事をすることで、これまで以上に人とのつながりを感じられ、より幸福度の高い生活を送れるようになる可能性がある。もちろん、職員への金銭的なサポートにもなる。

そしてこれは職員への還元と同時にリンクスにとって大きな投資でもある。たとえば、「面白い取り組みだ」と感じたメディアが取り上げてくれ、認知度アップにつながるかもしれない。また、別の施設で働く看護師さんや介護士さんにはサービス価格で提供することで、食堂をきっかけにリンクスに興味を持ち、働きたいと思ってもらえる可能性があるからだ。

その食堂事業単体では赤字となることは間違いないが、それ以上にメリットが大きいと考えている。これらのメリットや年間での投資可能額などを含めて、現在検討している段階だ。

まだひとつ目の食堂もやると決まっていないのに気の早い話だが、軌道に乗ったら同じような場を複数箇所作るのも面白そうだ。

僕たち夫婦だからこそできることを

もうひとつ、会社とは別にやってみたいことがある。

それは、夫婦関係に悩む経営者たちに対する夫婦コンサルティングだ。事業としてではなく、個人的なサポートとして取り組んでいければと考えている。こう考えるようになったきっかけは、妻と僕が通うパーソナルジムの経営者から受けた相談だ。

妻とふたりの子どもを持つ彼は、妻が専業主婦ということで共通言語が少なく、会話が弾まないとの悩みを抱えている。それに加えて、家のことを妻に任せっきりにしていることに申し訳なさも感じているようだ。

そもそも本人が抱いている気持ちを妻に伝えたのかどうかが重要だ。実は、妻は仕事の話をしたいと思っているかもしれないし、「家のことを何もやってくれない」とも思っていないかもしれない。気になっていることや言いたいことを相手に伝えることができないまま、すれ違っている夫婦は多いように感じる。

妻と僕。12回目の結婚記念日を宮古島でお祝い

先月はじめて僕と妻と彼の3人で食事をしてその相談をされた。彼はそこでしたアドバイスを実行してくれているし、教えた本も読んでくれている。ちょうど1週間ほど前にその結果の報告もしてくれた。

自分たちの経験からの助言が、誰かの役に立てたことが嬉しかった。

僕たち夫婦は、100%言いたいことを言い合えていると確信している。互いに気持ちを伝え合えずに関係性に悩む夫婦の手助けをするのはふたりの使命かもしれない、と妻とも話しているところだ。

今の関係性を築くまでに僕たち夫婦にも多くの壁や試練があった。離婚を考えたこともある。それを乗り越えてきた僕たちだからこそ、きっと何かできることがあるはずだ。こうして今自分ができることに取り組みながら、少しずつ豊かに生きる人を増やしていきたい。


▼僕の自己紹介noteです。興味をお持ちいただいた方は、読んでいただけるとうれしいです。

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書き手 えなりかんな
聞き手・編集 サオリス・ユーフラテス

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