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フィンランド映画『ハッチング-孵化-』~抑圧から産まれるものは何か~

久しぶりの投稿です。5月1日日曜日に新宿シネマカリテで観ました。この映画の評判の良さや、ファーストデーということもあり満席でした。

世界幸福度ランキング1位の国のフィンランド映画で、監督はハンナ・ベルイホルムさん。新鋭女性監督でこの作品が長編デビュー作だそうです。

私がこの映画を観に行こうと思ったきっかけは、最近の世界中の映画作品の中には、普段の人の生活の抑圧や我慢を、奇抜なホラーやサスペンス、スリラーというジャンル•アイデアで表現しているものが増えてきているなと思っていたからです。この映画もそんな奇妙な雰囲気を感じてました。

リー・ワネル監督の『透明人間』、カーロ•ミラベラ=デイビス監督の『Swallow /スワロウ』、ジュリア・デュクルノー監督の『TITANE/チタン』。

特に『Swallow/スワロウ』は、主人公の女性の異食症という特徴的な依存症から物語が展開していって、やがては家族や親子とは何かという根源的なテーマへと行き着くところが印象的でした。

(画像参照『Swallow/スワロウ』https://eiga.com/movie/94149/

今回の映画『ハッチング-孵化-』はどうだったのでしょうか。

(見出し画像参照 https://twitter.com/Hatching0415

あらすじ

12歳の少女ティンヤは、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすために全てを我慢し自分を抑え、新体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。
家族に秘密にしながら、その卵を自分のベッドで温めるティンヤ。やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化する。卵から生まれた‘それ’は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていく・・・。

(あらすじ参照 https://gaga.ne.jp/hatching/

私の感想

私は単純に、主人公の少女ティンヤが家族の抑圧を受けていく度に、拾った謎の卵が膨らみ大きくなっていく描写が奇妙で、「何が産まれるのだろうか?」と恐く興味をそそられ、観ていました。産まれたそれはぜひ映画館で観て欲しいのです。

パンフレットには監督や出演者のインタビューが載っており、フィンランドにはホラー映画のプロジェクトが少ないことや、だからこそやりがいがあったと語られていました。

幸福度ナンバーワンという印象は、映画でも母親が異常に執着するSNSでさらに広がっている印象ですが、やはりそのフィンランドにも影の一面があるということが観ていると伝わってきました。

特に印象に残ったシーン

この映画は少女ティンヤと支配的な母親、その2人の描写が多いのですが、父親の描き方も丁寧であったところが印象的でした。

映画の序盤で、父親がティンヤに「お母さんは本当に魅力的な人なんだよ」と語りかけるシーンがありますが、明らかに無理をしている様が伺えます。母親が隠れて不倫をしていることにも我慢をしている父親、そんな父を切なく思うティンヤ。

ティンヤを苦しめているのは、厳しい新体操の練習だけでなく、家族の複雑な関係性も含まれているということが、観る人に共感を生んでいます。

どんな人に観て欲しいか

私はこの映画、どんなに嫌なことや辛いことがあっても、大切にしているものがあるという人に観て欲しいです。

映画の中のティンヤは夜、謎の卵を大切そうに包み込む時間こそが癒しとなっていて、産まれた存在がどうなるかは関係なく愛情を注いでいます。

日常の中でも、周りの人には言っていないけど、頑張っているものがあったり、大切なものがあったりという人は、それがどんな成果に繋がるかは未知数だと思います。それでも今は大事なもの。

意外にもこの映画、観ている人にそれを気付かせる要素があるホラーです。

ぜひお薦めします🎬

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