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【Q-T】 600 HIPHOP VINYL RECORDZ -CLASSICS OF THE 90’s n 00’s- BY SHOTAHIRAMA

Q-


Q-Tip “The Renaissance” (2008)

ユニバーサルモータウンからリリースされたQ-Tip2枚目のソロアルバム。99年にリリースされたファースト以来9年振り、さらには当時ATCQが再結成した事もあり大きな話題と期待の中で発売。キーボードにはロバート・グラスパー、ベースにデリック・ホッジ、ギターにカート・ローゼンウィンケルと現行ジャズの一流プレイヤーがずらり。歌うはノラ・ジョーンズにディアンジェロなど。グラミー賞みたいな1枚。

Que. D “Still Bangin’” (2001)

さすがに誰も知らないであろう、WheatbreadとかいうデトロイトのローカルラップクルーそのメンバーであったQue. DがロングビーチのUp Above Recordsから単独リリースした12インチ。プロデュースはデトロイト神Jay Deeで、バックサイドにもWaajeedと、まるでいつかのSlum Villageが全面協力したような両サイド共にコズミックな上ネタのデトロイティッシュヒップを堪能できる。厳かな雰囲気を創り出すシンセと、天からのお告げのような女性コーラスで持っていくWaajeedサイドのスピリチュアルなトラックが好き。インストもめちゃくちゃ良い。

R-


Raazda Rukkuz “Da Chronic Asthmatics” (1993) 

DITCからDiamond Dをプロデューサーに迎えいれ、さらにはギャングスターを輩出するニューヨークのPaydayからリリースされるなど申し分ないバックアップを受けながらも一発屋に終わるトリオ。唯一のシングルで、表題曲はサックス奏者トム・スコット「Today」で聴けるフルートを使ったジャジンヴァイブスな幕開けだが、呆気に取られるラグドビーツと舌が捥げるほどのラガフロウ系高速ラップでまじでびっくりする。ちなみにバックサイドでは倍の倍に早口なフロウが聴ける。

Rae & Christian “It Ain’t Nothing Like (The Nextmen Remix)” (2000)

Mark RaeとSteve ChristianによるUKビートメイカーデュオの2ndアルバム「Sleepwalking」から、Pharcydeがマイク参加する人気曲をリミックスした1枚。もう少しネタ感も清涼感もあったはずのオリジナルより、ネタ少なめアタック感ゴツゴツマシマシの豚骨ブレイクビーツに仕上げたのは同郷のトラックメイカーデュオThe Nextmen。

Raekwon feat. Ghost Face Killer “Heaven & Hell” (1994)

"ザ・シェフ"こと技巧派レイクウォンのソロデビューアルバム「Only Built 4 Cuban Linx」から最初のシングルカット。同じウータンファミリーのゴーストフェイスをシンメに、シル・ジョンソンの「Could I Be Falling In Love」頭出しすべてのオケをまんまピッチダウンして使った実にウータンらしいスローでダークなメロウソング。まぁネタがいいからなぁ、胸に沁みるめっちゃいい曲。エモソウルプロダクションは勿論RZA。バックサイドのインストでたっぷりと味わって欲しい。この曲は映画『Fresh』にもサントラ提供されている。

Raekwon feat. Tony Starks “Criminology” (1995)

ウータンきっての技巧派レイクウォン、ソロキャリア2枚目となる12インチもデビューシングルと同じ仲良しシンメ・トニー・スタークスaka Ghost Face Killerとのデュエット。いつもいっしょ。60年代のR&Bグループでアレサ・フランクリンやプレスリーのバックを務めていたスウィート・インスピレーションズの「Why Marry」をネタに総長RZAがトラックメイク。

Rahzel “All I Know” (1999)

フィラデルフィアからThe Rootsの初期メンバーだった事でも知られるヒューマンビートボクサー・ラゼールによる12インチシングル。ジャズ・ハーピストのDorothy Ashby「The Windmills of Your Mind」で聴ける麗かなハープリフをアクセントに使うトラックはなんとPete Rockによるもの。それ以外、ラップは勿論、スクラッチや恐らく部分的なビートもすべてラゼールの人力だというからすげぇよなぁ。

Ram Sqad Raw “Keep It Real” (1995)

フィリーヒップの入門編にどうぞ

フィラデルフィアの4人組が唯一飛ばせたヒットシングルはみんな大好きグローバー・ワシントンJr「Just The Two Of Us」を使った鉄板熱々の大ネタメロウ。同ネタで最も有名なスミフンの「Wrekonize」ではビル・ウィザースの声も使ったりと細かいトラックメイクだったのに対し、こちらはグローバーのサックスパートも定番のベースラインもとにかくワンループでひっぱる荒削りフィリースタイル。騒いだマイクリレーも悪くはないんだけど。

Da Ranjahz “Daily Basis” (1996)

Jay-Zの98年作品「Vol.2… Hard Knock Life」に収録されている楽曲「If I Should Die」に参加してる実力派

ジャケに映るゴリゴリブルックリン3人組(実体はHaphとWaisのデュオ)からは想像できないほど爽やかメロウなネタが揺蕩う実はこう見えてシティボーイ寄り12インチ。清涼感あるコーラスは70年代のフュージョン系ジャズグループCrusaders「Street Life」からの引用、それでもラップだけはゴリゴリブルックリン。アンバランスさこそヒップホップ。プロデュースはJay-ZとのシンメでおなじみJaz-OことBig Jazというから納得。裏面はFoxy BrownのいとこClark Kentがリミックス。

Ran Reed “The Introduction” (1999)

ニュージャージー州パターソンのMCが、ブルックリンはフラットブッシュからのユニットCella Dwellasと、バトルエムシーMoonie D(99年のRZAとのMCバトルは必見)を従えてリリースしたNick Wizプロダクションクラシック。電話の発信音が組み替えられたような薄気味悪いオケと、明方の小雨のように美しく静かに舞うハイハット。通称Cellar Sounds(ニュージャージーにある彼のスタジオThe Cellarが由来)と呼ばれる芸術レベルのトラックメイクはアングラキングNick Wizが成せる技、本当に本当に大好きな1曲。あと、そもそもRan Reedの声も好き。

Rascalz “Cant Relate” (2000)

同じカナダアングラでも、ジャジンでコンシャスなトロントサイドよりは遥かにバウンシーでギャングスタノリが強い印象のカナディアンウェッサイなバンクーバーからRascalz。本作はフロントをBeatnutsのJujuとPsycho Lesがマイクジャック、ギターリフがド派手なプロダクションもPsycho Les。そんでもってバックサイドは我らがAlchemist。こっちはこっちでバイオリンかなんかをかるーくチョップしてアクセントにしてみた、いかにもなアルケミスト節炸裂のかっつんかっつんブーンバップ。これめっちゃ好き。お腹いっぱい。

Rasco “Heat Seeking’” (1998)

Realistic, Ambitious, Serious, CautiousとOrganizedの頭文字から成ってるらしい。それはいいとして表題曲そっちのけでA2の「The Unassisted」がやばめ。もとは97年にストーンズスローからリリースされた、レーベル初期を代表する曲なんだけど、この12インチで聴けるのはRob SwiftとRoc Raidaという世紀のターンテーブリストふたりがミックスしたバージョン。装飾ゼロ、ばちぼこブレイクビーツがきっつきつにタイトでオリジナルよりかっこいい(そもそもオリジナルもかっこいい)。バックサイドにはKutmasta Kurtミックスもあり。名曲だね。

Rasco “Take It Back Home’” (1998)

カリフォルニアはサンマテオからのストーンズスローエムシーがPlanet Asiaとバトる表題曲A1(ビートルズのサポートでも有名なキーボード奏者ビリー・プレストン「Books and Basketball」のホーンネタ)もいいが、A2の「Major League」がもっとかっこいい。こちらはDefariとEvidenceがマイクリレー、スクラッチはDilated PeoplesからDJ Babuと、さすがは西海岸なメンツ。

Rasco “The Unassisted” (1997)

サンフランシスコのベイエリア、サンマテオから初期ストーンズスローを支えた屋台骨のひとり、ラスコー最初の12インチ。ヤバすぎるフロウに腰砕けるが、なによりこのトラックでしょ!1音だけしかネタ?ネタですらない、ワントーンだけを差し込んでくるストロング9%系ビーツ。今、ここまで強気のスタイル出来るかしら。Beat Junkies界隈ともつるんでいた名ターンテーブリストFanatikのブレイクビーツはマスト。

Rasco “What It’s All About” (1998)

これぞキックとスネアの西海岸詩。コストコ風のラスコーロゴが可愛いのに、ぶっといガッツンガッツンのダウンビートが男臭い、それでいてサグくない爽やかウェッサイでボーダーの半袖なにこれ欲しい。PBW主宰ストーンズスローの初期カタログにハズレはないのよ。

Rasco / Flii “Gunz Still Hot / Stomp” (2000)

ストーンズスロウ時代のRascoとはそりゃ趣きも情緒もまるで違う訳で。PBWの手を離れ、自身の作品をメインにリリースするセルフレーベルPockets Linted Entertainmentより00年発売のダブルサイダー(バックサイドはFlii)。01年にリリースされるセカンドアルバムには本作の表題曲「Gunz Still Hot」にEd O.GとReksを従えたリミックスが収録されているのだが、そちら側が断然人気。

Rashad & Confidence “Desires” (2019)

ハネるキックとビタっと着地するスネア、そしてまるで焚いたお香が優しく揺らいでは甦る記憶のような、なんだろ、眼頭が熱い極上の上ネタ。やたらとエモく気持ちが浄化される。センチメンタルなピアノフレーズと、良きタイミングで入るヴィンテージサウンドのギター、その繰り返し。寄せては返すソウルフルでオーセンティックなサウンドプロダクションに終始お手上げ。まじで最高にかっこいい。しかもよーく聴くと鈴虫が鳴いてる?なにこの情景。前に来たことがあるのかも。現行ブーンバップで今最も勢いあるボストンのトラックメイカーConfidenceが、ブルックリンエムシーRashadを引き連れた名盤「The Element of Surprise」以来、8年ぶりのタッグでこの完成度。もう、ほんと凄い。大好きなフィーリングがここにある。

Ras Kass “Anything Goes” (1996)

東海岸を代表するリリシストがNasなら、西海岸を代表するリリシストがこのJohn Austinことラス・カス。彼のデビューアルバム「Soul On Ice」から最初の12インチカット。ひたすら語らうラップに息つく暇もないが基本的にはメロウで、シリアス過ぎずかっこいい塩梅。バックサイドはMannishの「Tasha’s Room」を手掛けていたBirdがプロデュース。ちなみにRasはXzibitとGolden Stateというグループを組んでたんだよね。

Ras Kass “Soul On Ice Remix” (1996)

西のリリシスト、ラスのデビューアルバム「Soul On Ice」から表題曲をDITCのDiamond Dがリミックスした1枚。ジョージ・ベンソン「Shape of Things To Come」ネタを使ったオリジナルをより微睡ませた怪奇系のストリングスプロダクションに仕立てあげ、まるで違う曲に。催眠術みたいなギターはDavid Axelrod「The Mental Traveller」から。ジャケ写が大御所B+先生撮影によるものでかっこいい。

Ras Kass “Won’t Catch Me Runnin’” (1994)

初期ラス屈指の名曲は、12インチオンリーで、95年のファーストアルバム「Soul On Ice」にも未収録。イギリスのSade「Cherish The Day」で聴ける一節"Won’t Catch Me Runnin’〜"を早回しで差し込み、下地にはロイ・エアーズ「Vibrations」をうっすらと敷いた渋め系メロウ。プロダクションはLAデュオMannishの名曲「Tasha’s Room」を作ったBirdによるもの。

Raw Produce “Cycles / Make A Mark” (1995)

ATCQ「Excursions」ネタ使い(Q-Tipの一節"Don’t you know that thing go in cycles?”をフックで)に、アナログライクなエレピが奏でる凛として透き通る清澄系メロディー、コンシャスなラップにジャジンなヴァイブス、とにかく全部の要素がスマートにハマる。センチメンタルを深くエグるボストン産・美メロヒップマスターピース12は彼等のデビューシングル。なお、メンバーのCadenceは2013年に他界。

Raw Produce “Mister Dope America / Up All Night” (1998)

群雄割拠の90sボストンアングラで、ジャズヒップ側のファンにはわりかし名の通るPitchとCadenceによるユニットRaw Produce。自分達で運営するセルフレーベルInsomniaからリリースした3枚目の12インチは、アングラクラシックと呼ばれる「Cycles」のような彼らの初期シングルに比べればインパクトも印象も弱く薄いが、それでもバックサイド「Up All Night」はその溢れ滴る美メロとジャジンバイブスでファンならずともマストリッスンな完成度。特別、B2のインストはめちゃくちゃ良い。ボストンっぽいナイスムードなトラックで好き。

Real Live “Real Live Sh-t” (1995)

Lords Of The Underground初期作品をプロデュースした事で知られるニュージャージーの天才ビートメイカーK-Def(マーリー・マールの弟子だね)がMC Larry-Oと組んだユニット。仄暗いストリングスネタがまるで立ち込める霧のようで、遠くからNasの「It Ain’t Hard To Tell」が一瞬聴こえる。ホラーコア的なインストはまじで使える。

Reflection Eternal feat. Mos Def&Mr.Man “Fortified Live” (1997)

若きタリブ・クウェリがオハイオ旅行の最中に出会ったのがエムシーHi-Tek、さらにタリブの高校にいた天才Mos Def、偶然か運命か引き寄せられるように集うとこんな傑作が生まれます。Rawkus史上最もアイコニックなトラックじゃないかな、ホープトン・ルイスの「Tom Drunk」ネタを使ったロックステディなヒップホップ。サンプリングの奥深さを学べるね。

Reflection Eternal / Shabaam Sahdeeq feat The Cocoa Brovaz “On Mission / Every Rhyme I Wrire” (1999)

Rawkusの「Sound Bombing」シリーズが全5タイトルで発表した”The Singles”からパート3。安定安心のTalibとHi-Tekコンビも良いが、なによりバックサイドのNick Wizプロダクション!ネタは不明だがオルガンをチョップしまくったミッド90ズなコード進行が好き者には堪らない。ShabaamとCocoa Brovaz(スミフン)が歌うのも良いが是非インストを聴いてほしい。ちなみにサブスクでNick Wiz「Cellar Instrumentals Vol.6」内にて聴けるので通勤中にでも是非。

The Regiment & Confidence “Yours and Mine” (2013)

NJのインディヒップレーベルIll Adrenalineから看板アーティストのフィリーズトラックメイカーと、アポロ・ブラウンプロデュースで知られるデトロイトの2MCがタッグを組んだ限定400プレスの45。てかConfidenceのトラックな!9th Wonderインスパイア系の美メロソウルネタチョップに、バネ感半端ないドラムブレイク。これぞネオブーンバップ、これが現行ブーンバップ。

Richy Pitch “The Green Lanes EP” (2003)

ブルックリンSeven Headsレーベル初のUKトラックメイカーとしてアングラ好きには馴染みのあるRichy Pitchだが、本作では故郷ロンドンのレーベルAbove The Cloudsからリリースした1枚で彼の代表作群とはやや違う趣が感じられる作品。収録されている3曲すべてがクラブテイストの中、スパニッシュギターにダンスホールなリディムが雪崩れ込むクロスオーバーなA2にApani Bがエムシーで参加してるので、この曲だけがギリ、強めにヒップホップ感を保っている。Richy特有のジャズ〜ワールド系をミックスするセンス良きバランス感覚が面白かったりするんだが。

Richy Pitch “Day To Day” (2003)

El Da SenseiやJ-Live、Mr.Complexなどアングラシーンにはお馴染みのMC陣をリリースしてきたニューヨークSeven Heads (7Heads)レーベルから、初のUKアーティストとしてリリースされたトラックメイカーRichy Pitchの12インチシングル。ジョビンと共にボサノヴァ・ミュージック発展に貢献したブラジルの作曲家ヴィニシウス・ヂ・モラレス「Testamento」から優美なギターカッティングを使った華やかなリゾート系トラック。マイクを握るはPolyrhythm AddictsからApani B姉さん、こんなの彼女しか歌えないでしょ。ジャズヒップ好きはマストね。

Richy Pitch “Live At Home” (2002)

最初に聴いた7Heads作品。店頭でマイメン石井さんがかけてて秒で好きになったやつ。ロンドンのトラックメイカーがお馴染みの目覚まし音(何故か毎回目覚まし音を入れ込む)と、ブラジルネタ満載で作り上げたリゾート風リラクシンなジャズヒップアルバム。MPBクラシック、トッキーニョとヴィニシウス「Testamento」を使ってクイーンズのApani B姐さんに歌わせたA3はマジで名曲。他楽曲にはEl Da先生に、J-LiveやMr. Complexらが参加。

RJD2 “Exotic Talk” (2004)

MHz(The Megahertz)クルーのメンバーでもあるサンプリングの魔術師RJD2が、04年にDef Juxからリリースしたセカンドアルバム「Since We Last Spoke」より12インチカットした1枚。ラウドなギターリフに、複雑に入り組んだデジタルコラージュを施したハードエッジなアブストラクトサウンドが楽しめる。スコット・ヘレンのPrefuse73名義「Security Screenings」やSavath&Savalas名義「Apropa’t」などのジャケ(どちらもWarp Records)をデザインしたMaya Hayukという女性アーティストが本作のジャケ写真とデザインを担当している。なるほどな。

RJD2 “June” (2001)

オハイオ州コロンバスを拠点にしていたクルーで、ボビートのFondle’Emからリリースしていた事でも知られるMHz(The Megahertz)のトラックメイカー。当時はネクストDJシャドウなんて呼ばれていたほどで、本作でも聴けるブレイクビーツを主体にドラマチックな旋律のストリングスを雪崩れ込ませるやり口は、確かにシャドウ感あり。ファーストアルバム「Deadringer」からのシングルカットで、ラップしているのは同じMHzのメンバーCopywrite。ちなみに彼のソロアルバム「The High Exhaulted」にも収録されていた楽曲でもあり、カップリングではリミックスが収録されている。El-PのDef Juxから。

Rob-O “Holy War” (1996)

ニューヨーク州ウェストチェスター郡(俺と同じ地元。彼等はマウントバーノン)のクルーInIから、Rob-Oがソロでマイクを握った1枚。Rob-Oにピートロックを掛け合わせた一連の諸作品をリリースし続けるSt. Nick Entertainmentから。残念ながらピートロックのクレジットは無いが、針を上げても余韻が残る奇妙なアコギネタのワンループにホラー感ありで良き。闇堕ちブーンバップ。もしかしたらピートロックかも?

Rob-O “Playing God” (1996)

ピートロックの実弟Grap Luvaが在籍するInIから、Rob-Oがソロマイク。そしてピートロがプロデュース。が、本作に関していえばこれが自主なのかブートなのか、レコ屋界隈のみんなもよく分かっていない謎めいた1枚。とはいえ、RnBタイプの女性ハミングと厳かなピアノにシンセっぽいシーケンス、なんだか普通じゃない。めちゃくちゃイル。

Rob-O “World Premier” (1998)

NYマウントバーノンからInIクルーのRob-O、彼のソロ作品は全部持っておいた方が良いね。デニース・ウィリアムスの「I Believe In Miracle」をネタに使ったドラマチックな表題曲はAZやCormegaなども手掛けていたSpunk Biggaプロダクション。裏面はピート・ロックプロデュース。スコティッシュニューウェーブEndgames「Ecstacy」のイントロ部分で流れるシンセにまんまダウンビート這わせてミックスしただけなのにこれが鬼やばい。発明じゃん、なにこのディスコファンク感。すげぇなぁ。

Rob-O “Wunderlust” (1998)

ピートロックワークスでも最高クラスの出来じゃないでしょうか、歌うのはlnlというNYマウントバーノンのクルー(Ras-Gやピートロックの実の弟Grap Luvaが在籍)からRob-O。針を落として数秒後、なんだろ、旅への渇望感みたいな、哀愁感みたいな、夏の夕暮れ感だか、ひぐらしが鳴く感だか、サンセット感でもレイドバックやらにチリンチリン感、なんでもいいけどなんだかとにかく胸が締め付けられるロマンティックなアコースティックギターに震える。僕らのmid90sを凝縮した最強最高のメロウワンループをカラカラに渇いたキックnスネアに這わせて。ピートロックかっこ良すぎる、お手上げや!

Rob Swift “The Ablist” (1998)

西がBeat Junkiesなら、東はX-Ecutuioners(X-Men)だろうか。NYターンテーブリズムを牽引するクルーからこの男。オリジナルverにあたるA1ではタンテ特有のスクラッチ表現は極力抑えているのか、ソリッドなブレイクビーツとアブストラクトなオーケストレーションだけが主となってとにかくミニマルでかっこいい。当時は勉強不足が故に、ターンテーブリストへ勝手な偏見を抱いていたが、淡々とビートをメイクする姿勢に心を強めに打たれたのを覚えてる。

Rob Swift “The Ablist” (1999)

Roc Raidaも所属していたニューヨークのターンテーブリストクルーthe X-Ecutionersから、Rob Swiftのソロアルバム。スキルをひけらかすんじゃない、正真正銘音楽家としての堂々たるヒップホップミュージックが此処に在る。演奏楽器としてのターンテーブルであり、作曲の技法としてスクラッチやカットアップをこれでもかと堪能出来る。A9に同じクイーンズよりファロア・モンチが登場。

Rok One “Certified Superior” (1998)

ジャズやファンク方面で活躍したマルチギタリスト、ジョン・トロペイの「Your’s Next To Mine」冒頭で聴けるギターとピアノのアッセンブルを早回しとフリップで作り上げた軽快なジャズヒップ。歌うRok Oneも、正直この作品以外知らないがなかなかかっこいい。んで、目玉はやはりバックサイドの「Ninety Degrees A Piece」で、Kwest Tha Madd LadからRawkus周辺で活躍するL-Fudgeに、Shabaam Sahdeeqまで、アングラマイカー総出演のパス・ダ・マイクショーは一聴の価値あり。ボビートのFondle’Emより。

Ronny Jordan feat Mos Def “A Brighter Day Remix” (2000)

アシッドジャズシーンを牽引したUKジャズギタリスト故ロニー・ジョーダンがBlue Noteから発表した99年の作品を、レペゼンブルックリン・DJ Spinnaが壮絶スペーシーメロウにリミックス。歌うは我らがモスデフ。ブルーノートとRawkus一味が邂逅した極上の12インチ。夜を使い果たして音に身を任せてこう。

The Roots W/ Roy Ayers “Proceed ll” (1995)

フィラデルフィアから生バンド、カリフォルニアからヴィブラフォン奏者、世代を越えたアメリカンオールスターらが創出する至高のレアグルーブ。其れ即ちクラシック。が、まじで、そんなん全部忘れちまうぐらい、A2収録のBeatminerzミックス「Proceed V」が超絶かっこいい。夜中に突然誰かが自宅の玄関ドア叩いてくるような、ビクっっっとするスリリングなスネアがやばい。ブルックリンがフィリーヒップにかち込んだ瞬間のサウンド。

Roots Manuva “Witness” (2001)

英国ラッパーRoots Manuvaことロドニー・スミスの2ndアルバム「Run Come Save Me」からシングルカットされた大人気盤。ガンぎまりのリバーブ、あまりにダブすぎる音響処理、ラガマフィンなスピット、アシッド直系のブリブリバリバリなベースライン。レゲエとテクノをぶっといジョイントでたらふく吸うルーディーすぎるヒップホップ。バックサイドのレイドバック感もそのテンションの落差に驚く。

Rottin Razkals “Hey Alright” (1995)

ニュージャージーでNaughty by Natureらの弟分として育った彼等(メンバーのディーゼルはNBNのTreachの実の弟)がモータウンのサブレーベルMad Soundsからリリースした爽やかきらきらキャッチーメロウシングル。プロデュースも当然NBN。ネタはIsley Brothersから分離したグループIsley Jasper Isleyの「Caravan of Love」を使用。へーい、オーライライライ、ってこの掛け合い、幸せな気持ちになる曲よね。

Rottin Razkals “Oh Yeah” (1995)

こんなタイトルばっかりだな。ただただご機嫌にオーイェーアーイェーとコーラスでかけあう、タイトルまんまの賑やかメロウな12インチは勿論Naughty By Natureプロデュース。ライオネル・リッチー率いるモータウンバンド、コモドアーズから名曲「Say Yeah」の燻銀グルーヴィンなリフをそのまま拝借。これが病みつきになるもんで、みんなおどっちゃおうよ。

Rough House Survivers “Check Da Back Pack” (1992)

ニュースクール黄金期真っ只中にありながらも比較的マイナーで、知名度もそれほどなくそれでもとにかく曲は超絶ファンキーバウンシーミラクルかっこいいっていう。ニューロシェルトリオが放つ記念すべきファーストシングルはまさしく隠れた名盤。ネタはJBと並び称されるファンクの祖、Dyke & The Blazers「Broadway Combination」をピッチダウンして使ってる。ベースラインやば。

Rough House Survivers “Straight From The Soul” (1992)

ピート・ロックを相方に持つ男C.L.SmoothがプロデュースしたA2や、Brand NubianからGrand PubaがプロデュースしたB5、同じNubianからSadat Xがゲストラッパーで参加したB1などなど。ニューヨークはニューロシェル(Nubianと同じ)のマイナーグループにこれだけのメジャーアーティストが参加するのも92年とかいう時代だったからかなとか知らんけど。なんにせよ古き良きニュースクールだし、僕が何年か前にリリースしたアルバムタイトルはこっから拝借。

The Rugged Assasinz / Gifted “Prepare For Mortal Combat / Instrument Of Death” (1995)

スタテンアイランドのJ.D.I.R. Productionsを親に持つ、Discogs上はサブレーベル扱いになるShaolin Styleからリリースされたなんとも沈んだ暗く浮かないハードコア12。アングラ好きには馴染みのあるラベルだが、肝心のRugged AssasinzやらGiftedを詳しく知る人は多くない。ウータンをモデルにしたプレステ用格闘ゲーム(ちなみにR18だそうで)も、Shyheimのシングルも何故か皆Shaolin Styleと名付けていることから絶対的にWuの意志を継いでいる連中である事は間違いない。まず、音がそれでしかない。だから、それだけでよい。

Rumpletilskinz “Attitudes” (1993)

ごっっついキックにドラム缶みたいなスネア、いなたい枯れたホーンをワンループして、フックは大合唱とこれぞまさに1993年。バスタライム率いるLeaders of the New Schoolのフックアップもあり大ブレイクしたいところだったが、アルバムは1枚でシングルが2枚で活動期間も3年。1、2、3エムシーでワンディージェーの哀愁系ファンキンニュースクールがそれでも好きな人手ェあげて一緒に大合唱しよ。

S-


Saukrates “Brick House” (1997)

同じトロントにてカナダ産アングラを代表するMCがMathematikだが、彼が在籍するDown To Erfがリミックスを手掛けた楽曲「Hate Runs Deep」を収録した12インチが激しくレアというのを覚えておこう

カナダはトロントのアングラヒップを牽引するラッパー・ソクラテスにシカゴの帝王コモンが参加した極上ジャジン「Play Dis」はこの12インチに。リミックスにはコモンの側近NO I.D.が参加、さらにはブロンクスからDITCのOC、ブルックリンからMasta Aceが参加した「Rollin」が実はめちゃくちゃ哀愁系メロウな名曲っていう。2万枚売れたとかいう超絶大ヒットヴァイナル。

Schoolz of Thought “Rationalize” (1999)

黒人人口が多いフィラデルフィアでフィリーズソウルなるものが栄えるのは意外にも70年代に入ってから。その中心地となったシグマサウンドスタジオで94年にRootsがレコーディングしたことからフィリーズヒップなる動きが注目されたという解釈でいる

ペンシルバニア州フィラデルフィアの3人組を地元の大スターバンドRootsからQuestloveが完全プロデュースしてみた1枚。多分誰もが一瞬、あれ?プレーヤー壊れた?かと思うほどのスタイラスノイズが入るが、実はこれもトラック。プチプチチリチリ入るノイズすら次第に心地良くなるサイレントなジャズヒップ。バックサイドのエレピが優雅に揺蕩うスムージーヴァイブスもたまらん。フィリーズアングラの、そしてジャズヒップの隠れた名曲。

Scientifik “Criminal” (1994)

マイナーヒップ界隈の今は亡きキング・オブ・サグMC。生前唯一のフルLPには超絶クラシック「Jungles Of Da East」が収録。DITCのBuckwildとDiamond Dや、さらには同郷ボストンからEd O.Gに遂にはRZAまで(Prince Rakeem名義)オールスター級のプロデュース陣が参加。煙たいトラックにいなたいラップ、サグいヒップホップは多分ずっとマイナーのまま。でもそれでいい。(ブート盤出回ってるので皆さんご注意を。オリジナルは"MASTERDISK TD"っていう刻印があるからね。ジャケがすでにブートっぽいけどね)

Scientifik “Jungles Of Da East” (1994)

Ed O.Gらと活躍したボストンの伝説的MC・故Scientifikが残したマイナーヒップ名作。とにかくまじでかっこいい。スローで煙たい、クールでいなたい、もっくもくなダウンビートにツバ吐くようなラップ。メロウなジャズネタはピアニストのラムゼイ・ルイス「My Love For You」で、同郷のグループVinyl ReanimatorsからDJ Shameがトラックメイク。バックサイドの「Lawtown」はEdプロデュース。ボストン勢総力戦のボストンマスターピース。

Scienz Of Life “Powers Of Nine Either” (1996)

プロデュースはブロンクス、Slum Brothers及びM.D.S. ProductionのメンバーDon Qということがまず熱い。まじかー、かっこいいわぁ。艶消しのマットな感じ?光沢感一切無い感じ?燻したような、跳ねも響きもない密閉されたようなキックとスネア。ハイがえぐられた曇ったモコモコのジャズネタ。これこそ俺が大好きなmid90sのブーンバップビーツよね。隅々までかっこいい。中身はニュージャージーのロビンソン兄弟ID 4 Windsことマイケルと、現在はソロでも活躍するLil’ Sciことジョン、そしてInspector Willabeを加えたBobbito印のトリオ。そんな彼等によるFondle’Emからのデビューシングル。ちなみに彼等は後にアトランタへ移住し、Company FlowのBig Jussが運営するレーベル兼ショップSub Verse Musicからリリースを続け、現在もBandcampから精力的に新作を発表している。リスペクト。

Scienz of Life “Scienz of Life (Metaphysics 2030)” (2001)

かのBobbitoが設立したNYCアングラのターミナル的レーベルFondle’Emから96年にデビューシングルをリリースしているニュージャージーのトリオ(メンバーのSciは現在のJohn Robinson)。彼らが97年に先のレーベルよりリリースした作品「Scienz of Life (Metaphysics)」の続編?ニューバージョン?2030バージョン?的な12インチをSub Verse Musicから。表も裏も基本レイドバックなピアノループに決して昂ぶる事のない語らいで、生温くはならない程度で微睡んだようなヒップホップに身も心も委ねたくなる。バックサイドにはMF Doom参戦。

Screwball “H-O-S-T-Y-L-E” (1999)

これぞクイーンズなサグラップ、ジャケもサグ、ハイドラ系ビートもサグ、顔面もサグ、とにかくサグ。みんなでサグっぽく"H-O-S-T-Y-L-E"と合唱するフックがめっちゃサグい、めっちゃかっこいい。ギャングスターのプレミアに見出された4人組によるハードコアな12インチ。バックサイドには同じクイーンズからカポン(Capone N’ Noreaga)と、ハイドラレーベルからGodfather Donが参加。

Scum “Scum Live / Slugfest / Takin’ No Shorts” (2000)

ボストンのジャズヒップグループElectric Company(Electric:)からトラックメイカーInsightがソロマイカーT-Ruckusと組んだユニット、本作が唯一のシングル。Electric:好きにはお馴染みのブーンバップなジャズヒップからはだいぶ距離を取ったハードコア寄りなトラックメイクが新鮮なうえ、このユニットではしっかりとマイクも握るフル回転のInsightが堪能できる。Mr.LifやReksなどを輩出するボストンアングラ代表Brick Recordsより。

Self Scientific “Live N Breathe” (2005)

94年にLAで結成されたデュオで、メンバーのDJ KhalilはSoul Assassinsの一員。かつてはNumbskullsという名義でIce Tの家でデモを録っていた過去もあるが、本作はサイプレスのDJ Muggsプロデュースで00年代の西海岸アングラを象徴するサウンドに。バックサイドには南部からUnder Ground KingzのBun Bが参加。

7L & Esoteric “Def Rhymes / Headswell / Learn From The Druid” (1998)

ブーンバップと呼ばれて飛び出す筆頭主。ウータンInspectah Deckを召集したスーパーグループCzarfaceで今もなお第一線級のアングラマインドを誇示する我らが7LES(ビートメイカー7L、エムシーEsoteric)。表題曲はザ・カウンツ「At The Fair」から反則級のギターリフをループ、隙間で生まれるタメから跳ね上がるブーンとバップが凄まじくロウファンク。プロデュースは同じボストンからビーツクルーVinyl Reanimators。

Shabaam Sahdeeq “Sound Clash” (1998)

DJ Spinnaと共にPolyrhythm Addictsの一員として活動していたブルックリンのソロマイカーがRawkusから放った12インチ。フロントはNick WizがプロデュースでCellar Sounds好きはたまらないはずだが、今作に関してはなんといっても盟友Spinnaプロデュースのバックサイド。フィルターでふにゃふにゃに溶けたトラックがなんとも変化球だが、雪崩れ込む複数名のエムシーらをよーく聴いてると、デトロイトから若かりしEminemが。エミネムがひとり凄すぎ。

Shadez Of Brooklyn “How It’s Done” (1998)

写真はバックサイドを撮ってしまった

Finsta Bundyと同じブルックリン北部の工業地域Bushwickから、Beatminerz一派によるアングラクラシック。注目はA2の"Paradise"で、みんな大好きシルヴァーズ「Fool’s Paradise」コーラスネタを使ったスロービートないかにも東な、煙たくて暗いドープトラック(Heltah Skeltah好きにオススメ)。プロデュースは当然ビートマイナーズ。

DJ Shadow “What Does Your Soul Look Like” (1994)

ジョシュ・デイヴィスことDJ ShadowがMo Wax「Endtroducing」期に残した32分間4部構成にも及ぶ魂の超大作アブストラクト絵巻「What Does Your Soul Look Like」を4パートすべてコンパイルした12インチシングル。ミステリアスでメランコリックなメロディに、悲壮感漂うダウンテンポ。作り手の姿がまるで浮かんでこない、淡く霞んだ所在不明の音楽は新次元のヒップホップを提示してくれたとセンセーショナルな評価を受けたのは今から、30年前ぐらい。

DJ Shadow & Cut Chemist “Brainfreeze” (1999)

カリフォルニアのディギンキングス2人がセブンイレブンの制服を羽織り(撮影はB+)、ファンク、ソウルにロックからジャズまでレアな7インチオンリーで52分間ものミックスプレイを収録した1枚。当時は各ツアー会場とCAのショップのみでしか買えなかった1枚も、今や星の数ほどあるブート。Marlena Shawの「California Soul」をはじめて聴いたのはこのミックスだったなぁ。

DJ Shadow/Q-Bert “Q-Bert Mix Live!” (1997)

カットアップやらアブストラクトやら、ターンテーブル史上最もオルタナティブなトラックメイキング(かつエポックメイキングな)を披露してきた奇才DJ Shadowのあの曲この曲いろーんな曲、もう1人の鬼才ターンテーブリストQ-Bertが嘘みたいなスクラッチ&ミックスで再構築してみせた贅沢なマッチアップが堪能できる1枚(しかもライブミックス)。ジャケは"ヒップホップ"名付け親・アフリカバンバータの「Death Mix」を模したもの。

Shamus “Tight Team” (1997)

発砲音みたいなスネアと小雨みたいなハイハットで、仄暗いオーケストラと哀愁感強めの旋律系ピアノで。終始盛り上がりも高揚もしない、とにかく静かなヒップホップで。プロデュースはブロンクスのアベンジャーズDITCからBuckwild、マイクを握るのは同じブロンクスからShamusとゲストにFlu。 個人的Buckwildワークスのトップ10に入るやつ。

Shanrock “Buy My T-Shirt” (2003)

デトロイトのジャズヒップクルーStarving Artists Crewが地元のエムシーShanrockの12インチに参加した案件。クレジットみたらどうやら、フロントサイド3曲目「Provocative」をSACのリーダーSPがプロデュース、その他メンバーも全員マイクリレーに参加してる。この曲だけでも充分聴けてよかったぁなんて思ってたけど、わりかし他もSACぽくてファンはチェックしとくべき。

Shyheim “This Iz Real” (1996)

ヴァージニアのIll Biskits「A Better Day」でも触れたが、鉄板ネタのSurface「Closer Than Friends」

この曲すげー好きなんだよなぁ。デビュー時は若干13歳とか、最強子供ラッパーとして声変わり前からウータン周辺に可愛がられていたシャイヒームの声変わり期12インチ。80年代にヒットしたニュージャージーのR&BグループSurfaceの「Closer Than Friends」をまんま使ったフックがめっちゃくちゃかっこいいメロウトラック。ほんと好き、歌いたい。トラックはUMC’sを手掛けたりしていたRNS。バックサイドの「Jiggy Comin’」でのフックにて"ファックザポリース"って歌う声変わりの子供に少しゾッとする。

Shorty Long “Shorty’z Doin’ His Own Thang” (1994)

ビートはノタノタしてるのにベースラインはやたらファットでホーンがダブダブに飛んではディレイして消えて、ってローフィネやん!マイナーなブロンクスエムシーを天下のLord Finesseがハードコアプロダクションで傑作をプレゼント。なんだろ、スロービートもかっこいいんだなぁ、ローフィネは天才だな。Diamond D「You Can’t Front」で聴けるSadat Xの声をスクラッチ。

Shorty Long “You Know It’s Good Baby / Let’s Get At It…” (1996)

Lord Finesseが「Funky Technician」でタッグを組んでいたDJ Mike Smoothによるプロデュース。ブギーダウンブロンクスエムシーShorty Longの2ndシングルは鍵盤1音階を2回と1回叩くだけのイルシットネタ。それでいてくぐもったブーンとバップ。ファンキーさ皆無の超ド級のミニマルヒップ。A3のインストはまぁじでかっこいいから是非。

Show & AG “Next Level” (1995)

ロードフィネスやDiamond Dに故Big L、それから僕も大好きなBuckwildなどを擁するブロンクスの人気クルーD.I.T.CからShowbizとAGが組んだスペシャルユニット。ウェス・モンゴメリーの「Angel」で聴けるいなたいギターをループさせたサンプリングが劇的にかっこよい。裏面で聴けるプレミアのリミックスがやばいよ。

Siah “Repetition / Pyrite” (1997)

アルヴォ・ペルト「Fratres」ネタのスペーシーな表題曲も最強だが、こればっかりはバックサイド。ジャジンなウッドベースが通しネタなのに、上ネタとビートの転調が繰り返される意味不明なクレイジートラック。メイクするのはMudfoot名義だった若かりしAlchemistだぜ。マイクするのはYeshua daPoEDとのユニットでご存じSiah。Fondle’Emのアブストラクトサイドだな。

The Silent Lambs Project “Comrade” (1998)

フルートネタの良質ジャズヒップとして、このジャケを頭にインプットしておこう。大体安めのコーナーに埋もれてる

シアトルでそれぞれ別々のグループで活動していたエムシー2人がユニットを組んだその名も”羊達の沈黙”プロジェクト。ジャズオルガン/キーボード奏者チャールズ・アーランドの「No Me Esqueca」で聴けるDave Hubbardによるフルートをループ。これがなんともアブストラクトな世界観を作って、一味深みのあるジャズヒップに。Bedroom Produksionz(またの名はBlack Anger)からDJ Sayeedがトラックを、Kendu ShabazzがKendo名義でラップ参加。とにかくフルートネタではめっちゃ味の濃い1枚。レーベルはK Records。

Sir Menelik “Physical Jewels” (1997)

ブルックリンのアングラエムシーが後の05年に自身のレーベルからリリースするアルバム「The Einstein Rosen Bridge」へも収録する人気メロウトラックを、Rawkusから12インチで。バックサイドには、なにやらこの時期のMenelik作品にはほぼ顔出ししてるKool Keithがaka Dr. Octagonという表記にてラップとキーボードで参加したミニマルファンクが聴ける。これがまたかっこいいので、両面使える良き1枚。

Sir Menelik aka Cyclops 4000 “Space Cadillac” (1997)

Scaramangaてな名義でも知られてるブルックリンラッパーが、ウルトラマグネティックスーパーミラクル大先生クール・キースを迎えたスペーシートラックな1枚。限られたミニマルな空間に鳴り響く選りすぐりの未来派音響、耳から離れないベースラインは最早SF、それでいてプリセットみたいなマシンドラム。この感じはあれよね、カンパニーフロウよね、とか言ってるとバックサイドでEL-P登場。かっこいいぜ。

Sir Menelik aka Cyclops 4000 “Space Cadillac Remix” (1999)

97年にフィーチャリングKool KeithでリリースされたラッパーSir Menelik本人によるセルフメイクトラックを、99年にDJ Spinnaがリミックスしてリリースのが本作。これはこれでスピナらしいスペーシーファンキンなトラックに変身していて、スピナファンはマストなアイテム。カップリングではEl-Pメイクの「Game Time」が聴ける。勿論Rawkus。

Slum Brothers “Fool’s Paradise” (1997)

70年代に一世を風靡したアメリカ西海岸のコーラスグループ・シルヴァーズ「フールの楽園」をネタにした12インチ。Shadez Of Brooklynやスチャダラなども使っていたキラーサンプルをシックにヒップにそしてアングラに決めたブロンクス最下層ユニットは彼等の3枚しかないディスコグラフィーで最も入手困難な1枚。勿論再発。

Slum Brothers “Stop Fronting” (1996)

かつてはM.D.S. Productionとしてミドルタイムに活動していたReggie RegとKool Joe、トラックメイカーDon Q、そして後にO Da Addictを加えた4人から成るブロンクスクルーがSlum Brothers名義で放った紫ラベルの大傑作。所謂90’sアングラに傾倒するヒップホップコレクターのマストヴァイナル。ワンフレーズのピアノが儚くワンループ(元ネタ不明)、硬質でしなやかなキックとスネアのバラード、悶絶級のミニマルヒップは終始無双状態。The New Birth「Keep On Doin’ It」からのブレイクを使ったバックサイドが世間的にはクラシックらしいが。

Slum Village “I Don’t Know” (2000)

デトロイトが産んだスーパースター・Jディラ率いる初期スラムヴィレッジに、フィラデルフィアからJazzy Jeffがスクラッチで参加した名曲。JBが「Make It Funky」冒頭で喋る掛け合いの中にあるフレーズ” I don’t know”をアクセントにスタートすると、ブラジルのギター奏者バーデン・パウエル「e isso ai」が優雅に流れる。この極上メロウトラックに何万回身体を揺らしたことか。あまりにも有名な神曲に最敬礼。

Slum Village “Climax” (2000)

2MC1Producerの3人編成で96年にデトロイトで結成。09年に亡くなったBaatinと、T3をメインエムシーに、J Dillaは基本トラックメイク・プロダクション面で所属している(時にエムシーとしても楽曲に顔を出すことも)。01年にDillaがソロ活動専念の為にグループを離脱すると、Elzhi やDillaの実の弟Illa Jが加わるなど流動的にメンバーが変わっていく。Dillaが亡くなった現在SVはT3とYoung RJの2人。これが大まかな流れだろうか

当時は比較的マイナーだったミシガン州デトロイト産ヒップをアメリカ全土に知らしめたグループがこのスラムヴィレッジ(デトロイトといえばエミネム、なんてのはこれ以降の話)。当然その原動力となったのはリーダー格だった若かりし頃の故Jay DeeことJ Dilla。天才、奇才と謳われた彼の才能を遺憾無く発揮させた本作はクラシックと評され"煙たくてもなおメロウ"なグループ特異の燻製サウンドが楽しめる。田我流が「ゆれる」MV内でほんの一瞬手に取るCDはこのスラムヴィレッジ。

Smif-N-Wessun “Wontime” (1995)

スミフンを通り越したむしろビートマイナーズの最高傑作、即ちブーキャンクラシック及びブルックリンマスターピース。100万回聴いても頭持ってかれるような、魂揺さぶるドス黒いベースライン、くぁあああ。トラックはMr.WaltとRich Blakペアで、ビートはJB「Funky President」を使うって実は意外にも直球。バックサイドがEvil Deeで、アイザック・ヘイズの「The Look Of Love」ネタ。一家に一枚。

Smif-N-Wessun “Wrekonize” (1995)

ハードコアが売りだったブラックムーン率いるチーム・ブーキャンから、それまでの連中のイメージからはあまり想像出来なかったまさかのグローバー・ワシントンJr「Just The Two Of Us 邦題・クリスタルの恋人たち」ネタ。とろけるスムージーなジャズネタを使った甘くてまろやかな多幸感メロウ(ビル・ウィザースの声も最後一瞬聴ける)。きっとブーキャン一派に新たなファンをもたらした1枚で、僕もこれが好きでスミフを聴こうと思った訳で。バックサイドはbeatminerzの2人がプロデュース。

Smut Peddlers “First Name Smut” (1999)

The High&The Mightyの片割れMighty Miが在籍していたRawkusの隠れユニット。絶妙に躍りにくい独特なリズムトラックを好むか好まないか、王道感ゼロの頭揺らせるだけマシなリスニングヒップホップ。一応バックサイドにMasai Beyが参加してるとだけは記しておく。

Society “Yes ‘N’ Deed” (1994)

翳り系メロディを奏でるヴァイオリンはThe Art of Noise「Debut」からで、アタック強めのブレイクビーツはサックス奏者Lou Donaldsonのみんな大好き「Ode to Billie Joe」から。サスペンスフルなネタにこのテッパンビーツ(カニエもピートロックからサイプレスにDJ Krushまでみんな使う黄金ビーツ)がとにかくハマる。マイアミ2 Live CrewのLuke Campbellが運営するLuke Recordsから隠れたハーコーシット。

Soul Kid Klik “Mortal Combat” (1996)

ゴキブリラベルがインパクト大なクイーンズのRoach Musicより、NYCのマイナーグループSoul Kid Klikの代表曲。格闘技ゲーム「モータル・コンバット」からまんま拝借したタイトルや効果音といい(他にはJeruのネタを使ってる)、なんとなくウータンっぽいプロダクションが裏路地感満載な闇社会インザドープネスでかっこいい。プロデュースはメンバーでもあり、Ghetto Philharmonicではサックス奏者もやってるG-Clef。

Souls of Mischief “Medication / Acupuncture” (2000)

相場的にはあまり人気のない00年代作品だが、それでもやっぱりかっこいいハイエロ勢代表格Souls of Mischeifの3rdアルバムから。ジャズドラマーLenny White「Mating Drive」終盤で聴ける派手めなエレキギターを遅回しで挿し込むフュージョントラックはOpio先生。トラックうまっ。

Souls Of Mischief “93 ‘Till Infinity” (1993)

Del Tha Funkee Homosapienが統率するカリフォルニア州オークランドのアングラクルーHieroglyphicsを代表するグループ。彼等が93年にリリースする同名アルバムからシングルカットした1枚は、Freestyle FellowshipやPharcyde、Jurassic5などをはじめとする所謂LAニュースクール勢の存在を世に知らしめる歴史的名作に。煙たいのに、真夜中のストリートではない、灼熱のベイエリアが情景に浮かぶメインループはジャズ〜フュージョンドラマーBilly Cobham「Heather」を早回しで。抽象的なサウンドではあるが、何故か中毒性が高いマジックのようなプロダクションはメンバーのA-Plusによるもの。

Souls Of Mischief “Unseen Hand” (1996)

91年にオークランドで結成された4人組、勿論メンバー全員がハイエログリフィックス。ラスベガスのレーベルIndustry Recordsから97年にリリースされたレーベルコンピに収録されていた楽曲で、メンバーでもある天才トラックメイカOpioワークス。ネタが分からないんだけど、ミステリアスなエレピとトレモロな残響サウンドが壮絶にダーク。

Sound Providers “The Difference” (2000)

マイルス・デイヴィスのバンドメンバーとしても活躍し、現代ジャズミュージック最高峰と賞賛されるベーシスト、ロン・カーターの「Chapter XI」で聴けるウッドベースとピアノが重なるパートをチョップしたフレーズがたまらない。柔らかなハイハットに、アタックは強いがしなやかなスネアと短くタイトなキック。スクラッチ含め、トラックメイクは勿論メンバーのSoulo。穏やかな語り口は初期メンバーであるProfile。バックサイドはトランペッター、クリフォード・ブラウン「Falling In Love With Love」ネタで、もう1人のDJであるJay Skillzが仕上げた胸トキめくクラブジャズソングが聴ける。

Sound Providers “For Old Times Sake / The Throwback Remix” (2004)

サンディエゴのジャズヒップグループが98年の結成後にようやくリリースできた最初のフルアルバム「An Evening With The Sound Providers」からカットした12インチ。唯一のMCだったProfileは脱退していた為に本作でマイクを握るのはワシントンD.C.のラッパーAsheru。ヴィブラフォン奏者ミルト・ジャクソン「Opus De Funk」での鉄琴とフルートが軽やかなフレーズを奏でるなかなかアイコニックな表題曲。ヒップがスウィングして、ホップがメロウしてる感じ。気持ちいいなぁ。同時期に同じカリフォルニアのABB RecordsからアルバムをリリースしているグループMaspykeが参加した「Throwback」のセルフリミックスもバックサイドに収録。

Sound Providers “Get Down” (1999)

98年にサンディエゴで結成されたジャズヒップグループ。当初は1MC2DJだったが、04年のデビューアルバムリリース前には唯一のMCであったProfileが脱退しており、SouloとJay Skillzの2DJのみでゲストラッパーを迎える形式を取るようになっている。なので、本作は完全オリジナルメンバーの初期サンプロバイブスが味わえる1枚。カナダのファンクロックMotherlode「You Ain’t Lookin’ In The Right Place Baby」からイントロで聴けるアコギをネタに使った「No Time」がめちゃくちゃブルージーでかっこいい。あと、やっぱりSouloのスクラッチがすげぇかっこいいのよ。

Sound Providers “Street Keys / Apples” (2004)

1stアルバムリリース時に出回っていた、LP未収録のインスト2曲を収録するプロモオンリーの7インチ。グループ唯一のエムシーProfileが脱退するという時期で、本作では残された天才トラックメイカー2人が両サイドで躍動。爽やかなストリングスとハミングネタが重なるスムージーメロウなバックサイド(Jay Skillzトラック)がめっちゃ好き。

Sound Providers “The Throwback” (2004)

サンディエゴの鬼才トラックメイカー2人から成るジャズヒップユニットが04年にリリースしたアルバム「An Evening With The Sound Providers」からシングルカット。冒頭から鍵盤が踊る軽やかなジャジーヴァイブストラックは実に彼等らしく、マイクを握るのもABB RecordsのレーベルメイトであるMaspykeのみんなという事で終始安定した安心安パイな1曲。ただ、バックサイドの「Braggin And Boastin」はジャズギタリストJoe Passの名曲「Night And Day」をThe Joe Passトリオで演奏するゆったりとしたあの極メロリフを使っていて、これが興奮もの。ネタ勝ちなところもあるが、歌うは9th Wonder率いるLittle Brotherってゆうね(彼らもABB Recordsだ)。

Sound Providers “Who Am I?” (2001)

これでもかと言わんばかりのモダンジャケに、巨匠ピアニスト・オスカー・ピーターソンの「Tangerin」ネタで最初から最後まで途切れることなくループで引っ張る直球タイプのトラック。04年に発売されるデビューアルバムにも収録されていない12インチオンリーのトラックで、この時既に脱退していたであろうオリジナルメンバーで唯一のエムシーだったProfileの替わりに、トラックメイカー2人(SouloとJay Skillz)がスピットしている他、ゲストマイクにピート・ロックの弟Grap Luvaが参加してるのでファンならマストの1枚。ただ、裏ジャケにはProfileの本名がクレジットされてたり、バックサイドの曲ではProfileがラップしてたり。

Spearhead “Hole In The Bucket” (1995)

カリフォルニア生まれで、レゲエやファンクからロックとジャンル間を自在に行き来してみせる元The Disposable Heroes Of Hiphoprisyのマイケル・フランティ率いるバンドSpearheadがヒップホップスタイルのアンサンブルを魅せたファーストアルバム「Home」からの12インチカット。ネオソウルな女性コーラス(Mary Harris)の中、ラップよりかはポエトリーのような語らいをみせるこんな楽曲もたまにはヒップホップとして良きかな。Wyclef Jeanやエイドリアン・シャーウッドによるリミックスが目玉。

Starving Artists Crew “Artistry Original” (2005)

ネタはアーネスト・ラングリンもカバーしたトランペット神Chet Bakerとサックス神Stan Getzがタッグを組む「Jordu」からメロウ炸裂パートをまんま。ジャズでヒップ出来るほど器用じゃないデトロイトの連中がヒップでジャズをやってみた1枚。ちなみに本作がデビューシングルでオリ盤は01年リリースのジャケ無し、これは05年リプレスのジャケあり。内容は一緒。バックサイドにはPUTSのThes Oneがリミックスで登場。

Starving Artists Crew “Dedicated” (2005)

ヴィブラフォンネタ好きのマストアイテム!ジャズギタリストGrant Greenバラード曲「I Wish You Love」で、ボビー・ハッチャーソンが演奏するヴィブラフォンを使ったブルージー&スロウリーな表題曲。バックサイドではヴィブラフォン奏者Cal Tjaderの「Morning」で聴けるキラーフレーズをハメたラテン系メロウな「Feed The Homeless」が収録。所謂ヴィブラフォン系トラックだとLord FinesseとRoy Ayers「Soul Plan」を思い出すが、正直あれに匹敵するほどの2曲。

Starving Artists Crew “Ill Na Na & Five Day Trippin’” (2003)

Slum Village先輩らのデトロイトで果敢にもジャズへ挑んだ3MC1DJによる3rdシングル。蓋を開けてみりゃジャパンオンリーで4000枚の大ヒット。Thes One(PUTS)プロデュースで超絶ご機嫌マイクリレーが炸裂するパーティライクなバックサイドは必聴(LP収録はThe Voices of East Harlem「Just Got To Be Myself」ネタをド頭で使うも、12インチだとバッサリカットされている)。

Starving Artists Crew “The Kick Clap” (2004)

DJ PhizixをターンテーブルにSP、IQそしてBrainstormら3MCによる軽快なマイクリレーとジャズマナートラックが売りのデトロイトグループ。Jimmy McGriff「Brickyard」ネタのジャズファンクグルーヴと最高密度のマイクパスが繰り広げられる中、デラソウル「Breakadawn」がコスり込まれるとか、楽しけりゃなんでもありのニュースクール系モーターシティボーイズ。これをPeople Under The StairsのThes Oneがバックサイドでリミックス。

Starving Artists Crew “Motivate” (2003)

ミシガン州はデトロイトから、こんなジャケにこんな字体だけど実は正統派ジャズヒップクルーっていうね、Starving Artists Crewからファンキンバンギンなブレイクビーツが炸裂するダンサブルな1枚。”Motivated, as I relate it verbal”ってのはスクラッチかな、Ultramagnetic MC’s「Ease Back」から。因みにバックサイドは王道のピアノループでゴージャスに。

Starving Artists Crew “Up Pops The Sac” (2004)

メタルバンドみたいなこの字体を見かけたら、あぁ、デトロイトのジャズヒップね、と

ジャケからヒップを一切感じないが、ミシガン州はデトロイトの3MC1DJクルー唯一のフルアルバム(05年に解散)でしっかりヒップ。デトロイトなのに、なんだかイリノイのシカゴやオハイオのシンシナティ、極論カリフォルニアのLAみたいなジャジンヒップ本場どころのヴァイブス。某ジュラシックな4MC2DJをも凌ぐ?痛快なマイクリレーは沼ったら抜け出せない。

Street Poets “Skinz” (1995)

マサチューセッツはボストンの地中奥底からPunch、Polecat、DIF Productionsら3人による超絶ドラマチックメロウな1枚。A1はもうまじほんと大好き。みんなで肩組んで大合唱できちゃう涙腺系フックに、エモくメロディアスなピアノネタが寄添う、こう、なんだろ、記憶に、脳裏に、熱く訴えかけてくる何かがこの曲にある。センチメンタルなスイッチがどっかに隠れてやがる。

Street Smartz “Ain’t No Burna” (1996)

ブルックリン生まれクイーンズ育ちのF.T.が中心となり今や90’sアンダーグラウンドを代表するラップグループとなったStreet Smartz。レアグルーヴ系好きには有名なのかな、ホール・ダーン・ファミリー「Seven Minutes Of Funk」をピッチダウンしたちょーーかっこいい12インチ。Jay-Z「Ain’t No Nigga」へのアンサーソングだとか。

Street Smartz “Problemz / Metal Thangz” (1996)

ブロンクスの職人集団DITCからBuckwildがフロントサイドをプロデュース、バックサイドには同じくDITCからO.C.とクイーンズのOrganized Konfusionからファロア・モンチがゲストラッパーで登場。これぞニューヨークアンダーグラウンドな1枚はクイーンズを拠点にしていたStreet Smartzのデビュー12インチ。ちなみにBuckwildサイドではアルゼンチンのピアニスト、ホルヘ・ダルト「I’ve Got You On My Mind」を使った優雅なメロウトラックが聴ける。

Strickly Roots “Duck Da Boyz / Get ‘N Open” (1992)

ブロンクス(サウスかな?)の煙たい雑踏奥深くからジャマイカンとカリビアンのツーエムシー、陽気なラガフロウとハードコアなワンループトラック。骨太なんだけど、妙にゆるいブリブリな裏ニュースクール。ちなみにフロントサイドのビートは60s西海岸バンドSons Of Champlin「You Can Fly」冒頭のブレイクビーツから。香ばしい。

Substantial “Home Sweet Home” (2000)

故Nujabes主宰ハイドアウト・レコーディングスより、特別人気の高かったクラシック認定のメロウ傑作12インチ。Eddie Danielsというブルックリンのクラリネット奏者がフルートを用いた「Afterthought」という73年の楽曲をネタに、清涼感溢れるループを創出。トラックメイクはこの作品で名を広めたMonorisickこと故DJ Deckstreamによるもの。バックサイドのNujabesミックスもほんと大人気だった。

Substantial “Remembering Dave” (2001)

メリーランド州のマイナーエムシーを、港区西麻布出身の瀬葉淳がプロデュースした1stアルバム「To This Union A Sun Was Born」よりシングルカットされた本作。ジャズベーシストRon Carter「Parade」で聴けるごっつごつのベースラインと、Nujabesお家芸のフルートネタ。これぞハイドアウト。

Swish Jaguar “Morning Sunrise / Sierra Moon” (2022)

やったぜ。話題の1枚、遂に手に入れた。Jake OneがかつてArceeをプロデュースしたシングル「Super Educated」を想起させるボコーダー使用の歌モノ7インチ。アーティストこそ詳細は不明だが、実はJakeとArceeが始動させたレーベルからのリリースだというので納得。フロントはレニー・ホワイト「Morning Sunrise」をラヴァーズ仕立てに、バックサイドも同じタッチでこちらは完全オリジナル。兎にも角にもだ、僅か7インチしかない音楽とはいえ、こんなにも大きくて穏やかな多幸感でこちらを包みにくるレコードを自分は一生大事にしたい。

Swollen Members “Lady Venom” (2000)

初期メンバーにはMoka Onlyがいたことで知られるカナダはバンクーバーのヒップグループ(カナダヒップのチャートではトータルセールスがDrakeに次いで2位)。彼等が99年にリリースしたファーストアルバムからカットされた12インチ。バックサイドではイギリスから故Mark Bがトラックを、スクラッチをDilated PeoplesからDJ Babuが披露。エムシーのひとり、Madchildはインタビューでスノボとパンクミュージック愛を語っていたが、なんとなくその片鱗が見える良い意味でエクストリームなサウンド。

Swollen Members feat Dilated Peoples “Front Street” (1999)

Soul Assassinsの一員でもあるMadchildを中心としたカナディアングループが、カリフォルニアLAからEvidence率いるダイレイテッド・ピープルズを従えた「Counter Parts」を収録(B1)した12インチ。個人的にはSoul Assassinsクルーから鬼才Alchemistがプロデュースした表題曲が好き。重たいキック、強靭なバネ感で叩かれるスネアに攻撃的なホーンと謎のフルート。何に怒ってるのか、とにかく極悪なバウンシートラックがまさしくアルケミスト。何はともあれ両サイド、西のギャングスタを感じれるカナダアングラが面白い。

T-


Taichi “From The Train Window” (2002)

NumbやDJ Klockなどの作品群でもお馴染み、90年代後半から日本のクラブミュージックを牽引し続けるレーベルRevirthから、02年にリリースされた本作はGROUPやStimのメンバーとしても活躍するTaichiが主人公。12インチ2枚組。本作で最もアイコニックかつ重要なフックとなる、静謐なピアノリフがひたすらループしてゆく極上アンビエント。かと思いきや、背後から突然頭引っ叩かれたような脳震盪系ダウンテンポ。随所で飛ばされるブリブリなダブ処理もつまみながら、ふと気付けば観客総立ち系のエモーショナルブレイクビーツになってるから凄い。最早ポストロック。2枚目ではDry & HeavyのミキサーNaoyuki Uchidaによるダブミックスと、CalmがOrgan Language名義でパーカッシブなダンスミュージックへとリミックスしたバージョンが聴ける。

Talib Kweli & Hi Tek “Move Somethin’” (2000)

Rawkus最強ユニット、もしくは(真ん中にモスがいる時には)最強シンメにもなる2人がリフレクション・イターナル名義で同年にリリースしたアルバム「Train of Thought」より大人気曲。冒頭、タリブの"Get’em Up Get’em Up What"ってヴァース、みんな頭めっちゃ振ってるはず。オーケストラみたいなバスドラが唯一無二、息継ぎする暇なし隙なし完膚無きまでヒップホップここにあり。ジャジャジャジャンっ、はSoul Dog「Can’t Stop Loving You」からで、アクセントになってるホーンはCharlie Whitehead「Shaft’s Mama」からとソウルネタのパレード。バックサイドの「Good Mourning」もアルバム収録曲だがこちらはフロントサイドの熱を静める哀しげなスモーキートラックで、真夜中のメロウタイムに是非。

Talib Kweli & Hi-Tek : Reflection Eternal “The Blast” (2000)

ブルックリンでモスデフと共にBlack Starとして活動していた頃、旅行先のオハイオで偶然知り合ったとかいう天才トラックメイカーHi-Tek(レペゼン・オハイオ州シンシナティ)と組んだユニットReflection Eternal。そんな彼らの代表作でもあり、最早個人的にはタリブを代表する楽曲とすら思ってるとかなんたらかんたら要約するとつまり控え目にゆっても超絶大好きな曲。トラックは勿論Hi-Tekだが、今作ではラップもしてる(Reflection Eternal名義では唯一この曲だけ)。耳から離れない美声コーラスはクイーンズのVinia Mojicaによるもので、ネイティブタン周辺で活動していたらしい。雨(わりかし豪雨)にうたれながらラップするPVめっちゃ好き。

Thawfor “Where Thawght Is Worshiped 2.2 / Left Behind” (2002)

シカゴのエムシー・ソウフォーが、同じくシカゴを拠点に活動するユニットThe Opusのプロデュースで01年にリリースしたファーストアルバム「Where Thawght Is Worshiped」からシングルカットした12インチ。煙たいを通り越して霧で霞んで前が一切見えないミスティックな表題曲にはAtmosphereのSlugや、The InfesticonsのMike Ladd、そしてInfesticonsの作品にも参加するRob Smithら気鋭アングラエムシーが参加。アブストラクトの極みで、この手が好きな人には堪らないサウンド。ちなみにカップリングには彼等を一躍有名にした「もののけ姫」ネタを使った曲「Left Behind」が収録。"はりつめたぁ弓のぉ"を引用した女性コーラスが入ってくるジブリンヒップ。

Thes One “Noonen” (2004)

97年の結成以降、それまでは金やらギャングスタやら派閥思考だった西海岸に、音楽に実直であるリアルなアングラ潮流とそれに続く数々のフォロワーを生み出してきた偉大なるユニットPUTS。その片割れThes Oneが04年に自身とGiant PandaのChikaramangaと共に運営するTres Recordsからリリースした12インチ。同時期にアルバムもリリースしているがそちらには未収録の、本作でしか聴けない楽曲。

Thes One & Raashan Ahmad “Doin’It” (2005)

カリフォルニアLA代表、みんな大好きPeople Under The Stairs(現在は解散)からThes Oneと、同じカリフォルニアはオークランドのジャズヒップバンドCrown City Rockers(バークレー音楽院出身メンバーが在籍しており、かつてはボストンを拠点にMissionってバンド名で活動していた音楽エリート集団)の人気エムシーRaashan Ahmadが夢のコラボ。ウザいぐらいファンキンな表題曲にはPUTSっぽさが、A3の「Good Co」で聴ける爽やか滑らかグルーヴィンにはCCRっぽさが。ジャズヒップやらで一時代を築いた2組が肩すかしを喰らわす緩すぎる1枚。

3582 “The E” (2003)

マイク握る35はFat Jon (Five Deez)で、トラック鳴らす82はJ Rawls (Lone Catalysts)を表す3582成るオハイオジャズ戦士2人から1枚。ドラマチックなヴァイオリンネタとコンシャスな語らいとが相俟って何やらシリアスな表題曲もいいが、A2では一転35ことFat Jonがクラブジャズ風の浮遊空間強めリミックスを披露。これがまたなんだかスピナみたいで最高。

3582 “Take It To The Face” (2003)

ゼロ年代版ジャズヒップムーブメントを仕掛けた2人の奇才J Rawls (Lone Catalysts)とFat Jon (Five Deez)。そんな彼等が3582なるユニットを結成しリリースした2ndアルバム「Situational Ethics」からのシングルカット。ところがジャジンなムードはあまりなく、ドラムブレイクがばたばたするオーセンティックなヒップホップビーツを楽しめる。ファンは拍子抜けするかもしれないが、それが新鮮に聴こえたりするってのもそれはそれである意味凄いんだけど。ちなみにこのジャケは日本プレスで、レーベルはApaniやElectric、Richy PitchにFunky DLなどジャズヒップに特化したカタログを展開する渋谷のMiclife。

3582 “Vanessa From Venezuela” (2003)

オハイオ州シンシナティから世界的なジャズヒップムーブメントを仕掛けていたといっても過言ではない、2人の功労者Lone CatalystsからJ RawlsとFive DeezのFat Jon。そんな彼等がグループ活動や幾多ものプロデュースワークスとは別に、ただただ2人でがっつり組んでみたユニット3582の2ndアルバム「Situational Ethics」からカットした7インチが本作。表題曲はセルジオ・メンデス「Tristeza em Mim(私の悲しみ)」を早回しで使った清涼感半端ないボッサヒップ。バックサイドにはFive DeezからPase Rockが参加しており、どちらかといえばこの2人からはこれを聴きたかったかもしれない王道のジャズヒップ。

3582 “Yesterday” (2001)

Lone CatalystsのJ Rawlsと、Five DeezのFat Jonというオハイオ州シンシナティのジャズヒップシーンを牽引する2人のトラックメイカーがユニットを組みリリースした12インチ。02年発売のファーストアルバム「The Living Soul」から2曲と、それぞれのリミックスも加えている。J Rawlsプロダクションの表題曲をFat JonがリミックスしたA2は、ロイ・エアーズ・ユビキティによるAshford & Simpson作メロウクラシック「Take All The Time You Need」のメロディを遅回しでまんまメインに使用していて、これはみんな大好きなはず。めちゃくちゃ良い。ちなみに赤いジャケと、青いジャケが存在するが調べてみたところ内容は一緒。Discogsだと内容が違うかのような一文があったのだが。。

3 Titans “College / The Life Of A Scholar” (2010)

ブルックリンを拠点に活動する現行ファンクバンドMenahan Street Bandの生演奏をバックに、同じくブルックリンから可愛いすぎる3人の小学5年生がラップしてみた案件を7インチで。コンガやオルガンで関節外しにくるオールドスクールな脱臼系ブレイクビーツに、余裕たっぷりのトランペットとサックスが乗っかる緩めの生ジャズファンキンプレイ。そこへ声変わりすらしてないキッズたちの、まるで歌わされてるかのような脱力ラップ。ゆるふわな雰囲気が生み出す爆発的なセンスに、まじで一発でやられてしまった。

T-Love “Return of the B-Girl” (1998)

ジャケ写はなんとB+が撮影したもの。B+、ビープラスは本名ブライアン・クロス、数多くのヒップホップアーティスト、ジャケットを撮影してきているスーパーフォトグラファー。DJ Shadowのレコ屋ジャケ「Endtroducing」やMadlibの日本の電車内で撮影した「Shades of Blue」なんかが有名ね

カリフォルニアはLAからの女性エムシーが、ストーンズスロウのファンクバンドBreakestraで活躍するマイルス・タケット(This Kid Named Miles)を演奏者として従えたソウルジャズな1枚。ベース、ドラム、ギター、チェロからスクラッチまでをマイルスがやっているらしい。また、A4ではジュラシックからChari 2NAと、B1ではKool Keithが参加してる。ジュラシックやルーツ、ミッションといった演奏系ジャズヒップ沼な人には堪らなさすぎる1枚。

Top Quality “Magnum Opus” (1993)

僕と地元が一緒のニューヨーク・ウエストチェスター郡出身という(正確に言うと僕はブロンクスビルで彼はホワイトプレーン)ラッパー・Top Qualityの12インチ。Slick Lickの「La Di Da Di」にロイ・エアーズの「Step Into Our Life」など組み合わせが悪そうなネタ使いで嘘みたいに爽やかジャジーを披露。プロデュースはEPMDのPMD側パリッシュ・スミス。マイナーヒップ人気盤。

Trends of Culture “Off & On” (1993)

モータウンの傘下レーベルMad Soundsから、Nastee、Grapevine、M.O.L.らによるハーレムトリオの傑作アゲてかナイトプールパシャパシャ!なハードでパーリーなワンループ12インチ。フックはみんなで大合唱。ローフィネといえばな頭飛んでっちゃう系ホーンに、JB「Blues & Pants」のドス黒ファットなブレイクビーツ。個人的にはバックサイドのM.O.L.ミックスがアダルトぽくて艶っぽいのなんだか堪らない。

Trends Of Culture “Valley Of The Skinz” (1993)

ハーレムの2MC1DJ(GrapevineとNasteeにDJ M.O.L)がRoy Ayersの76年名盤「Everybody Loves the Sunshine」ネタを使った真夏の昼時チリンなレイドバッククラシック。アイコニックなシンセサウンドはまんま聴こえる。93年の夏だな。同曲をDITCのファンキーマンことローフィネ師匠がミックスしたA3もおすすめ。これは2通りあるプロモ盤のうちの1つで、バックサイドにオリジナルでは未収録の「Let The Big Boyz Play」が入っている。

24/7 “24/7” (1998)

サウスブロンクスのスーパーエムシーNineが同じ地元の3rd Eyeと組んだユニット24/7から、Funkmaster Flexがエグゼクティブプロデュースを担った1枚。トラックメイクは3rd Eyeで、レアグルーヴ人気盤Herman Kelly & Life「Dance To The Drummer’s Beat」からのブレイクをにゅるっとピッチダウンした"ビート遅めニンニクアブラマシマシ"の二郎系ファンキンビーツ。よってインスト最高。すんげー最高。

Twin And Alchemist “Different Worlds” (2001)

mobの意志を継ぐクイーンズブリッジトリオInfamous Mobbからダミ声スピッターTwin Gambinoと、現行ヒップシーン最強トラックメイカーAlchemistがタッグを組んだ濃ゆくくっせぇドープ12。癖強ディスコテークシーケンスが夢見を悪くしそうな表題曲はアルバム「1st Infantry」に収録されていたバージョンよりもっと削ぎ落とされた雰囲気で、これはこれであり。それよりも、個人的にはやっぱりソウルアサシンズライクなギターリフとバウンシーなドラムアンドベースが味わえるバックサイドが好き。


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