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メルボルン生け花フェスティバルCEO放談(12):花器賞の発想(下)



賞金額が少なくても

賞金額の少ない分、これを意義のある賞にする工夫を考え、あれこれ手を回します。オーストラリアの陶芸では最高峰のヒロエ・スウェンさんに協力を求めますと、快く審査委員長を引き受けてくださいました。これでなんとかなりそうです!オーストラリア史上初(おそらく)の花器賞の発進です。

困難打開策、一言で言えば

ここで私が見つけた教訓はこうです。ある予算内で二進も三進もいかない場合、ひとつの試みとして、あえて予算を拡大してみること。資金不足の問題は、より多く遣って、より多く稼げばいいわけです。新しい可能性が開けるかもしれません。

この企画がうまく行ったならば、「なるほど!」と思っていただける、説得力のある話になるのでしょうが。コロナをはじめ様々な障害がある中で、どこまで達成できるのか、今はまだ不透明です (2022年執筆当時)。

日本とは違い、感染経路不明の新規感染者が2名出るとロックダウンという厳しい現実。市民は疲弊します。しかし、その効果は大きく、世界的に見てもコロナ対応で最も成功している都市のひとつはメルボルンかもしれません。日々、数千人の新規感染者が出る緊急事態宣言の中、花展を開催し、「こんな状況でよくやった」などと賛辞を贈ったりしている日本とは認識が違います。政治力も違います。

募集を開始してみると

ともかく、募集を開始して間もないのですが、かなりの応募が来ています。まだ目標数には達していませんが、著名な陶芸家からの応募も含まれています。こちらから出展して下さいとお願いするのではなく、先方から出展させて下さいとおっしゃっていただけるのはありがたいですね。出展料まで払っていただいて。嬉しいことに、かなりレベルの高い花器展になりそうなのです。

様々な付随効果

さらに、生け花と陶芸は親和性が高いことに改めて気付きます。二つの領域で相互に関心を寄せ合う関係です。経済的な事情で発案した企画ですが、それを超えたところでも効果が見込めそうです。

いい花器が手に入らないというのは、こちらで生け花をやっている方々の共通の悩みでしょう。そこに一つの朗報をもたらすことになるかもしれません。将来的に花器作りに精を出してくれる陶芸家を応援することになるかもしれません。

さらに、花展への来場者を倍増させる効果もあります。陶芸愛好者の層の厚さ、生け花に関心のある方も多いのです。観客としても貴重な方々を呼び込むことになるでしょう。

最初の陶芸教室との折半案と比べて、遥かに夢のある、ワクワクするような企画になっているように思います。こういう企画には、協力スタッフも一層力が入るようで、展開を楽しみにしています。スタッフの動機付けに効果があるなら、それは最大のメリットかもしれません。

追記

結局、予定よりはるかに多い、オーストラリア国内の著名な作家さん達、約40名から応募がありました。審査員、スウェンさんのお名前の威力のおかげです。スウェンさんとの長いお付き合いを、その始まりからお話しすると長くなるので今回は触れませんが、縁は大切にするものですね。私の人生、いろいろな局面でいつも助けてくださる方が現れます。私はついてるなあとよく思います。

ありがたいことに展示作品の半数近くが買い上げとなり、手数料収入も予想以上でした。さらに露店開設を希望する陶芸家の数も予想以上で、場所代からの収入にも助けられました。

この花器賞のおかげで会場費用、賞金費用、全てカバーでき、さらに他の経費に回す余裕までできました。ありがたいことでした。

見出し画像:ヒロエ・スウェンさんの花器にいけた小品。

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