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やりたい事がわからない時は、気になる何かに参加してみよう

自分のやりたい仕事がわからない、という人は多いと思います。

私も、自分に向いている仕事はこれだ!と思えたのは、働き始めて7年目のことでした(結構遅いと思います)。

それも、半信半疑で関わったプロジェクトだったので、まさか自分のやりたい仕事になるとは夢にも思っていませんでした。

キャリアの世界では、「積極的不確実性」という言葉があるそうです。

不確実な時代には、客観的なデータや論理性による判断だけでなく、主観的・直感的な判断もキャリア形成に重要とのこと。

思い返せば、私のキャリアの転機となったそのプロジェクトも、直感的な判断で参加したものでした。


社内プロジェクトへの参加


2004年に新卒で今の広告会社に入り、PR部門でプランナーとして仕事をしていた私は、ふとしたきっかけで社内のあるプロジェクトに参加します。

そのプロジェクトの名前はHOW(Hakuhodo Original Workshop)。当時、ビジネスの世界に広がりつつあった「ワークショップ」を専門に行うチームでした。

チームといっても全員複属(兼務)で、部活のような組織横断型のチームでした。

新規メンバー向けの説明会で、ある先輩が「ワークショップでクライアントが感動して泣いたことがある」と言っていて、『本当かよ・・』と疑っていたのをよく覚えています。

というのも、入社以来PRプランナーとして働いてきた私は、アイデアは一人で考えるものであり、大人数で会議をしてもうまくいかないと思っていたからです。

とはいえ、なぜかその話が気になった私は、半信半疑のまま、先輩のワークショップにアシスタントとして参加することになりました。

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ワークショップの力


初めて参加したワークショップは、たしか某自動車会社のあるブランドのビジョンを考える、2日間のワークショップだったと思います。スタート時にはあまり仲良くなさそうだったデザイン部門の人と営業部門の人が、最後には意気投合しているシーンが印象に残る、よいワークショップでした。

他にも、トイレタリーメーカーや食品メーカーなど、いくつかのワークショップにアシスタントとして参加しました。感動して泣くほどではないですが、喜んでいるクライアントの様子を見て、少しはワークショップの可能性を信じられるようになりました。

それまでの私は、ワークショップに対して「大人数の長時間続く会議」という認識しかなかったのですが、実際には、異なる参加者の声を1つのビジョンにダイナミックに集約していく、HOW独自の様々なスキルやツールが存在していました。

それらも十分すごいのですが、初心者ながらに私が感じたのは、「意外とクライアントは、関係者が集まって未来のことをじっくり話し合う機会がないんだな」ということや、「未来に可能性を感じると、自然とやる気が湧くものなのだな」ということです。

余談ですが、関係者が集まって未来についてじっくり話す大切さは、コロナ禍で会う機会が減った今こそ、改めて大事になっているかもしれません。

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メインファシリテーターという重責


さて、そんなある日、PR部門の先輩から、あるブランドの仕事があるんだけど、という相談を受けました。

聞けば、そのブランドは顧客が高齢化していて、もっと若い人にも知ってもらいたいとのこと。

短期的なPR企画が依頼内容でしたが、中長期的にどのようなブランドに刷新していくか、そのビジョンが欠けていると感じました。

ビジョン策定のためのワークショップが有効なのではと思った私は、HOWの先輩たちの企画書を参考にして提案したところ、通ってしまいました。

ワークショップには通常、全体進行を務めるメインファシリテーターと、グループに分かれて議論する際にサポートするテーブルファシリテーターがいます。

自分が提案した手前、そのワークショップで初めてメインファシリテーターを務めることになりました。

テーブルファシリテーターしか担当したことがない私は、経験豊富な先輩に何度も打ち合わせをお願いしました。そして、2日間のワークショップで使用するスライド約100枚を、アドバイスを元に何度も何度も作り直していきました。

当日はスライドを頼りに、なんとか進めていきました。頼りないメインファシリテーターだったと思いますが、積極的な参加者のおかげで、とても盛り上がりました。

1つだけはっきり覚えているのは、テーブルファシリテーターとして5人を相手にするのと、メインファシリテーターとして20名の前で話すのでは、見える世界が全く違うということです。

全員の視線が自分に集まるのは、初めは恐怖を感じていましたが、徐々に楽しくなっていきました。皆が納得する結論も出て、ワークショップは成功に終わりました。

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打ち上げの席で見た涙


終了後、興奮冷めやらぬまま、参加者全員で青山のイタリアンで打ち上げを行いました。

楽しい打ち上げの最後に、クライアントのリーダーが挨拶の中でこんな話をしてくれました。

ワークショップを通じて、仲間と未来のことを話すことができて、とても嬉しかった。そんな機会を作ってくれた広告会社のみなさん、ありがとう。

そうやって、感謝の言葉をかけてくれたリーダーの頬には、なんと涙が流れていたのです。

私は、『本当にワークショップで泣く人がいるのか!』と衝撃を受けました。

涙を流すほど、本気で事業に向き合っているこのリーダーに尊敬の念を抱くと同時に、私が追求すべき専門性は、ワークショップのファシリテーターだと確信した瞬間でもありました。

この瞬間が、その後の部署異動や今のキャリア形成につながっていったのです。

もしこのワークショップがここまでうまくいかなかったら、「自分にはやっぱり向いていない」と思っていたかもしれません。今振り返れば、この日が私のターニングポイントだったと言えます。

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いまでも大事にしていること


あれから10年、数え切れないくらいのワークショップをやりました。

(実は、2回目にメインファシリテーターを務めたワークショップは大失敗するのですが、それはまた別の時に・・・)

その後も、ワークショップの最後に涙する人を見たことが2回もあります。

また、涙を見せないまでも、全員で議論した内容をもとに、コピーライターが書くステートメントを読み、グッときているクライアントの様子を何度も見てきました。

ワークショップから何年もたって再会した時に「あの時のワークショップは本当によかった」と言われることもあります。

世の中、色々な仕事がありますが、自分の専門性が発揮できて、相手に喜んでもらえる仕事に出会えたのは幸運だと思います。

10年間で私の仕事もすっかり変わって、2日間のワークショップの仕事は少なくなりました。今は、どちらかといえば数ヶ月間続く事業開発や商品開発、コミュニティ作りなどが増えています。

しかし、仕事において大事にしていることは変わりません。

最終的な成果物が、商品開発であってもコミュニティであっても、まずは原点となるビジョンを作るワークショップから始めるのが、私の仕事のスタイルです。

関係者が集まって、未来のことを腰を据えて考える機会を作る。

皆が未来に可能性を感じて、動き出したくなる言葉を作る。

そこから始めることが、一見遠回りに見えて、実は最も早く目的地に辿り着ける方法だという確信があるからです。

これからも、熱意あるリーダーと一緒にグッとくるビジョンを作るファシリテーターであり続けたいと思います。


不確実な時代のキャリア形成


自分のキャリアがこの先どうなるか、見通すことは難しいと思います。私自身、5年後、10年後にどこで何をしているのか、全くわかりません。

先のことを考えると、不安になることもあると思います。だからこそ、今、自分が興味を持つことに、少し足を突っ込んでみることも重要ではないでしょうか。

私が出会ったワークショップの世界も、最初は『何か気になるなあ・・』ぐらいな感じでした。そこから、不思議な魅力に引き込まれて、気がつけば自分の仕事が大きく変わっていました。

自分がやりたい事がわからない。そんな時は、ちょっと気になるプロジェクトや、誰かのふとした誘いにのってみてください。未来の自分のやりたい仕事に出会えるかもしれません。


※今回の記事のタイトルは、Twitterのフォロワーのみなさんに決めて頂きました。タイトルに合わせて内容も少し修正したので、みなさんとの共作です。投票していただいた皆様、ありがとうございました!


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