広告会社の発想法を小学生が実践したら、つまらない落ち葉掃除が大人気になった
講演会や研究講師のお声がけ頂くことがあります。主なテーマは、アイデア発想法や会議ファシリテーションです。
ところで、講師としての最大の喜びは、なんだと思いますか?
それは、アンケート結果でも、謝礼でもありません。
一番嬉しいのは、「学んだことを実践してみたら、成果が出ました!」の一言です。
普段は、その成果まで知ることはなかなかないのですが、今回、小学校からとても素敵な実践報告が届きました。
先日、小中学校の先生方の集まりから、研修講師にお招き頂きました。
その研修に参加したある小学校の先生が、研修で学んだ内容を使って子ども達と一緒にある課題に取り組んだ、という実践報告です。
子どもたちの逆転の発想に、私自身がとても勉強になり刺激を受けたので、先生に特別に許可を頂いて記事にさせてもらいました。
広告会社の発想法が、いったいどのような小学生の活動に結びついたのでしょうか。
早速、紹介したいと思います。
落ち葉掃きの価値とは何か?から考える
長野県のある小学校では、毎年11月から毎朝、50名の子ども達が自主的に落ち葉掃きをしているそうです。
しかし、自主的な活動であるがゆえに、積極的に取り組まない生徒もいます。残った落ち葉が玄関前や駐車場に残り、清掃担当者を悩ませていました。
そこで、私の研修に参加頂いた先生が中心となって、6年生と美化委員会を中心に、「学校に積もった落ち葉を、全校で主体的にきれいにするには」という課題について話し合うことになりました。
普通であれば、落ち葉を残さないためにどうしたら良いのか、具体的なアイデアを話し合うのかもしれません。
しかし、その先生は、私の研修で学んだ発想法のある内容を思い出しました。
これは、企業が広告や商品開発を行う際に重要な「生活者発想」という考え方について私からお話ししたものでした。
先生は研修で得た視点を応用して、いつもとは少し考え方を変えてみることにしました。
早速、先生は子ども達に問いかけます。
それに対する子ども達の答えは、以下のようなものでした。
ここで、「やりがいのある落ち葉掃き」というキーワードにピンときた先生は、落ち葉掃きに「やりがい」を生み出すアイデアとは何かを子ども達に聞いてみます。
すると、
など、次々とアイデアが出ました。
ただし、この段階では、これまでも良くある意見だったと言います。
そんな時、ある生徒がこんな発言をします
この発言によってハッとした先生と子ども達は、アイデアを大きく方向転換。
その結果、従来にはないアイデアの展開をみせることになります。
アイデアが広がった「Yes, and」話法とは?
ここで先生が意識したのが、研修で学んだ『「Yes, and」話法』というファシリテーション手法です。
「Yes, and」話法とは、相手の会話に「いいね!」と肯定するだけでなく、「and...」と付け足しのアイデアを一言加える話し方。
この話法を活用することで、子ども達のアイデアが広がっていきました。
ここで、先生からこんな問いかけがありました
これに対して、子ども達がさらに考えを広げていきます。
このようにして生まれたのが、委員長による「落ち葉モンスター」が描かれたものさしの板です。
さらに、モンスターは落ち葉で埋めてやっつける設定にして、「モンスターを落ち葉で埋めないと学校内で悪いことをする」という架空の物語をポスターにして校内に貼りました。
すると、全校の子どもたちが「落ち葉でモンスターをやっつけないと!」という使命感に燃えて、楽しんで落ち葉を集め、先を競って落ち葉プールに入れるようになったそうです。
その結果、みんなが自主的に楽しんで落ち葉掃きを行い、敷地内の落ち葉はすぐになくなってしまったということでした。
一番嬉しかったのは、子ども達の力強さ
この報告を聞いて嬉しかったのは、教育向けに内容をアレンジした研修ではなかったにも関わらず、教育現場で役にたったという報告を頂いたことです。
当然、先生のアレンジ力が高かったのだと思いますが、それでも自分が仕事で得た知識が学校で活かせるのは本当に嬉しいことです。
以前、教育現場に会社員の先生が増えるかもしれない、という記事を紹介しました。
今回の報告を聞いて、仕事で身につけたスキルが教育現場でも役に立つかもしれない、という感触を得ることができました。
これが、まず最初に嬉しく感じたことです。
でも、もっと嬉しかったのは、子ども達が新型コロナで不自由な中でも、考えて、工夫して、楽しんで課題を解決している様子を知ることができたことかもしれません。
学校の現場は、今、本当に大変だと思います。新型コロナの影響によって、授業の内容も年間行事も、多くの変更があったことと思います。
しかし、素晴らしい先生のもと、どんな状況であっても力強く成長する子ども達。そんな嬉しいエピソードを知ることができたのが、研修の一番のご褒美でした。
これからも、日々の仕事に取り組む中で得た知識は、できる限り社会にお返ししていきたいなと感じました。
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