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頭がこんがらがってしまった時に、立ち戻るべき2つの原点

日本広告学会のクリエーティブ委員会に所属しており、学生向けのアイデアコンテスト「学生広告クリエーティブ賞」の審査委員長も担当しています。

以前、コンテストの審査基準についてnoteに書いたのですが、たくさんの「スキ」を頂きました! 本当にありがとうございます🙇‍♂️

今年のコンテストも、無事に終わりました。

全114件の応募作品のうち、なんと、金・銀・銅の上位3チームが同じ大学、同じゼミのチームでした(1チーム1作品で、色々な大学が参加しているのに、です)。

審査中は大学名を隠しているので、順位が決まった後に大学名を見て、審査委員一同びっくりしました。

そのゼミの先生は、学生にどんな教育をしているんだろう?と思った私は、表彰式の際に、その先生にお話を聞くことにしました。

そして、その先生の指導法が、学生だけでなく、多くのビジネスパーソンにとっても大事だと感じたので、皆さんにシェアしたいと思います。


先生が学生に伝えた2つのポイント


上位3チームが所属するのは、金城学院大学の庫元ゼミ。庫元先生は、もともと広告会社のクリエイターとして働かれたのち、大学の先生に転身されています。

庫元ゼミは、企業との商品開発など以前から社会に関わる学びを積極的にしている人気ゼミ。今回の受賞についても、大学のWEBサイトに写真付きで登場していました。

そんな庫元先生が、今回のコンテストに限らず、日頃から学生に話しているのが、次の2つの点だといいます。

1.提案する相手の意図を知る

2.自分たちにしかできない提案をする


以下、詳しくお話ししていきたいと思います。


1.提案する相手の意図を知る


庫元先生は、今回の勝因の一つに、アイデアコンテストの実行委員(つまり私たち広告学会の審査委員)が、なぜこのコンテストを立ち上げたのか、その背景を学生に伝えたことにある、と言っていました。

学生のアイデアコンテストは多数ありますが、それぞれに目的が違います。教育目的のものあれば、社員の採用を狙ったもの、実際のビジネスアイデアを探すものなど、様々です。

当然、目的に合わせて、評価されるアイデアは異なります。目的を外したアイデアはどんなに面白くても評価されません。

例えば、SDGsがテーマのコンテストなのに、話しているうちに「市場規模も大事だよね」「デジタル技術も入れたほうがよいのでは」「実現可能性についても触れよう」など、たくさんの要素が出てきて、頭がこんがらがってしまう時があります。

そんな時に立ち戻るべきはコンテストの目的、すなわち、なぜこのコンテストはSDGsをテーマにしているか、です。

庫元先生がコンテストの意図を理解するための情報を、事前に学生に渡したのは、その目的から外れないためだと思います。

これは、仕事でも同じです。

例えば、役員向けの新事業の企画書を作成していて、当初は10年後の未来を作るアイデアを考えていたのに、「この技術が使えないか」「事業規模も大事だ」「うちの会社でやる意義も必要では」など、色々な人が色々なことを言ってきて、頭がこんがらがってしまう時がありますよね。

迷ったら、提案する相手の意図を再確認する。

これが、頭ががこんがらがってしまった時に立ち戻る原点の1つ目です。


2.自分にしかできない提案をする 


庫元先生の2つ目の教えは、企業の真似事はするな、ということです。

学生たちは、企業の方に話すのだから「企業っぽく」しなければいけない、と考えてしてしまいがちです。

最近は色々な情報がインターネットで集まるので、業界のデータを並べたり、綺麗なスライドを作ったり、私が見ても驚くほどの企業風クオリティです。

しかし、企業が学生に期待しているのは、学生ならではの目線です。

業界データを聞かされても、よく調べたなとは思いますが、そんなことは百も承知。綺麗なプレゼンも中身次第です。

それよりも、学生たちが実際に使ったり、話を聞いた体験や、そこから感じたことを知りたいのです。

アイデアも、多少現実離れしていても構わないので、企業で働く我々からは出てこない発想が欲しいのです。

これは、頭でわかっていても、なかなか実行できません。

私が若手の時に、社内のコピーライター研修に参加したのですが、全く評価されませんでした。

「キャッチコピーを書け」と言われると、どうしても「いかにもキャッチコピーっぽいもの」を書いてしまうんですよね・・。

相手にそれっぽく合わせるのではなく、自分ならではの視点で考えることは、社会に出てからも永遠の課題です。

迷ったら、自分にしかない視点が入っているかを確認する。

これが、頭ががこんがらがってしまった時に立ち戻る原点の2つ目です。


求められて、発見も与えられる提案を


以上、2つの庫元先生の教えを、私なりに図にしてみました。

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相手の意図を知ることは重要ですが、そればかりではありきたりでつまらない。

自分の視点だけでは、独りよがりで求められない。

意図を理解しつつ、自分なりの視点を入れることで、求められて、発見も与える、よい提案になるのではないかと思います。


相手の意図を知るには?


改めて、庫元先生の教えを整理します。

1.提案する相手の意図を知る
2.自分にしかできない提案をする

これを、ビジネスパーソン向けに言い換えると、次のようになります。

1.提案相手である上司や取引先の意図を深く理解する
2.その上で、自分や自分の会社にしかできない視点を入れ込む

特に1について、ヒントとなる記事を見つけました。

こちらの記事では、トップ営業パーソンの、相手の要望を深く聞く大事さについて書かれています。

新人時代には失敗も経験した。

顧客の要望を深く理解せず案件を進めたところ、社内のベテランエンジニアから「情報を全く持っていないじゃないか」と雷が落ちた。

顧客に何度も時間を割いてもらうのを「申し訳ない」と感じ、無意識に避けていた。「どんな提案をすべきか、答えはお客さんが持っている」。

以来、岡田さんは迷ったら顧客を繰り返し訪ねる。


この記事にもある通り、分からないことは聞けばよいのに、つい遠慮してしまう人は多いと思います。

私も若い頃は、「持ち帰って、会社でゆっくり考えればいいや」と思っていました。でも、分からないものは、どこでどう考えても分からない。であれば、早く聞いてしまうべきです。

相手の方も、提案内容が良くなるのであれば、早めに質問してもらったほうが嬉しいはずです。

リモート会議などが広がり、接点が限られているからこそ、分からないことを早めにしっかり聞くスキルは、社会人にとっても重要だと思います。


ということで、今回はコンテスト優勝チームの先生による、良い提案をするコツについて紹介しました。

相手の意図を深く理解した上で、自分ならではの視点で相手をハッとさせる。迷った時に立ち戻る原点を教わった、私にとっても学びの多いコンテストでした。


※Twitterでは気になる記事にコメントをつけて投稿中です。


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