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職場の女性比率と生きやすさ|35%を目指そう

「女性が職場で苦労していることってまだ何かあるの?」
度々聞かれる質問です。

もちろん、女性が働くという選択肢がほとんどなかった時代と比べると、男女雇用機会均等法ができ、先人となる多くの女性が道を切り開いてくださったからこそ、「女性活躍」が注目される今があります。

しかし、課題はまだ残っています。管理職に占める女性の割合、賃金格差など、統計データを使って論じられることも色々ありますが、今回は「無意識のバイアス」と「比率の違いがマイノリティの生きやすさにどう影響するか」について取り上げたいと思います。

無意識のバイアスが足を引っ張る

「無意識のバイアス」とは、自分自身が気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ・偏りのことです。男性・女性それぞれに対する「こうあってほしい」「こうあるべきだ」という理想像や役割への期待は、長い時間をかけて社会的に形成されてきました。そのような期待値を私たちは内面化しているため、ジェンダーの無意識のバイアスは根深く、また女性の活躍を妨げる一つの要因になっています。

具体例を見てみましょう。以下は男女それぞれ、どんな資質が望ましいかとされているかを示しています。

男性にとって望ましい資質;
キャリア志向、リーダーシップ、好戦的、自己主張が強い、自立している

女性にとって望ましい資質;
感情的、優しい、子供への関心、周囲への気遣い、良い聞き役
自由に働くための出世のルール』より

このような期待値(=無意識のバイアス)が採用・評価・昇進などあらゆる局面の意思決定に影響を与えるのです。

結果として、女性がリーダーの地位に就くことが難しく、またリーダーになったあとも困難に直面する可能性があります。「男性が上、女性が下という暗黙の「性的地位」がわれわれの中にはあり、それと食い違う行為をする女性は反発を受ける」恐れがあるからです。

また、先に挙げた望ましい資質を振り返ると、男性にとって望ましい資質は、リーダーに求められる資質と合致していることがわかります。一方、女性にとって望ましい資質は、リーダーに求められる資質と相反しています。

女性リーダーは、リーダーに求められる資質と、女性に求められる資質という相反するものをバランスよく取り入れないと反発を受けるので気をつけましょう、と複数の本が警鐘を鳴らしていました。

女性が管理職になったら読む本』では実際に、社長職を追われた女性のケースが取り上げられています。男性の社長が同じことをしても問題にされないのに、女性が、女性らしさから外れた振る舞いをすると社会的ペナルティが与えられてしまうというのです。

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では、どうしたらこの問題を解決できるのでしょうか?

一つの解は、「女性の数を増やすこと」です。

なぜなら、女性の数が多くなり、女性の多様性が確保されることで、「女性にもいろんな人がいる」という当たり前のことを認識しやすい状況が作れるからです。女性の構成比率によって、女性を評する目や、自分自身で感じるプレッシャーも変わるということを、『女性が管理職になったら読む本』から引用しつつ、順に見ていきましょう。

女性比率15%:女性はトークン

トークンとは「象徴」「お飾り」「目立つが、孤立するもの」のことです。女性の構成比率が極端に低いと、周りは、女性にも様々な人がいるにもかかわらず「その女性の行動が属性全体を代表して」いると捉えて過度に一般化してしまう傾向があります。本人も「自分が女性全体を代表していることに対するプレッシャーを感じています。その結果、ますますためらいが大きくなり、過度に慎重な行動をとるようになります」。「少数ゆえの悪循環」に陥りやすい状態です。

このとき女性の適応戦略は、女性であるということが変に目立たないように、ひたすらに「男性社会のルールを読み解き、そこに適合する」ことになります。その時代の「働く女性のためのバイブル」となった本が『ビジネス・ゲーム』です。原作は1977年出版なのですが、いまだにレビューに「役に立つ!」というコメントがついています。

働く女性たちは、どのようにプレイしたらよいかは一切教えてもらえないままに、ゲームへの参加だけを許されました。
ビジネス・ゲーム』より
「雇均法世代」と呼ばれる、1980年代後半に入社した女性総合職の第一世代は大変な苦労をした。それまでの男性中心の企業の枠組み、そして働き方をまったく変えないまま、それに全面的に合わせることを求められたのである。
女性に伝えたい未来が変わる働き方』より


女性比率25%:女性はマイノリティ

女性比率が25%になると、少数派であることに変わりはないものの、女性も一人ひとり異なるということを前提に見てもらえるようになります。

女性比率35%:閾値を迎える

女性比率が35%を迎えると、もはや多数派・少数派というレンズがなくなり、属性から解放され、一人ひとりの個人として見られるようになります。こうなってやっと、性別規範に過度に囚われることなく、「自分らしさ」を自由に発揮できる時代が到来するのです。

「女性への期待」や「女性への偏見」を一身に背負わない状況を作り出すには、「女性にも色んな人がいるよね」を当たり前にする、つまり「女性の多様性を確保する」必要があるということです。

心強いデータもあります。
Americans No Longer Prefer Male Boss to Female Boss(アメリカ人が女性上司より男性上司を好む時代は終わった)”という、2017年に出た記事があります。
調査が始まった1953年は、以下の結果でした。
・男性上司を好む人が66%、
・女性上司を好む人が5%、
・男女差はないと回答する人が25%

その後、徐々に男性上司を好む人の割合が低下、女性上司を好む人・男女差はないとする人の割合が増え、2017年についに男女差が消失したのです。
・男性上司を好む人が23%、
・女性上司を好む人が21%、
・男女差はないと回答する人が55%
プレゼンスが高まれば、周りの目も自ずと変わっていくのです。

例えば、人生で経験した上司が女性たった一人だけで、たまたまその上司と馬が合わなければ「女性の上司は嫌だ」と思ってしまいますよね。
しかし、男性の上司も女性の上司もそれぞれ何人も経験して、男性にも女性にも良い上司と悪い上司がいて、性別の問題ではなく個人の問題だということがわかれば、「男」とか「女」というステレオタイプは気にならなくなりますよね。

このように、女性の数が増えるだけで、男女のステレオタイプが徐々に消滅していくことが予想されます。数が増えることで、「性別」という属性のレンズから解放され、個々の「自分らしさ」を大事にできる時代が到来します。

先ほど紹介した「女性はトークン」時代のバイブル『ビジネス・ゲーム』では、職場ではロールプレイングに徹する(=自分を役職にはめこむ)という割りきりが全面に出ています。一方、最近では「ダイバーシティ経営」、「心理的安全性」、「全人格を仕事に持ち込む」といった経営手法(=ありのままの自分でよい)にも光が当たってきています。このようなトレンドの変化は、男性社会の中で構築されていたビジネスルールが、女性を招き入れたことによってルール変革の時期を迎えており、「構成員が多様である」という新しい前提に合わせて経営手法が再構築されつつあると捉えられるのではないでしょうか。

早く会社内の全階層において、女性比率が高まることを期待したいです。特に、階層が上がるほど女性比率が低くなる傾向にあるのが目下の課題です。今後女性リーダーがたくさんたくさん出て、女性リーダーの中の多様性が花開き、「無意識のバイアスとの戦い」といった難しいこと考えずに、ありのままであれる時代になってほしいと、私は願っています。

目標は比率35%です。それまで、手を取り合って協力していきましょう。

<参考文献>

PS
「数を増やしましょう!」という作戦は人口にして50%を占める女性だからこそ取れる作戦です。数の戦法が取れないLGBTQや外国人がどうやって組織の中で活躍できるようにするかは、違う戦法を考える必要があるかもしれません。しかし、男性だけの、似たような属性の人たちばかりの均質的な職場が、純粋に多様になっていく過程で、国籍や性的指向といった性別以外の「属性」もとっぱらわれるような方向に進むといいなと思っています。

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