香山の34「カーネル・パニックⅧ」(52)
久方ぶりの地獄図。それは、自分の歩む先には何かが待ち受けていると知らせてくれたんだ。すると、ぱあっと、朝もやが晴れていく心地だったよ。
実際、対談の当日お前に会うと、お前は相当に苛ついていた。俺は、お前のきちがい加減をまじまじと見た。『ああ、そうか。俺はこの人に一生ついていこう』。俺はそう自分に誓った。正直……ほれぼれしたよ。お前さんの中に、狂気の極地があるのを予感したからね。そしてあの対談が始まった。俺は、お前が合図か何かをくれるのか、それともお前が直接、柴田隼人を拷問ののちに殺すのか、いや、身動きを封印したままで放置かな?……とにかく彼にどう地獄を見せるのかを想像し昂ったさ。そして待ったんだ。俺はあのとき、またしても登山道を進み、山頂の景色が見えるまでを待ったんだ。もう少しで望んだ絶景が拝める。この長い道もやっとのことで終わりを告げる。あげくには、こうして俺の忍耐を弄び、狂人の俺をさらに狂わせるつもりでこの対談を引き受けたのか、とすら思う始末だったね。そう思えば、苦しみもない。自分のいる道はダイアモンドで埋め尽くされているように思えてきたから不思議なもんだ。あの時点でお前の未来は、全てが極地の闇から出てくる結論になるはずだったのにな。
しかしふと横に座るお前を見ればどうだ……俺はすっかり酔いから醒めちまったよ。何とも無様に強がりやがって。あれではただのチンピラではないか。チンピラの意味を知っているかね。一度調べてみるといいだろう。どれだけあのときの俺がお前を軽薄とみなしたのかがよくよくわかるだろうさ。そこには何の哲学もありはしなかったんだ。俺がいた登山道などぬかるんだ、薄汚れた山道だったんだ。俺は一気に萎えたよ。お前はとうとう何もせずに対談を終えようとしやがった! すると再び朝もやが立ち込み、にわかに朝日は自然法則を無視して元の方向へ沈んでいった。
俺の投資した半年は一体どうなるのか? あの日俺は悲愴と憤怒とを胸に、足早に帰った。一人で家に着き、枕に顔を突っ込んで、叱られた子供のようにむせび泣いた。俺は一体どうして半年も待ったのか、と時間を無下に扱われたと感じたんだ。そしてお前への強烈な不信で涙が止まらなかった。……
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