正田幸大

兵庫県神戸市生まれだけれど祖父母四人とも関西人じゃないし、実家の料理も関西風じゃなかっ…

正田幸大

兵庫県神戸市生まれだけれど祖父母四人とも関西人じゃないし、実家の料理も関西風じゃなかったし、自分も大学で東京行って以来、関西に戻っても頭の中はずっと標準語な極薄関西人

マガジン

  • つまらない◯◯◯◯

    最初にセックスしたあと、シャワーを浴びてからベッドに並んで横になっているとき、聡美が「私たちが付き合ってるって知ったら」というように話していて、ぎょっとした。もうこれで付き合っていることになるんだなと思った。(本文より) 平野聡美は会社の同僚で同い年の33歳だった。聡美の異動をきっかけに飲みに行って、それから毎日のようにメッセージをやりとりして、毎週のように飲みに行くようになった。けれど、何も起こらないまま時間は流れて、ある日、終電を逃して、聡美が今からタクシーでうちにこよと言ってくれて、やっとそうなった。セックスして、休憩して、セックスして、眠って、セックスして、俺の部屋に移動して、またセックスして。聡美とのセックスはすごくて、頭がずっと空っぽなままになっていて、またつまらないセックスをしてしまっているなと思った。入れ始めてからずいぶん経っているけれど、ずっと正常位のままだった。

  • その他いろいろ

    その他いろいろ

  • 食べ物

    食べ物関連あれこれ。

  • 息子君へ

    息子君へ 遅れてしまったけれど、一歳の誕生日おめでとう。 俺は君のお父さんだよ。けれど、そういう言い方をすると、もしかすると、今俺が語りかけている君は存在しない人間になってしまう可能性もあるし、よくないのかもしれない。もっと確実な言い方をしておくなら、俺は君が母さんのお腹の中で受精した頃から君が生まれて出てくる頃まで君のお母さんと不倫していた男だよ。(本文抜粋)

最近の記事

【小説】つまらない◯◯◯◯ 42

 もうすっかり硬くなっているのに、聡美は目を伏せたまま、息を潜めているようにしてペニスに口で何かをしようとし続けている。いつまでも大胆になるわけでもないまま、くわえたり舐めたりを繰り返している。  俺から「入れたい」と言われるのを待っているのかもしれない。それとも、自分のフェラチオで硬くなっていることを喜んでくれているのだろうか。硬くなっているのを口で確かめているだけでもうれしかったりしているのかもしれない。  俺が「入れたい」ではなく「やめよう」と言ったら、聡美はどう思うの

    • 【小説】つまらない◯◯◯◯ 41

       タバコを消していると、聡美が細く息を吐いて、一段落ついた感じにため息をついた。聡美のほうに顔を向けると、聡美が仰向けになったままこちらを見ていた。  手がこちらに伸びてきて、俺の腕をつかんで引っ張ってくる。引き寄せられるまま聡美の横に倒れると、頬にキスしてくる。唇が頬から口の横に移動してきて、俺の唇に触れる。目がゆるく開いていて、目がかすかに笑ってから、舌が差し込まれてくる。  キスされるままになりながら、胸をつかんで、薄めのスウェット生地越しに肉の柔らかさを確かめるみたい

      • 織田信長のせいではない(つまらないやつになりたい)

        つまらないやつになりたい つまらないやつになりたいよ どうでもいいことにどうでもいいと言って 自分以外にとってはどうでもいいような つまらないことをつまらないことだと思って その残りの ほんのわずかな必要なことだけを 当たり前のように必要だと思って つまらなくていいんだよ 何もかもが楽しくて 何もかもがどうでもよくて 人の不幸もどうでもよくて その代わりに人の不幸も望まないで 人の不幸を要求するような 自分の幸福も望まない そんなつまらないやつになりたい のだけれど そ

        • 【小説】つまらない◯◯◯◯ 40

           今となっては、三十二歳にもなったうえで年上の女の人と付き合っていて、そんなふうに思っているというのはおかしなことだなと思うけれど、そのとき、俺は自分が女の人からそんなふうに思われるなんて思っていなかったのだ。  それまで俺が付き合っていたのは、自分のことで忙しい人ばかりだった。誰も俺との未来なんて考えていなくて、お互いにとりあえず今が楽しければいいという気持ちで付き合っていたのだと思う。その人のように、仕事に全力で打ち込んでいて、やることをやったうえで、残りの時間はできるか

        【小説】つまらない◯◯◯◯ 42

        マガジン

        • つまらない◯◯◯◯
          42本
        • その他いろいろ
          24本
        • 食べ物
          14本
        • 息子君へ
          242本

        記事

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 39

           テレビの中では、サッカーコーナーが終わって、野球のニュースが始まっていた。 「もういい?」  聡美がテレビを見ながらそう言った。 「いいよ」と答えてリモコンに手を伸ばした。 「でも、いいの? このあと、ベルギーだよ」  俺がそう言うのを聞きながら、聡美はベッドの上に伸びて、「見たら遅くなっちゃうじゃん」と言ってストレッチを始めた。 「まぁね」と言って、テレビを消した。 「見終わってからしたら、寝てる時間ほとんどなくなっちゃう」  聡美はそう言って笑った。 「まぁね。俺もそこ

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 39

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 38

           聡美が俺のことをつまらなくても平気な人だと思っていなくて、自分と同じような楽しいのが好きな人だと思っているのだとしたら、それはあまりにも致命的な思い違いだったりしているのかもしれない。  昔からそうだったように思うけれど、俺は楽しいことがなくても平気だった。重い話とか、専門的な話を長々とされていてもあまりしんどくなってくることはなかったし、考えても答えの出ないような話をずっとしていても平気だった。真面目な話をしていても、話の流れの中で、ふざけたり冗談を言ったりということは自

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 38

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 37

           多くの人は、具体的に褒めてあげたいとも、具体的に褒めてもらいたいとも思っていなかったりするのかもしれない。褒める側はよくわからなくても褒めておくものだと思っているし、褒められる側もよくわからないなりに褒めてくれているものだろうとわかっているうえで、それを当たり前に思っているのだろう。それしかないのが当たり前だから、ただ積極的に褒めてあげるだけで、褒める側も気分がよかったりするし、多くの人にとっては、そうやって積極的に褒めてくれる人は接していて気分のいい人だったりするのだろう

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 37

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 36

           俺がどうして聡美の前に付き合っていた人と別れたのかという話は、かなり端折っていたとはいえ話してはいたと思う。「その人には話せないことがあって、でも、その話せないことの中に、自分にとって大事なものがあって」というようなことを言ったような気がする。聡美は覚えているんだろうか。  聡美の前に付き合っていた人との関係は、むしろ、多くのカップルよりは何でも話せる関係だったのだと思う。けれど、話すと空気が重くなったり、相手が嫌な気持ちになる話題がいくつかあった。それを俺がだんだん話さな

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 36

          スワップ・スワップ 伝説のセックスクラブ

          アメリカの古いセックスクラブについてのドキュメンタリー映画を昔見たなと思って、何かメモしていたはずだと思って自分のパソコンを検索してみたら、ワードのファイルが見つかった。 日記的に思ったことを書いていた時期だったらしくて、映画の感想だけでなく、その日のあれこれについても書いていたけれど、その映画を見たのは誕生日だった。 フーゾクとかそれに類する店に行ったこともなければ、ハプニングバーみたいなものにも行ったこともないし、そもそも誰が相手であれ性的にアブノーマルなことをしたこ

          スワップ・スワップ 伝説のセックスクラブ

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 35

           俺のことにしてもそうなのだろうけれど、聡美はある程度誰のことでも好きになれてしまうのだろう。そして、好きになったあとは、その人にできるかぎりのことをして、それを相手が喜んでくれることで、自分にできることをやれている感じがして、それに満足してしまっていたのかもしれない。いろいろしてあげたいという気持ちが強いせいで、一方的に相手を愛せてしまうところがあって、噛み合っていなかったり、相手の優しさが自分本位なものでしかないことに気が付いたりしても、それをスルーできてしまったところは

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 35

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 34

           聡美がテレビにアップになったサッカー選手に「この人かっこいい」と言った。  俺もテレビを見ていて、ふーんと答えた。それはドイツ人で、いかにもドイツ人的な顔をしていた。ベルギー代表の選手についてもかっこいいと言っていたし、かなり白くてあまりゴツゴツしないくらいのゲルマン系の顔が好きなんだなと思った。 「めっちゃかっこいい」  聡美はそう言ってにっこりしている。  このまま黙って聡美の好きにさせてあげることもできるのだ。そうすれば、少なくても聡美が言っている意味では、聡美を幸せ

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 34

          米を食べるための店である松屋の米の美味しさと牛丼屋である吉野家の米

          俺にとって、吉野家というのが、もう少し歩けば松屋があるのなら確実に松屋を選ぶような扱いの店になっているのは、つゆの問題だけでなく、ご飯の問題も大きかったのだと思う。 今はそういう張り紙を見なくなったけれど、一時期の松屋は、自社農場だか契約農家だかの米を使用とポスターが張り出されている店があって、そういう店では、ファストフード店の米としてはびっくりするほど食感もいいし米の風味も感じられる美味しいご飯が食べられた。 その一時期ほどではないけれど、その前後も松屋というのは、牛丼

          米を食べるための店である松屋の米の美味しさと牛丼屋である吉野家の米

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 33

           今までずっと、疲れている人と関わるはしんどいなと思ってきた。疲れてしまっている人は、自分は疲れたくなかったのに疲れさせられていると被害者意識を溜めこんでいて、それ以上に疲れることを要求されるたびに怒り始める。聡美はどうなのだろうか。俺で休まりたくて、俺には疲れたくないのだろう。少なくても俺に傷付きたくはないのだろう。俺で安心したくて、俺で寂しくなりたくなくて、そして、俺に何でもしてあげたいのだろう。いろいろしてあげるうえでも傷付きたくないし、安心したかったりもするのかもしれ

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 33

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 32

           聡美の手が頬に触れてきて、鼻のほうに動いてきた。なんとなく鼻に触れられたくない感じがして、聡美の手を避けるようにして閉じた股の上に鼻先を押しあてた。大きく息を吸い込むと、「何してるの」と言って、聡美が両手で髪を優しく撫でてくる。また深く吸い込んで、吸い込んだものの匂いを感じようとする。けれど、服の匂いしか感じられなかった。もう一度吸い込んで息を止めて、頭をまわしてまたテレビに顔を向けた。ゆっくりと吸い込んだ息を吐いたけれど、やはり何も感じなかった。  服越しでなくても、直接

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 32

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 31

           聡美はどうなんだろうなと思う。聡美には世界はどういうものに感じられるのだろう。傷付けられた自分と、自分を傷付けた人々と、これから自分を傷付けるかもしれない人たちがうごめく、傷付いた自分から流れる血がいつまでも乾かないねっとりと湿った世界という感じだろうか。もちろん、聡美の場合、会社いるときでも友達といるときでも、みんなが楽しいように騒いでいるし、本人もがむしゃらに楽しもうとしている。けれど、そうやって一日楽しくしようと頑張って、ひとりになった帰り道に、疲れたなとか寂しいなと

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 31

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 30

           そういう安全な場所を確保したいという気持ちは、寂しさと不安が強い状況をずっと生きていれば当たり前のように湧いてくる気持ちなのだと思う。俺が付き合った人にしても、二十五歳から四年付き合った人以外は、みんながそういう気持ちを持っていた。二十五歳から四年付き合った人は、家族とか家庭に対して、ただ不幸を作り出すことしかできない、よくない仕組みというようにしか思っていなかった。記憶にあるかぎり、両親が一緒に笑い合っている光景を一度も見たことがないというような環境で育ってきた人だった。

          【小説】つまらない◯◯◯◯ 30