教員は若者を「選ぶ」側ではなく、「選ばれる」側になった
多くの学校では、5月も後半は教育実習の時期となっているのではないでしょうか。
以前、教育実習について記事を書きました。
ここで触れた、教育実習生に対する現場の向き合い方について考えていきたいと思います。
旧態依然とした「実習観」
先日、twitterで以下のツイートが流れてきました。
これに対し結構な数の批判的なリプが見られました。
教育実習生は寝食を忘れて必死になって取り組むべきだ、という理想論から抜け出せない人が教員の中にいるのだ、というのが個人的には驚きです。
実習生は労基法に縛られないか
確かに教育実習生は雇用契約を結んでいないため、労基法に依って直接保護される立場にはありません。
しかし、担当教官には労基法は適用され、その勤務時間を超えて指示することは違法な状態であり、善意の押し売りでパワハラを行っているだけです。
法政大学キャリアデザイン学部 兼任講師 福田淑子氏は以下のような報告を公開しています。
教育実習指導に関する全国規模での共通ガイドラインの必要性について
この中からの引用です。
また文科省から全国の大学へ以下のような通知もあります。
大学等の授業科目として行う企業内実習等の実施に係る 労働法上の留意事項について(通知)
ここにも労基法に準ずる取り扱いに関する内容が記載されています。
当然ですが、長時間の労働や実習などを強いることは許されていません。
実習だから、免許を貰いに来ているから、単位を与えるから理不尽に耐えなさいというのはモラルを逸脱した指導です。
以下は政府広報のページからの引用です。
このスケジュールを見て教員になりたい、と思う学生がいるでしょうか。
これを実習生にも体験させて、その上で教員になってほしいと考えるのは正気の沙汰ではありません。
教員は「選ばれる側」になった
もはや、労働市場に置いて学校教員は売り手市場になっているのです。
確かに、教員が待遇的にも、社会的ステータスとしても優遇されていた時代においては、教員に成りたければそれを乗り越える覚悟が求められていたのでしょう。
しかし、現状はどうでしょうか。
九州では小学校は1倍台が多く、中学校もかなり低い倍率です。
高校は教科によって差があるため、倍率が高いところもあるようです。
しかし、少なくとも小中学校の教員不足は明らかで、実際産休代替者が見つからずに新年度を迎えた学校が相当数あるようです。
また、専科を減らして見た目上は不足が無いようにしているという学校もあり、現場においてなり手が減っているのは間違いありません。
私の勤務校の卒業生も小学校の教員採用に合格し、その報告を聞くことがあります。
もちろん、喜ばしい報告ではあるのですが、高校時代の学力や進学先の大学を考えると、果たして教員になって良いのか心配になるケースも多いように感じます。
教育実習生が「教員になりたい」と思える実習に
こんな状況だからこそ、教育実習にまで来てくれた学生が「教員になりたい」と思える実習にすべきです。
それは、実習先の生徒から最後に感謝の手紙と花束をもらって、集合写真の一枚でも撮って美談で演出するようなことではありません。
教員のやりがいや喜びといったものではなく、職業として続けていくことが可能な現実的なモデルを示すことが、まずは教員不足を解消する第一歩なのではないでしょうか。
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