見出し画像

「授業スキル」の向上と、これからの教員の戦い方

今回は教育業界においてなかなか触れにくいこのテーマに関して考えたいと思います。

「授業スキル」の定義

「授業スキル」に関してまずは定義していきます。

  1. 教科学力スキル

  2. ファシリテーションスキル

  3. チョーク&トークスキル

教員、もしくは講師の授業スキルを主に上記の3つの集合体であると考え、それぞれ分けて考えていきます。

教科学力スキルとは文字通り、教科の学力の事です。

教科の知識や入試の問題研究など説明を行うための土台となるスキルです。

次がファシリテーションスキルです。

相互の話し合いや対立を調整するスキルです。

授業において意見を引き出したり、深掘りを促したりするスキルでもあります。

3番目はチョーク&トークスキルです。

これは文字通り授業における板書解説やその説明に関するスキルです。

内容の重要な部分をまとめたり、それを分かりやすく説明するスキルと言えます。

これらに関してそれぞれのスキルの向上に関して考えていきたいと思います。

1.教科学力スキル

教科学力スキルに関しては、時間をかければかけるだけ必ず伸びるスキルです。

ただ、伸びるといっても担当教科の範囲内の勉強だけでは効果が低いことに注意する必要があります。

例えば高校生や大学受験の指導を行う場合、高校内容に終始する形での学習だけでは不足します。

大学範囲など、さらに深い知識や思考を身に着けることで教科学力を伸ばすことが可能になります。

したがって、スキルアップは可能だが時間や高等教育のコストが掛かるということになります。

2.ファシリテーションスキル

ファシリテーションスキルは教員として授業を行ってきた場合、それなりに身についている部分ではあります。

近年では生徒同士のディスカッションやグループワークも多く、またそれに対する研修も多いため、伸ばす機会に恵まれているスキルと言えます。

また、重視され始めた時期が比較的最近ということもあり、現時点においては教員間の中ではスキルの差が少ない分野でもあります。

教員本人の特性によってファシリテーションによる介入方法を柔軟に変えることができるため、ある程度は個人に合わせたスキルアップが可能だと考えられます。

年齢が高い教員ほど、直接的介入による教え込みになりやすいため、年齢によってスキル習得の時間に差が生じる可能性は高いでしょう。

3.チョーク&トークスキル

チョーク&トークスキルに関してです。

個人的には、このスキルの向上が最も難しいと感じています。

もちろん、長く教員をしていたり、授業経験や講習を受けることで多少は向上します。

特にチョークによる板書はそうでしょう。

しかし、授業での説明はトークとのセットで考える必要があります。そして板書が今ひとつでもトークスキルが高い人の授業は十分にわかりやすいのです。

さらに、ここに電子黒板やデジタル教科書が加わると、スキルの重要性の大半はトークスキルになります。

そしてトークスキルに関して、私見ですが、その上げ幅は限定的のような気がしています。

実際、教育実習や初任の時点から授業が「上手い」人は一定数います。

教育大などで実習経験を積んだわけでも、塾で講師をしていたわけでもないのに、話す順番や組み立てをスムーズにできる人がいます。
(予備校の有名講師ももちろんスキルアップにコストを払っているのは間違いないのですが、彼らも新人時代から「上手い」です。)

一方で、何年授業をしていても話がまとまらずピントのボケた話しかできない教員もいるのです。

教材研究を欠かさないにも関わらず、です。

このことからもトークスキルのスキルアップは難しく、チョークスキルはICTによって代替可能である、と言えます。

スキルの優先度

近年の教育業界のトレンドは、3のチョーク&トークスキルをいかに外注するか、というところにあります。

実際、映像授業などを利用することで学習効果を高めることが可能です。

つまり、トークスキルの主戦場はオンラインの有名講師と同じ土俵となったため、一般教員に勝ち目はありません。

そうしたことから、一斉授業形式によるトークスキルは教員にそれほど重要視されない要素になりつつあるようです。
(もちろん全く不要なわけではないし、校種によって重要性も異なる)

したがって1の教科学力スキル、2のファシリテーションスキルの双方が今後の教員にとって欠かせないスキルとなるのは間違いないでしょう。

そしてこれらは比較的、向上させやすいスキルなのです。

スキルアップの有無で差がつく時代

これまでは、学校教員の世界(特に高校教員)はスキルアップで差がつきにくいことが多かったように感じます。

なぜならば、スキルアップにコストや時間が掛かる教科学力スキルや、スキルアップしにくいトークスキルがスキルアップのメインストリームだったからです。

しかし、現在求められているファシリテーションスキルはそうではありません。

本人のやる気次第でスキルアップが可能で、しかも特性に合わせたカスタマイズもしやすいスキルです。

また教科学力スキルに関しても、ネット時代の到来により高等教育の内容の多くは大学に足を運ばずとも自宅などでスキルアップが可能になり、コスト問題をクリアしました。

どのようにスキルアップするかということは、どのように自分を成長させるかと同義であり、自分自身をどう教育するかという教員の姿勢そのものと連動していると見做されるのです。

教員にも、スキルアップの有無やそのやり方で評価される時代が来ているのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?