「ユリイカ2022年4月号 特集=hyperpop」 〜"諦念"と"hyperpop"?〜

日々の読書に記録を、メモ程度の備忘録として残していきます。

ユリイカ2022年4月号 特集=hyperpop

-A. G. Cook、Charli XCX、100 gecs、そして…加速する音楽のゆくえ-

漸く読み切ったので、ごく簡単に書き残しておこうと思います。
本当は、一つひとつの文章に感想を残そうと思ったのですが、断念。。。
なので、特に印象に残った部分だけ書いておこうと思います。

まずは、uamiの「わたしハイパーわからない」です。
読んでいても、よく意味が分かりませんでしたが、あーだから、uamiなんだなって思わせる内容でした。こういう方だから、ああいう曲が作れるし、あれだけの曲が作れるのでしょう。
Hanakoで特集もされていて、可愛い漫画になっていましたが、uamiの謎は深まるばかり、、、この個性、強烈すぎて、どうなっていくのか全くの予想が出来ず、楽しみです。

そして、ハイライトは、trash angelsの3名へのインタビュー「救済の共同墓地」~つやちゃん「どうせ死ぬので。J-hyperpop/背徳グルメ/揺らぐ肉体[DEMO](DEAD*AT*18)」~伏見 瞬「ハイパーポップの諦念――宇多田ヒカルとA. G. Cookのコラボレートに寄せて」の完璧な流れでした。
ここでは"諦念"が通底するテーマになっていました。

ここ数年、よく目にする言葉だと思いますが、その"諦念"が、"hyperpop"と絡められて、複数の角度から語られています。
trash angelsからは、実際に音楽を鳴らす主体として、スター性のあるSTARKIDSと自らを対比しながら、その等身大感や地に足着いた寄り添う感じとして語られていると思うし、つやちゃんからは、この人しか出来ないであろうあまりに狂暴な縦横無尽な語りで、ゲームも食も映像も、その他諸々時代を彩るあらゆるカルチャーを呑み込んで、辿り着く先として肉体とこの社会を繋ぎとめるキーワードとして語られ、伏見 瞬は至極真っ当に、音と言葉から辿っていた先に、この社会の可能性の見えなさを乗り越えるための武器として語っていると思いました。
特別な根拠は何もないですが、この小文字の"hyperpop"からは、そういう"諦念"の感覚を自分自身も感じているのだろうと、これらの文章を読んで、改めて感じるところでした。

そういえば、今読み進めている本の一つに、ヴァージル・アブロー『ダイアローグ』があります。奇奇怪怪明解事典でTaiTanが上半期ベストに挙げてたし、WORKSIGHTでも取り上げられていたので、読んでみているのですが、この中で、次のような文章がありました。

ジョナサン__今回のプロジェクトにはどの程度アイロニーが込められていると思いますか。デュシャンの作品並みに、でしょうか。私たちが生きているのはアイロニックな時代だと思いますか、それとも生真面目な時代でしょうか?
ヴァージル__若者がこれだけ投票力をもっているんですから、アイロニーが生真面目に転じることはないでしょう。アイロニーはまた別種のアイロニーに進化していくと思います。

ヴァージル・アブロー『ダイアローグ』P086

「アイロニーはまた別種のアイロニーに進化していく」。
これを読んで、これってまさしく"hyperpop"のことだと捉えることもできるのではないか?と思いました。
ここでの"アイロニー"の意味は少し丁寧に扱ったほうが良い気はしていますが、"諦念"の先に魅せている、この過剰性の音楽。
そんなことを、Soundcloudで適当に音楽をかけながら、考えています。


改めて、「ユリイカ2022年4月号 特集=hyperpop」が発売されたのが、2022年4月とのことで、半年経過した現在、"hyperpop"という現象は、特段大きく広がるわけでもなく、消え去るわけでもなく、淡々と生き続けているように感じています。

ただ、その中でも、こと音楽性に関しては、"hyperpop"を呑み込んで、その次の音を鳴らしているように感じる曲も多いような気がしています。(ぱっと思い出せるのは、Kabanagu『ほぼゆめ』とか)

"hyperpop"の定義のできなさを、定義していく方向に行くのではなく、もはや置き去りにして、その次に向かっている、この世界の圧倒的なスピードと節操のなさに、一抹の不安のようなものを感じながらも、"hyperpop"はこれで良いのだろうと思いますし、ここからまた何が生まれてくるのか、楽しみでしょうがないのが事実です。

例年通り、激動であった2022年もあと3か月ですが、この3か月で一体何が起こるのか?もしくは起こらないのか?
注目しながら、楽しんでいきたいと思います。

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