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読書ログ 『突き抜けろ 三木谷浩史と楽天、25年の軌跡』

どんな本?

 楽天25年間の歩みを、三木谷氏本人およびその側近へのインタビューを通じて紐解いた本。著者は、企業研究系の有名ビジネス書を数多く出版している、上阪徹氏。取材力、展開力ともに質が高く、飽きることなく読み進めてしまった。別の作品も機会があれば読んでみたい。

 楽天にも三木谷氏にも大胆だが粗く、詰めが甘いような負のイメージがあったが、この本を読んで一気にファンになった。特に三木谷氏が「日本を良くする」という強い信念のもとに誰もやっていないことに本気で、フルスピードでチャレンジする姿が非常に印象的で、そのスケールの大きさに強く刺激を受けた(同時期に出版された三木谷氏の書籍『未来力』も思わず購入してしまった。)。

 自分も、最近仕事で掴みかけている「やるべきことを信念を持ってやり抜く力」を、この本の教えを参考にしながらもっと磨いていきたいと感じた。

おすすめ度

★★★★☆(最近読んだビジネス書の中でも上位の面白さ。ストーリー仕立てになっているので、頭を回転させずとも気軽に読み進められる)

こんな人におすすめ

  • 楽天系のサービスのユーザー

  • 楽天や三木谷氏のことをなんとなく胡散臭いと思っている人

  • 起業や事業開発に興味がある人

  • すごいビジネスパーソンから刺激を受けたい人

学びメモ

  • 「人生一度きりしかないからこそ、何かを成し遂げたい」という思いで30歳で起業。ハーバードMBAを経て「個人や中小企業が既成事実を積み重ねて新しい社会を作り、日本を変えていく。それが日本を元気にする」と信じて新たな挑戦に踏み出した。

  • 三木谷は、「世界に出ていく会社になるのなら、〇〇なんてことができなくてどうする、今すぐやろう」という論理でものことを進めることが多い印象があった。開業当初に目標を死に物狂いで達成した時も、社内公用語英語もそうだった。

  • 楽天5つのコンセプトは、1999年7月の時点で決まっていた。もっと言えば、それより前に三木谷自身はプロ意識を持ってこれを実践していた。

    • 常に改善、常に全身

    • Professionalismの徹底

    • 仮説→実行→検証→仕組化

    • 顧客満足の最大化

    • スピード!! スピード!! スピード!!

  • 従量課金モデルへの変更は大きなハレーションを生む決断だった。しかし三木谷は、「5万円の定額課金のままではサーバーを新しくできず、最終的に楽天市場のユーザーの信頼を失う。それが本当に店舗さんのためなのか」「これは楽天市場のためであり、店舗さんのためだ。このモデルに賛同いただけなかったら、楽天市場の出店者がゼロになってもいい」とまで言い放って、断固として移行を進めた。「100年後も皆さんの事業の成長成功を実現するためのプラットフォームを作るために、利益を出さないといけない」という考えを出店者にぶつけまくった結果、5,000店舗中39店舗しか退店しなかった。

    • ★誰よりも未来をクリアに見据えているからこそ、今の戦術に信念を持てる。だからブレないで実行できるし、その熱量で人がだんだん動いている。ということだと認識。「やりたい放題」という見た目の印象で楽天を見ていたことを反省(もちろんそういう面もあるのだろうけど)するとともに、ビジネスのプロとして金をもらっている以上、そのくらい信念を持って今の仕事に取り組まねばならないな、と思った。

  • 宅配クライシスが起きた際も、「何千億円かかるかわからないが、この状況を打破しないと日本のeコマースの成長はないし、もっと言えば諸外国に追いつくチャンスも失ってしまう」という思いで物流会社まで作ってやり切った。

  • 三木谷のスピード感は、業界の10倍くらいの速さ。今決めたのに明日できない理由がわからない。

  • 三木谷はよく「逆引き」と言う。まずローンチ日が決まり、そこから逆算していつまでに何をすべきかを決め、化物みたいに縦長なエクセルに落とし込んでひたすら実行する」

  • 聖域を作らない。球場のキャッシュレス化も「完全にキャッシュレス化をしていることが重要だ」「端末はクールじゃないと受け入れられないからやり直し」「全員英語じゃないとダメだ」など。

  • 三木谷は言語の壁が翻訳にかかる手間以上の問題を孕んでいることに気づいた。カルチャーの共有が難しい、優秀な世界の人材が来ない、など。英語の役員会議は初めは4時間を要するほどだった。

  • 楽天モバイルは単に赤字覚悟で突っ込んでいるのではなく、世界初の仮想化技術に勝ち筋を見出し、これを実装することで、携帯電話事業をシンプルで、もっと手軽な価格で提供できるという思いで進めている。

    • ★が、なんとなくいけてない雰囲気だけで見てしまっている。人の挑戦を理解し応援してあげられる視野を持ちたいと思った

  • ビジネスの本質論をとらまえるべき。イノベーションは目的ではなく、世の中をよくして元気にするための手段。「聖域を作らず、旗を立てて、ときには地べたを這いつくばりながら、世界をよくしていく。それが楽天というプロジェクトです」

  • 印象的だった三木谷の言葉

    • 「何やってもいいから、早急に1日で100億円の売上高を作れ。いつならできるんだ」

    • 「30分あげるのでこのマニュアルを理解してください。じゃあこれで営業してください」

    • 「このマーケットサイズは、どこかにあった資料でしょ。楽天はマーケットを作っていく側なのだから、その数字を超えるくらいは、頑張ればできる話だよね。誰かが作ったデータに惑わされて、自分のキャパシティに勝手にキャップをかけるべきじゃない」

    • 「スマホを使って決済するんだよ。これは絶対に大きなポテンシャルがある。半年後にローンチしてほしい」

    • 「英語化で辞めた人はほとんどいなかった。こんなことで辞める人間は、これからの時代戦力にならない」

Next Action

  • 目の前の仕事や、自分が人生をかけて行う仕事の大義名分を考えて行動する。「この仕事を通じてこんな世界を作るんだ」などと、考え方のスケールを広げる

  • 世界を強く意識する。今やっている英語も、本気で価値ある人生を送るために本気で行う。それくらいできない人間はなんの戦力にもならない、という言葉を肝に銘じる

  • 逆算思考を駆使する。OKRと似ているが、やりたいことに対して聖域や勝手なハードルを設けず、実行するためのプランを真剣に考えるようにする

  • もっと未来に目を向け、みんながやっていないことに旗を立てることを意識する。今後こうなるから、みんなはやってないけど、今のうちにここに張ろうと思える領域を、常に1つ以上持っておく

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