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2022/10/24週|『取締役会の仕事』を読んだ

尊敬する方々との雑談の中で出てきた『取締役会の仕事』を読みました。
こちらはメルカリの山田進太郎さんのブログの中でも紹介されていたものです。

取締役会の具体的なあるべきや世界で求められているトレンド・エピソード・参加者に求められる素養や振る舞いについて、副題にあるような「先頭に立つとき、協力するとき、沈黙すべきとき」という切り口で理解できます。多数の事例が出てくるので読みやすいです。

ラム・チャランの本は『これからの経営は「南」から学べ: 新興国の爆発的成長が生んだ新常識』以来、2冊目です。

感銘を受けた部分

取締役会が担うもっとも大切なことは「基本理念を決めること」というのが第2章で出てくるのですが、この部分が本書の中で最も学びになりました。

「基本理念」という言葉については下記を引用します。

企業の基本理念とは種である。会社の戦略として花開くものであり、戦略を遂行するための手がかりが数多く含まれている。戦略上、運営上の計画を後押しするものでもある。会社はなぜ存在するのか、誰の役に立つのか、どのように発展していくべきか、なぜ成功するのか、どのように稼ぎ、リスクを管理するのか、そして、競争力を維持し、より大きな目的を達成するためにどこに向かうのか──基本理念はこのような内容に言及する。基本理念は企業の発展の基礎となり、経営資源を割り振るうえでの拠り所となる。そして、実用的ですぐに実行に移せるものでなくてはならない。簡潔かつ具体的であることが望ましく、現実にそぐわないものは避けるべきだ。読んだ人がすぐに理解でき、将来を思い描くことができるものがいい。

ラム チャラン;デニス ケアリー;マイケル ユシーム. 取締役会の仕事 先頭に立つとき、協力するとき、沈黙すべきとき 

「良い基本理念には求心力がある」という一節があり、成功事例としてバーティ・エアテル(インドの電気通信事業者)において創業者のスニル・バーティ・ミタルが取締役会とともにつくっていった理念が紹介されます。具体的には下記のようなものです。

彼が掲げた基本理念──最初はミタル自身が考えたが、その後取締役会が形を整えて承認したもの──を端的に表現すれば、「他社より早く成長する。圧倒的なナンバーワンを目指して拡大する」ということになる。測定可能で、定期的に進捗状況を確認できる内容だ。
もう少し具体的に要約すると、次のようになる。

国内の所得分布のなかで最下層にいる人々も利用できる電話サービスをつくり、第一次需要をできるだけ早期に生み出す。価格は需要が急増する水準まで下げる。
●競合企業より早く事業を拡大し、どこよりも早く国内全域をカバーする。最初は限られた地域から始め、免許取得や合併、他社との取引によって事業エリアを拡大する。
●できるだけ可変的なコスト構造をつくる。長期のパートナーシップ体制を築くことで、設備やサプライヤーを利用できるようにし、資本集約度を最小にする。サプライヤーはハードやソフトを提供し、エアテルの収入の伸びに追従する。エアテルの収益が増えればサプライヤーの収益も増えるが、エアテルの収益が減ればサプライヤーの収益も減る。
●競合事業者と合弁で送電鉄塔を設置し、所有する。後から公募を検討する。他社に先がけて、国内外でもっとも広く認知される携帯電話ブランドをつくりあげる。
●国を8 の地域に分ける。それぞれの地域に最強のマネジャー――厳しく損益管理を行い、新しい需要を喚起し、毎年顧客を増やし続けることができる人材を配置する。各地域にブランドを根づかせ、他社よりも早いスピードでシェアを拡大し、すぐれたサービスで顧客を囲い込む。
●会社の行動規範として緊急性とスピードを重視する。日々データを収集し、すぐに行動する。意思決定の階層は排除し、判断が遅れないようにする。
●世界中から優秀な人材を採用し、実績指標と報酬を基本理念にリンクさせる。
●スウェーデンのエリクソンやアメリカのIBMなどのベンダーとのパートナーシップ体制を確立する。

注目してもらいたいのは、この基本理念が明快でありながら野心にあふれ、測定可能な最終目標が行動や戦略的な提携、明確な目的とともに語られている点だ。考え方はシンプルだが、力強く革新的で、業界の流れを大き
く変える可能性を秘めている。これはエアテルの経営幹部が週末に自宅でくつろぎながら作文したものではない。取締役も加わって、数ヵ月にわたって検討を重ね、磨き上げたテキストである。エアテルの取締役は黙って
見ているのではなく、経営幹部とともに基本理念をつくりあげた。正式な会議の場だけではなく、ミタルの自宅でも侃々諤々の議論が繰り広げられ、エアテルの取締役は求められていようといまいと――求められているとき
のほうが多かったが――各自の意見を述べた。その結果、エアテルの基本理念がいかに説得力のあるものとなったかは、インドの多くのライバル会社がその理念を模倣しようとしたことからもわかる。
(中略)
ミタルはこう説明する。「重要なポイントは、売上の拡大を先行させたことだ。利益はかならずあとからついてくる。とにかくスピードを重視する。それが我々のやってきたことだ。市場に参加する。ライバルの先を行く。踏ん張る。シェアを獲得する。売上を伸ばす。」

ラム チャラン;デニス ケアリー;マイケル ユシーム. 取締役会の仕事 先頭に立つとき、協力するとき、沈黙すべきとき 

確かに上記のような基本理念が拠り所となると、執行を担う組織体における意思決定のスピードは最大限高められると思われます。サービスを提供したい対象や遂行する上で大事にしたいこと(上で言うとスピード)、協調するところと競争するところ、人材登用の考え方などなど、程よく具体性を伴った方針となっていることがうかがえます。

本書では基本理念を作る時のチェックリストなども記載されており、実務上も参考にできます。

📓この記事について

株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
タイミーは、すぐに働けてすぐにお金がもらえるスキマバイトアプリです。

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