2022/8/1週|組織デザインとは何か
組織って面白いですよね。
営業・プロダクト・カスタマーサポート・マーケティングだったり、個別に見るといろいろな役割を担っていますが、その行動はあたかも「組織全体」という一つの生き物としての振る舞いやアウトプットを創出することに集約されて行きます。
しかもスタートアップのような環境にいると、その生き物としての成長速度や変化を、短い期間に凝縮して体験する感覚があります。
どちらかというと会社が大きい方が安定的なのに対して、揺らぎが大きいと感じます。不確実性の発生確率が高い(というか組織として初めてのことが多いので、初めてのこと = 不確実性と感じる、のもある)のです。
そうであるからこそ、変化に対応するための組織デザインに注意を払い、適宜リデザインすることが大事なのではと思い、今日は組織論について書きます。
下記の書籍を参照しています(大学時代の恩師、沼上先生の本です。色々な大学の教科書的に使われている模様です。組織論の超決定版。沼上ゼミでご指導いただいた2年間が今の土台になっているので感謝してもしきれません、愛の鞭をたくさんいただきました。笑)
また書籍の要約としては下記あたりが参考になるかもです。本記事ではこれらほど丁寧な要約はしません。
https://note.com/tohoku_hrc/n/n77f7402e8ac2
https://hidari.exblog.jp/17140602/
https://note.com/fujimuradaisuke/n/n75b4018c5896
組織形態の基本型を知る
機能別組織
個々のサブユニットが果たす機能に応じて組織が分割されているもの。それぞれ1つずつでは存続しえない。
例:営業部・マーケティング部・開発部・・・など
メリット:専門性の発達。複数の製品がある場合にまたがってすべての製品を担当しているので、その機能のパフォーマンスの最大化はしやすい
デメリット:個々の製品・市場への適応スピード
事業部制組織
ある程度の期間にわたって自律的に存続しうる、一つの小さな会社と言えるほどの機能を保有している組織ユニット(一つの事業部の中に各機能が含まれている)
メリット:個々の製品・市場への適応スピード
デメリット:複数の事業部がある場合、機能が散り散りになり、統合していた時のメリットは得られにくくなる
マトリクス型組織
組織分割の軸が複数ある:事業部長がいて、各機能の長も存在する状態
メリット:意思決定におけるコンフリクト(製品・市場への適応を重視するのか、それとも各機能の蓄積や資源の有効活用を重視するのか)が表出しやすい
デメリット:解決までは保証しないため、問題直視と強権を実行できる管理者がそろっていないと機能しない
機能別の専門性を活かすのであれば機能別組織、製品・市場への適応を重視するのではれば事業部制組織が基本線で、バリエーションとしてマトリクス組織があるが機能させるために諸条件がある。(実態マトリクス組織はなかなか難しい)
組織デザイン = 「分業」と「調整」の集積
仕事は基本的に「分業」されています。部署単位もそうですし、人単位でも分業されています(あの人は○○担当みたいに)
物理的な時間・スキルなどの習熟度等により、一人がなんでもできるわけではないことを前提にすると分業というのは経済合理性を突き詰めた帰結です。
分業としては下記のようなものがあります。
1. 垂直分業:"考えるタスク"と"実行するタスク"に分割する(パン職人の師匠と新米の徒弟関係)
2. 水平分業:"考えるタスク"と"実行するタスク"を分離することなく、仕事の流れに沿って分業が行われる
a. 機能別分業 :機能に応じてタスクを分割し、最終的に足し算して全体をくみ上げる(パンをこねる人、成形する人、焼く人が分かれている)
b. 並行分業:複数人が同じ作業を並行して行う(食パン担当A、B、C..)
ちなみに自社のマーケティングはどのような形態かというと、
デジタル広告、xx、yyなど各人ごとに担当をもち、その担当内における考える〜実行するを担っています。そういう意味では水平分業と言えます。
その中で、例えば「集客(パン製造)」というテーマに対しては、並行分業(デジタル広告で、オフラインの広告で、その他手段で、)とも言えます。
他方で、「xxなユーザーさんを育成しよう」というテーマではどうでしょうか?
この場合は機能別分業とも言えるかなと思います。「xxという手段で集客し」「yyという手段で育成する」みたいな、機能間が直列関係にあるからです。
と、いうわけで、実態は必ずしもこのフレーム通りに綺麗に分業状況を表すことはできず、むしろ曖昧さを許容している状態だと認識しています。
個人的には今はこの形が良いと考えていますが、時が経つ中で状況に応じて適宜リデザインが必要になるとは思います。
さて、この分業を統合するために必要なのが「調整」です。
分業で行っているものを、組織全体の目的に合わせて一つに統合していく中で発生します。
調整の仕掛け
一つに統合していく中での調整の手法として、インプットの標準化・アウトプットの標準化などの重要な概念を含む5つの仕掛けが本書内で紹介されていますが、個人的に興味深いと感じたのは、「ヒエラルキーのデザイン」です。
ヒエラルキー(階層性)は標準化でフォローしきれない例外発生時の調整手法として紹介されています。(簡単にいうと「上司の判断を仰ぐ」というあれです)
ヒエラルキーという言葉の響きがなんとなくネガティブ寄りに受け取られることが多いのではないかと思いますし、実際いくつかの問題はあると思われますが、それでも、少し考えてみるとそうした問題に目を瞑りたくなるくらい簡便で有用な手法です。
ここで思考実験として 「すべて個別の話し合いで解決する組織」 vs 「ヒエラルキーを用いる組織」 で、どの程度情報チャネルが異なるか考えてみましょう。
(前者の「すべて個別の話し合いで解決する組織」を完全結線と呼びましょう)
完全結線(すべての人同士を情報チャネルで直接結びつけた状態)とヒエラルキーを活用した状態における、必要なコミュニケーションルートの数を示したのが下図です。横軸が組織メンバー数で30人まで、縦軸が情報チャネル数です。
計算式を補足しておきますと、
・完全結線は n(n-1)/2 本:
一人ずつから n-1本のルートが必要。n人の組織だから、 n(n-1)。1本で事足りるので n(n-1)/ 2
・ヒエラルキーは n -1 本:
一人につき上向きに1本、最上位の人は上向きのチャネルがないので、 n-1 本
前者が指数関数的に伸びていくのに対して後者は一次関数で伸びていきます。同じ30人という人員数で、存在する情報チャネル数は435 vs 29 となります。
組織(会社全体の場合も、一つのサブユニットだとしても)が大きくなる中で、前者で乗り切るのは不可能なので、基本的にはヒエラルキーをデザインし、整理していく必要が出てきます。
また完全結線はあくまで思考実験で、実際には完全結線〜ヒエラルキーの間の情報チャネルの数が存在していると思いますが、もう一つのポイントは、ヒエラルキーがしっかり機能せず、結線もないケース( = 情報が流通していないケース)がないかには気を配る必要がある気がしています。
1on1とか定例が重要なのはこの辺りのソリューションも兼ねるからですが、いくら形上行っていても、中身がついてきていないと情報格差が生まれたりするだろうな、というのはこれを書いていて思いました。
組織デザイン上のチェックポイントとしてまとめると下記あたりでしょうか。
・ヒエラルキーの設計
・設計したものが機能しているかの検査
・個別の結線は例外的なチャネルと位置づけること
スタートアップで働く身として感じること
『組織デザイン』の中で出てくる主な企業の想定は大手企業の仮設例に見えましたので、そうだとするとスタートアップにおける状況と少しギャップがありそうな箇所がありそうです。
状況の違いの例えばでいうと、前提として標準化しないといけない出来事が頻繁に状況が変わる(不確実性の発生頻度が大小含めて多い)ので、『組織デザイン』でも指摘されていた通り、アウトプット側の標準化の比重が相対的に高そうです。とはいえ、そもそも標準化が進んでいない領域も多数あると思うのでインプット側の標準化も同時に検討していく必要があります。(結局全部かい😂)
本書でも
という指摘されていましたが、組織デザインはセンスを問われる仕事だなと思います。
人の相互作用を見極める目が大事。
塩梅が大事。
時には厳しい決断が大事。
厳しい決断を腹落ちさせる対話が大事。
人材育成に関心を持つことが大事。
…うーむ、センスを問われる、高難易度な仕事だなと。
今週はこの辺りで。
お読みいただきありがとうございました🙇♂️
この記事について
株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
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