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2022/12/19週|『武器になる哲学』から刺さったコンセプト紹介

この師走はおかんの誕生日に気づくのが遅れたり、コンタクトレンズの家庭内在庫切れを起こしてしまうなど、仕事中心に慌ただしく過ぎ去って行こうとしています。
ここまでバタバタしている状態が本当にいいのかな…と少し見直しの必要性を感じながら、他方でこの週末からやっと少し時間ができたので久しぶりに『武器になる哲学』を再読しています。

(ちなみにkindle unlimited 対象の方は ¥0 で読めます。この知見が ¥0 とは信じれないです、ら抜き言葉使っちゃうくらい)

そもそも哲学に興味が出てきたのは社会人として生きていくうちに自分の無教養さを感じる場面が多くなってきたことと、哲学者たちが人生をかけて考えついた哲学の各々のキーコンセプトの中には生きていく上でのヒントも多分に含まれていると感じるようになってきたためです。年齢は重ねるものです。笑

中でも本書は著者の山口周さんが有用性(実用性)という観点でフィルタリングをして50ものキーコンセプトを解説くださっており、自分のような初心者にもとっつき易い本となっております。(哲学に閉じないのがさらによき)

今日はそんな本書からいくつか個人的に刺さったものを紹介します。

悪事は、思考停止した「凡人」によってなされる ー ハンナ・アーレント

ナチスドイツにおけるユダヤ人虐殺計画において中心的な役割を果たしたアドルフ・アイヒマンの裁判の傍聴していたハンナ・アーレントがその模様をまとめた『エルサレムのアイヒマン』より。

アーレントは、アイヒマンが、ユダヤ民族に対する憎悪やヨーロッパ大陸に対する攻撃心といったものではなく、ただ純粋にナチス党で出世するために、与えられた任務を一生懸命にこなそうとして、この恐るべき犯罪を犯すに至った経緯を傍聴し、最終的にこのようにまとめています。
曰く、「悪とは、システムを無批判に受け入れることである」と。(中略)通常、「悪」というのはそれを意図する主体によって能動的になされるものだと考えられていますが、アーレントはむしろ、それを意図することなく受動的になされることにこそ「悪」の本質があるのかも知れない、と指摘しているわけです。私たちは、もちろん所与のシステムに則って日常生活を営んでおり、その中で仕事をしたり遊んだり思考したりしているわけですが、私たちのうちのどれだけが、システムの持つ危険性について批判的な態度を持てているか、少なくとも少し距離をおいてシステムそのものを眺めるということをしているかと考えると、これははなはだ心もとない。

山口 周. 武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

システムそのものを受動的に受け入れてしまう前に一歩引いて自分なりの評価をしているケースがどれほどあるだろうか、
システムの中で生きていくことについつい目が行きがちなのでは、という気づきを得ました。

いい奴だけど、売られたケンカは買う ー ジョン・ナッシュ

「囚人のジレンマ」が非常に有名ですが、ナッシュ均衡そのものは「どのプレイヤーも戦略を変更する誘引をもたないような戦略の組合せ」と定義されます。

本書の中でも紹介されますが、現実世界では繰り返しの選択の機会が迫ってきます。そういう時にどういう手を採るのが最も望ましいのかを「繰り返しの囚人のジレンマ」というゲームで実験しています。

さて、その結果を見て関係者は大変驚いた。優勝したのが、応募されたプログラムの中でもっともシンプルな、たった三行のものだったからです。このプログラムはトロント大学の心理学者アナトール・ラパポートが作成したもので、具体的には、初回は「協調」を出し、二回目は前回の相手と同じものを出し、以下それをひたすら繰り返す、という極めてシンプルなものだったのです。
実はこの実験には選定プロセスや結果の合理性についていろいろと批判もあるのですが、それはちょっと横に置いておいて、当のアクセルロッドが整理した「このプログラムの強さのポイント」が興味深いので説明しましょう。
第一に、このプログラムは自分からは決して裏切りません。まず協調し、相手が協調する限り協調し続けるという「いい奴」な戦略です。
その上で、第二に、相手が裏切れば即座に裏切り返します。協調してばかりだと相手が裏切った際に損失が膨らみますが、即座にペナルティを向こうに与えるわけです。「いい奴」だけど、売られたケンカは買う、ということ
です。
さらに、第三のポイントとして、裏切った相手が再び協調に戻れば、こちらも協調に戻るという「寛容さ」を持っています。終わったことは水に流し て握手、というナイスガイな戦略です。最後に、このプログラムは、相手側からすると「こちらが裏切らない限りいい人だけど、こっちが裏切ると裏切 る」ことが明白で、非常に単純でわかりやすく、予測しやすいという特徴があります。(後略)

山口 周. 武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50


大学の時のゲーム理論の授業でこの実験したな〜笑、というのも思い出しつつ、上記のシンプルなルールが平均得点を最も高めるというのは普段の生活における意思決定においても示唆に富む内容ではないでしょうか。

上司は、自分に対する反対意見を積極的に探せ ー ヘールト・ホフステード

こちらに関しては下記の事例を読むとスッとわかる指摘ではないでしょうか。(多様性の観点も含まれている)

皆さんもよくご存知の通り、通常、旅客機では機長と副操縦士が職務を分担してフライトします。 副操縦士から機長に昇格するためには通常でも10年 程度の時間がかかり、したがって言うまでもなく、経験・技術・判断能力といった面において、機長は副操縦士より格段に優れていると考えられます。 しかし、過去の航空機事故の統計を調べると、副操縦士が操縦桿を握っている時よりも、機長が操縦桿を握っている時の方が、はるかに墜落事故が起こ りやすいことがわかっています。 これは一体どういうことなのでしょうか?
この問題は、組織というものが持っている、不思議な特性が現れています。 組織を 「ある目的を達成するために集められた二人以上からなる集団」 と 定義すれば、航空機のコクピットというのは最小の組織であると考えることができます。
組織の意思決定のクオリティを高めるには「意見の表明による摩擦の表出」が重要です。 誰かの行動や判断に対して、 他の誰かが「それはおかしい」 と思った際に、遠慮なくそれを声に出して指摘することが必要なわけです。つまり、航空機のコクピットにおいては、片方の判断や行動について、別の 片方が反対意見を遠慮なく言える、ということが重要になるわけです。
さて、副操縦士が操縦桿を握っている場合、上役である機長が副操縦士の行動や判断に対して意義を唱えることはごく自然にできることだと考えられ ます。一方、逆のケースではどうでしょうか?
機長が操縦桿を握っている際、目下である副操縦士は機長の行動や判断に対して反対意見を唱えられる でしょうか? おそらく、 なんらかの心理的抵抗を感じるはずです。 そしてその心理的抵抗から、自分の懸念や意見を封殺してしまった結果が、 「機長 が操縦桿を握っている時の方が、事故が起こりやすい」という統計結果に出ていると考えることができます。(後略)

山口 周. 武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

他にも以前も紹介したナシーム・ニコラス・タレブの『反脆弱性』など、人生において役立つコンセプトが多数掲載されております。是非ご一読ください。

今週はこの辺りで。

📓この記事について

株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
タイミーは、すぐに働けてすぐにお金がもらえるスキマバイトアプリです。

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