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ただの子どもじみた愚痴、ほかに吐き出す場所は、持っていないから

 脆弱な精神だと思った。


 連日の長時間勤務とさらなる残業に疲れ果てたころ、ようやく夕方までの休みをとることができた。予定よりも、少し寝すぎた昼頃から、このところこなせなかった用事を済ませていく。

 15時に差し掛かるころにはため込んでいたしようも終わり、さてなにをしようか、少し書きたいな、何を書こうかな、とぼんやりしながら煙草を吸う。誰にも文句を言われない、この時間が好きだった。

 だけれど、中断するように、電話が鳴る。

 昨日私が対応したお客様の、追加対応だった。ヘルプできてくれていた社員に説明し、対応してもらおうとした。「わかりました」と電話を切られた後、上司から電話がくる。「なぜヘルプの人間にやらせるのか。ここにいる副店長にやらせないのか」

 結構な勢いで叱責を受けた後、あらためて副店長に指示を出す。なんのことはない、お客様情報をいただいて、手続きをし直すだけのこと。

 先ほどまでの気分は霧消していた。浮かれている罰なのだろうか。何に浮かれているんだろう。少し、自由になる時間があること?それは浮かれるようなことなのだろうか。

 必死になって生きている。それはあくまで私自身が思っているだけで、周りから見れば、きっとまだまだ余裕があるのだろう。仕事に耐えている。耐えているだけで成長はしない。私自身が前に進もうとしないから、いつも同じ場所で怒られている。「こんなにできないとは思わなかった」そんなことを言われても、困る。

 書きたいことはたくさんあった。別に書かなくてもいいことばかりだった。その中から選んで書くのは、楽しそうだった。だけどそれも霧消してしまった。縫い留めておくのがへたくそなうえに、散りやすい頭をしているから、また集まってくるのを待つしかない。

 これを糧にして成長するのが普通なのだろうか。同じ失敗をしまいと、あれこれ仕事のことを考えればいいのだろうか。もうそういうことを言っている時点で失格なんだろうと思う。働く身としても、管理職としても。

 楽な仕事がいいのはもちろんだけれど、楽な仕事なんてないということも知っていた。だけれど、人の上に立つような、人を管理するような、そういう職種は本当に御免だった。周りからは望んで就いたように見えたかもしれないけれど、内心は嫌でしょうがないし、一人で細々と仕事をしていたかった。いっそやめてしまいたい。だけれど、今の会社の人員環境と、上司のことを考えると、踏ん切りもつかない。

 たった一度、なんでもないような、簡単なことを、注意して教えられただけで、私の精神はここまで揺れ動いてしまう。あまりにも脆すぎる。我ながらそう思うけれど、深く沈んでしまう気持ちを救い上げる方法も、時間以外には思いつかない。

 何をするにも億劫だった。本を手にしても、部屋の片づけをしても、意識があるうちは、怯えている気持ちがずっとあるから、いつでも、不安に揺れていた。

 目を閉じてしまいたかった。眠ってしまいたかった。眠っている間は、脅かされることもないのだから。たとえあっても、それは、夢でしかない。だけれど、たぶんそれも、妨げられることだろう。

 

 ただ、平穏が欲しいだけなんだ。





 文筆乱れてお目汚し。失礼致しました。

 本城 雫

いつも見ていてくださって、ありがとうございます。 役に立つようなものは何もありませんが、自分の言葉が、響いてくれたらいいなと、これからも書いていきます。 生きていけるかな。