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「地域プロジェクトで、今、自分たちがやるべきアクションとは?」後編 〜熊本リーダーズスクール2022 第2回 開催レポート

一般社団法人自然基金(以下、自然基金)は、自然電力グループが開発した再生可能エネルギー発電所の売電収益の約1%を地域に還元するプロジェクト「1% for Community」に取り組んでいます。2022年度は、地域コミュニティを牽引する次世代リーダーの輩出を目指す「熊本リーダーズスクール」を開催。
 
今回は、7月20日に実施した第2回アクショントークのレポート後編です。株式会社ダイヤモンドブルーイング代表取締役・鍛島勇作さんのプレゼンテーションをご紹介します。

※「熊本リーダーズスクール」第2回アクショントークのレポート前編

オリジナル酵母で熊本のクラフトビールを作る! 世界に挑むブリュワーが考える地方創生とは?

2012年に地元熊本で飲食業をスタートし、近年、ビールとテクノロジーを掛け合わせたビアテック事業を立ち上げた鍛島さん。自身の経験を踏まえて、「地方創生のロールモデルをつくる」をテーマにお話いただきました。

▲株式会社ダイヤモンドブルーイング代表取締役・鍛島勇作さん
熊本市生まれ。飲食業の道に入るまでは貿易の仕事に従事。仕事で世界30カ国を渡り歩く中で、その国でしか飲めないさまざまなクラフトビールの存在を知る。その味わいや個性に魅了され、2012年に熊本でビアホール「KAEN」開業。2017年には、「熊本オリジナルのクラフトビールをつくりたい」との思いから、熊本で唯一のビール工場併設型のマイクロブルワリーをつくる。「オリジナル酵母」の開発からみえた、医療や環境など産業を超えて社会に貢献し、幸せになれるコンテンツづくりにチャレンジ中。

鍛島さんは冒頭、ダイヤモンドブルーイング流の地方創生論を語る上での重要なポイントとして、①マクロ経済を知る、②エクイティファイナンスを知る、③ストラクチャル・ホール的概念を持つ、④専門家をチームに入れる(エリートの副業)の4つを挙げ、話を続けました。

世界における日本の現状は? 

「まずは、①マクロ経済についてお話しますね。皆さんは、『失われた30年』って聞かれたことがあると思います。世界時価総額ランキングの平成元年と30年を比較すると、平成元年は上位10社のうち7社が日本企業でしたが、平成30年は1社も入っておらず、日本はゼロ成長です。一方、アメリカの株価は14倍に成長しました」
 
「アメリカの経済成長の裏には、創業間もない企業に出資する『エンジェル投資家』の存在があります。今や世界中でサービスを提供するGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft5社の頭文字を取った呼び名)も、このエンジェル投資家がいたからこそ成長できたのです。また人口に関しては、世界の人口は2100年に100億人を大きく超えると予想される一方で、日本の人口は6000万人確定というデータが出ています」

「事業を考える際にはまず、こうした世界経済や人口のデータのような、マクロな視点を持ってください。それを踏まえた上で、この衰退する日本で地方創生のロールモデルを作るには、ファイナンスの知識がとても重要になってきます。これは私たちも、コロナ禍において嫌というほど思い知らされました」

資金調達の方法は、金融機関だけじゃない!

「ではそのファイナンスについて、②エクイティファイナンスの話をします。これは、企業が新株発行を通じて資金を調達することをいいます。資金調達には、金融機関からお金を借りる方法もありますから、資金調達を大きく分けると、エクイティファイナンスと金融機関からの借り入れ、この2つの方法があります」

「地方で事業を始める際、資金を調達するには、地方に存在する“ファイナンスの固定概念”を壊す勇気が必要だと考えています。この固定概念とは、ビジネスをやるためには、事業計画を提出して金融機関からお金を借りるのが当たり前、という考え方です。私自身、開業した当初はそう考えていました。ですが今はそうではないことに気づき、3年前には、インターネットを介して不特定多数の人から少額の資金を調達するクラウドファンディング(クラファン)に挑戦。これまでに、トータル5000万円近く調達しました。クラファンは、出資者の方々が私たちのファンになって、SNSなどで宣伝してくださるというメリットもあります」

本業を超えて、幅広い事業に目を向ける

「続いて3つめは、③ストラクチャル・ホール的概念を持つこと。携わっている産業の垣根を超えた事業を考える、ということです。例えば、私たちダイヤモンドブルーイングは今、オリジナルの酵母を開発し、熊本のクラフトビールを作ることに挑戦しています。この過程で発生する麦芽カスを活用して、ビール製造以外に、医療やエネルギー、農畜産業、自然保護などの分野にも裾野を広げ、社会貢献していきたいと考えています」

有能な人材とタッグを組む

「最後は、④専門家をチームに入れる(エリートの副業)こと。新しい事業を立ち上げる場合、人材不足が課題となることが多く、私たちも創業当初はこの課題を抱えていました。ですが今は、“副業時代による有能な人材バブル”が到来しています。大企業の有能な社員の方が登録している副業バンクやCXOバンクなどのプラットフォームがたくさんあります。ファイナンスやスタートアップ情報、人脈に長けている人材と一緒にチームを作って面白いことを考える、といったことが可能になっているんです」

『ビアテック』でイノベーションを!

「ダイヤモンドブルーイングは、ビールとテクノロジーを掛け合わせた『ビアテック』を事業として掲げています。この掛け合わせでイノベーションを起こし、事業価値を高めていきます。何もないところで何かを生み出すよりも、今あるモノとモノをミックスさせた時に面白いモノが生まれる。こうしたイノベーションが、地方の事業ではひとつの鍵になると考えています」

「ここにいらっしゃる方々はリーダーを目指していらっしゃると思いますが、皆さん、リーダーの仕事はなんだと思いますか? 出資者・金融機関と共にリスクを背負い、二人三脚で、未来を創っていく。それが、私が考える真のリーダーの姿です。私が今、その姿になれているかは自信がなく、まだまだ学びの途中ですが、実践してアウトプットしてブラッシュアップして……。それを繰り返してきて今があります。私の経験や知識を、1人でも多くの人にシェアし続けて、熊本から世界へ情報発信していきたいと思っています」

穏やかな口調ながら熱さを秘めた言葉で、自身の考え方や思いを、参加者の方々に語りかけた鍛島さん。熱心に話に聞き入っていた参加者の方々は、「マクロ経済やファイナンスなどの話を聞き、自分の視野が狭かったことを痛感した。視野を広く持って事業内容を深めていきたい」「自分の力の限界を知り、他の力をうまく借りて成長している企業だと感じた。今後の参考にしたい」などと話し、今回のプレゼンテーションが、新規事業を客観的に見直すきっかけになったようです。


熊本リーダーズスクールは全6回のプログラム。第3回は、福岡県の活性地域に行き、現地の取り組みを体感したり、話を聞いたりしたフィールドワークの様子をレポートします。
 
同スクールは、株式会社インターローカルパートナーズが企画・主催し、一般社団法人合志農業活力基金と自然基金の後援で1年間運営していきます。