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思い出を肴に飲み明かそう

暑い中走り回って
時に雨の中泥まみれになりながらも
ひたすらにボールを追いかけた。
日に焼ける夏は、誰が一番黒くなったか見比べたり 
ぎゅうぎゅう詰めの部室のリフォームしてみたり
ヘディングした後塾に行くと、ノートにパラパラと砂が落ちたり
新入生歓迎会でリズムネタやったら、思ったより受けがよくなかったり
なんかもうはちゃめちゃだったけど愛おしい。
何度も円陣組んで。
泣いて、ぶつかって、笑って
どれも忘れられないね。
9人の同学年の仲間と過ごした濃すぎる日々。
最後の試合が終わったとき何より悔しかったのは、負けたことよりもみんなとの時間が終わってしまうこと。

私たちの高校生活はサッカーだったよね。

でも、あんなにずっと一緒に居たのに
それぞれが大学生活を送り始めると、全員で会える日はなかった。
住んでる地域も、生活リズムもバラバラになって
あの頃みたいに何かを共有することもなくて。

久しぶりに顔を合わせたのは
同窓会の前日。
全員が20歳になって、
まだ開店したばかりの居酒屋で初めてグラスを合わせた。
次の日も会えるのに別れるのが名残惜しくて
もっともっと話していたくて
熱気に溢れたカラオケで、少し大人になった私たちはあの頃みたいにはしゃいだ。
また明日って久しぶりに言える今日が嬉しくてたまらなかった。

あの日から、会えていない。
もしかしたらコロナが無くても会えなかったかもしれないけれど、
会えない理由が増えてしまうと
本当にまた会える日が来るのかわからなくなる。

一度だけしたオンライン飲み会は
飲み会って言ってたけれど、夜遅くに繋げた画面の向こうでお酒を片手に話すのは数人で。
熱気が、テンションが、温度が共有できない乾杯は
揃わないの声。
カツンと会うことのないグラス。
小さな画面でしか見えない顔。
その全てが。どうしてだろう。
寂しくて寂しくて。
その後、誰からももう一度という話は出ないのは
みんなもそうだったからなのかな。

これが普通になるのかな。

素顔で走り回っていたのが、化粧をするようになったり
制服が、少し大人な私服になったり
スクイズボトルから飲んでいた水が、グラスのお酒になったり
サッカーばかりの生活が、サッカーのない生活になったり
高校時代から変わった事はたくさんあったけど、
この寂しい乾杯も変わってしまった結果なのかもしれない。

でも、いつか会えたなら
あの日のように乾杯を

思い出を肴に飲み明かそう

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